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57 不名誉な噂があると思います
「リリコット……、お前、本気で言っているのか?」
少しの沈黙の後、バイヤ様は怒りで唇を震わせながら、私を睨みつけました。
「もちろんです。冗談でこんなことは言いません」
睨み返して答え、私は周りの人たちに聞こえるように声を張り上げます。
「私の口から話せる範囲で真実をご説明いたします」
「や、やめろ!」
バイヤ様は首を横に振りながら、私に近づこうとしました。しかし、アレックス様の妨害により足を止めます。
「イビーバ卿、リリコットが話をするんです。黙っておいてもらえますか」
「だ、黙っているなんて無理だ! おい、リリコット! 契約書を交わしたのに反故にするつもりか!?」
敬語を使うことを忘れてアレックス様に答え、バイヤ様は私を指差しました。
守られているだけではいけません。
前に立ってくれていたアレックス様の隣に立ち、笑顔を作ってバイヤ様に話しかけます。
「あなたとの結婚生活の内容についてお話するつもりはありません。私が家族に愛してもらえなかったせいで、バイヤ様に嫁ぎました。そして、義理の両親からも突き放され、義母からは別れを促された。そう話すだけです。間違ってはいませんよね?」
「そ、それはそうだが……、でも、俺は優しかっただろう?」
「優しかった? 本気でそう思っているのですか?」
「そうだ。お前には不自由ない生活を送らせていたはずだ」
「本当にそうならば、離婚なんてしていないと思いますが」
私からの問いかけに、バイヤ様はバツが悪そうに目を逸らします。
私の両親はこれ以上何も言うなと言わんばかりに、眉尻を下げ、両手を合わせてアピールしてきました。
きっと、もう話すなと言っているのでしょう。でも、私はもう親の言いなりではないのです。
「よくわからないのですが、アレックス様の悪口を言えば、私がその話を信じてあなたの元に戻ると思っていたのですか?」
「不名誉な噂のある夫なんて嫌だろう?」
「……それを言えば、バイヤ様のほうが不名誉な噂があると思います」
「うぐっ」
言い返したくても言い返す言葉が見つからないようで、バイヤ様は意味のつかない変な声を上げただけでした。
「それに、アレックス様をはじめ、シサヤ辺境伯家の皆さまは、大変良くしてくださっていますし、とても良い方です。ですから、イビーバ侯爵家にも、私を虐げ続けていた実家にも戻るつもりはありません!」
私の両親の虐待に、現在、周りにいる人たちも薄々気がついていたようでした。
コソコソと話す女性たちの声が聞こえます。
「社交場でお見かけしたことがあるんですけど、あまり可愛がっているようには見えなくて心配していたのです」
「まあ、そうでしたの。そう言われてみれば、リリコット様を褒めている話を聞いたことがありませんわね」
皆、イビーバ侯爵家や私の両親を見つめ、扇で口元を隠しながら話しています。
ざわざわと騒がしくなる会場内。
「や、やめろおおお!」
周りの人たちの会話を妨げたのは、バイヤ様の絶叫でした。
少しの沈黙の後、バイヤ様は怒りで唇を震わせながら、私を睨みつけました。
「もちろんです。冗談でこんなことは言いません」
睨み返して答え、私は周りの人たちに聞こえるように声を張り上げます。
「私の口から話せる範囲で真実をご説明いたします」
「や、やめろ!」
バイヤ様は首を横に振りながら、私に近づこうとしました。しかし、アレックス様の妨害により足を止めます。
「イビーバ卿、リリコットが話をするんです。黙っておいてもらえますか」
「だ、黙っているなんて無理だ! おい、リリコット! 契約書を交わしたのに反故にするつもりか!?」
敬語を使うことを忘れてアレックス様に答え、バイヤ様は私を指差しました。
守られているだけではいけません。
前に立ってくれていたアレックス様の隣に立ち、笑顔を作ってバイヤ様に話しかけます。
「あなたとの結婚生活の内容についてお話するつもりはありません。私が家族に愛してもらえなかったせいで、バイヤ様に嫁ぎました。そして、義理の両親からも突き放され、義母からは別れを促された。そう話すだけです。間違ってはいませんよね?」
「そ、それはそうだが……、でも、俺は優しかっただろう?」
「優しかった? 本気でそう思っているのですか?」
「そうだ。お前には不自由ない生活を送らせていたはずだ」
「本当にそうならば、離婚なんてしていないと思いますが」
私からの問いかけに、バイヤ様はバツが悪そうに目を逸らします。
私の両親はこれ以上何も言うなと言わんばかりに、眉尻を下げ、両手を合わせてアピールしてきました。
きっと、もう話すなと言っているのでしょう。でも、私はもう親の言いなりではないのです。
「よくわからないのですが、アレックス様の悪口を言えば、私がその話を信じてあなたの元に戻ると思っていたのですか?」
「不名誉な噂のある夫なんて嫌だろう?」
「……それを言えば、バイヤ様のほうが不名誉な噂があると思います」
「うぐっ」
言い返したくても言い返す言葉が見つからないようで、バイヤ様は意味のつかない変な声を上げただけでした。
「それに、アレックス様をはじめ、シサヤ辺境伯家の皆さまは、大変良くしてくださっていますし、とても良い方です。ですから、イビーバ侯爵家にも、私を虐げ続けていた実家にも戻るつもりはありません!」
私の両親の虐待に、現在、周りにいる人たちも薄々気がついていたようでした。
コソコソと話す女性たちの声が聞こえます。
「社交場でお見かけしたことがあるんですけど、あまり可愛がっているようには見えなくて心配していたのです」
「まあ、そうでしたの。そう言われてみれば、リリコット様を褒めている話を聞いたことがありませんわね」
皆、イビーバ侯爵家や私の両親を見つめ、扇で口元を隠しながら話しています。
ざわざわと騒がしくなる会場内。
「や、やめろおおお!」
周りの人たちの会話を妨げたのは、バイヤ様の絶叫でした。
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