その場しのぎの謝罪なんていりません!

風見ゆうみ

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29  王太子の暴走

 その後のケイティは、問題が問題なだけに迅速に裁判にかけられた。

 国王陛下を暗殺しようとしたことや、ゼント様を侮辱したことは決して軽い罪ではなく、重罪と判断されて処刑が決まった。
 しかも、公開処刑だという。
 日にちはまだ決まっていないけれど、そう遠くはない未来だと言われている。
 日にちや場所が決まっても、私は絶対に見に行くことはない。

 いくら、ケイティの自業自得で、私自身がケイティに憎しみに近い感情を抱いていたとしても、人が死ぬところは見たくない。

 それに、問題はまだ解決していない。
 だから、冷たい言い方かもしれないけれど、ケイティのことに心を痛めている場合ではなかった。
 ゼント様は全てケイティが企んで実行したことにして、自分の罪は一切認めようとしなかったからだ。

 ここまで酷い男だとは思っていなかった。
 そのことだけ考えると、ケイティが少しだけ気の毒に思える。
 彼女は何か起きても、彼が助けてくれると信じていたでしょうしね。

 ただ、ゼント様も無傷とはいかなかった。
 かろうじてあった城内での信用は目に見えて落ちたし、彼の側近も次々と辞めていった。

 城内を歩いているだけでも、使用人たちにはさり気なく避けられ、貴族からはあからさまに侮蔑の視線が送られていた。
 ゼント様も、それを感じ取っていて、自分が惨めな思いをしなくてはならなくなったのは、全て私のせいだと考えたようだった。

 ケイティの処刑が決まってから数日後の夜、外で叫び声が聞こえ、ベッドから飛び起きた。
 まだ外は暗いはずなのに、なぜか、夕日に照らされているかのような赤い何かが窓の外に見える。

 寝間着のまま窓に近付くと、一階部分から火があがっているのが見えた。
 慌てて指を鳴らしたけれど、火は消えない。

 ということは、本当の火事だということだ。

「ソフィア様、お逃げください!」

 声のした方向に目を向けると、叫んだ兵士が一瞬にして炎に包まれた。

「うああああっ!」

 叫び声に一瞬驚いてしまったけれど、すぐに指を鳴らすと、彼を包んでいた炎は消えた。
 けれど、全身に火傷をおったようで、兵士はその場に倒れ込んだ。

 一瞬、躊躇ったせいで対応が遅くなってしまった。

 どうか命は助かりますように。
 
 そう願いを込めて、あまり得意ではない水魔法を使い、彼の全身に冷たい水をかけた。

 ベッドの横に置いていた靴を履いて、一階に降りると、玄関の出入り口付近は火が回っていて、外に出られそうな場所はなかった。
 唯一、火が回っていない窓に近付くと、殿下がこちらに向かって歩いてくるのが見えた。

 一体、何を考えているのよ!

 慌てて窓を開け、私の腰くらいの高さの窓の桟に足をかけて、家から飛び出した。

 すると、ゼント様が私の前に立ちはだかった。

「ゼント様、あなたは自分が何をしているかわかっているのですか!」
「ソフィア! 何もかも貴様のせいだ! 貴様はどうして俺から色んなものを奪っていこうとするんだ!」
「ゼント様、私はあなたから何かを奪うつもりはありませんでした。あなたの良き妻になろうと努力していたんです! 努力が足りなかったと責められるならまだしも、兵士たちを傷つけるだなんてありえません!」
「貴様や周りにいる兵士が全て死んでしまえば、真相を知る者はいない。俺は国王になって自由きままに生きるんだ! だから、ソフィア、お前にも死んでもらう」

 ゼント様はそう叫ぶと、大声で笑い始めた。
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