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27 類は友を呼ぶ ②
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ジェリク様は貼り付けた笑顔を見せて、お姉様の悪友たちに話しかけます。
「明日の朝には公にされるが、俺とシアリンは結婚した。だから、シアリンは嘘などついていない」
「お、おめでとうございます! で、ですが、シアリン様はその、あなたをラーナから奪ったのですよね?」
そう来ましたか。どんな内容であれ嘘をついたという方向に持っていければ逃れられると思っているわけですね。
「俺がいつラーナ嬢のものになったって言うんだ?」
笑顔を作ることもできなくなったのか、ジェリク様は射るような眼差しを茶髪男性である姉の『悪友1』に向けました。
「ラ、ラーナが言っていたんです。自分とジェリク様は相思相愛なのに、シアリンが邪魔をするって」
「……シアリン?」
「あ! いえ、シアリン様です!」
「そうだよな。親しくもないのに子爵令息が公爵家の嫡男である俺の妻を呼び捨てにするのはおかしいよな?」
ジェリク様に聞き返されると、先ほどまでの強気な態度はどこへやら、悪友1は涙目になって続けます。
「シアリン様がラーナとあなたとの邪魔をして二人の仲を引き裂いたと聞きました! 陰で嫌がらせをされているとも聞いたんです!」
「俺はラーナ嬢のことを好きではない。他人に嫌いという感情が湧くことはないが、彼女にはなぜか嫌悪感を感じる。彼女がそんな嘘をつく人だからか」
ため息を吐いたジェリク様を見て思います。
それって、神様からのお姉様への罰なのではないでしょうか。こんなことを言うのは酷いかもしれませんが、お姉様にとって世界で一番好きな人の中で、自分は世界で一番好きじゃない人になっているんですものね。
「え? あ、でも、ラーナはあなたとは両思いだって」
「ふざけたことを言わないでくれ」
ジェリク様は私と悪友1の間に割り込み、私の両肩を優しく掴んで言い聞かせるように話します。
「シアリン、誤解しないでくれ。俺は君の姉に恋愛感情を一度も持ったことはない。そして、これからもありえない」
お姉様が聞いたらどう思うでしょうか。ジェリク様は私にはとても甘いです。そして、私に嫌われることを恐れています。
ふふふ。悪友1たちにお返しするために、ちょっと悪い女になってみましょうか。
「ジェリク様、私は彼らの言う通り、お姉様との仲を邪魔してしまったのですか?」
「邪魔されてない! 君がサブル殿下の婚約者だった頃から俺は……っ」
さすがに他人の前で王子の婚約者に恋をしていた、なんて発言は駄目だと思ったようです。
ジェリク様は言葉を止めて言い換えます。
「同じことを何度も言うが、昔からラーナ嬢のことを意識したことはない。だから、シアリン、君は邪魔なんてしていない」
「でも、あの人たちは私が邪魔をしたって言うんです」
泣き真似はできませんが、眉尻を下げて言うと、ジェリク様は私の肩から手を離し、悪友1たちに体を向けました。
「ひいぃっ!」
「「「「も、申し訳ございません!」」」」
その瞬間、悲鳴を上げた悪友1だけではなく、他4人も怯えた表情で床に膝をつけました。
「お許しください、ジェリク様!」
「申し訳ございません!」
そんなに怖い顔をしているのでしょうか。ジェリク様は私に背中を向けているので、どんな顔をしているのかさっぱりわかりません。
「君たちの名前は全員調べてある。明日以降、今までと同じ生活が送れるとは思うなよ」
「「「「「そんなっ!」」」」」
お姉様の悪友たちの情けない声が店内に響き渡りました。
トレジット公爵家と取引している業者も多いでしょう。それぞれの領民たちや業者に、令息や令嬢が公爵家に目をつけられたとわかれば、領民からは苦情が出るでしょうし、業者は取引を控えようとするはずです。
お姉様の発言だけを信じて、真実を調べようとしないだけならまだ良かったでしょう。問題は私に誹謗中傷をしたことです。
ジェリク様の影響力もあるでしょうけれど、自分の息子や義理の娘が馬鹿にされたと知れば、閣下たちが動かないわけがありません。
私はジェリク様の横に立って、悪友1たちを見下ろすと、彼らは助けを求めるような目で私を見つめました。
「みなさん、謝っても無駄ですよ。しなくてもいいことをしたのはあなた方です。どんな噂であれ、ジェリク様の名が出た時点で、確証のないことは言わないほうがよろしかったですね」
微笑んで伝えたあと、ジェリク様に話しかけます。
「時間が近づいています。急ぎましょう」
「……わかった」
ジェリク様はまだ彼らに言いたいことがあるようでしたが、王妃陛下との謁見に遅れるわけにはいきません。
「ま、待ってください! 本当に申し訳ございませんでした!」
「ジェリク様、シアリン様! 僕たちはラーナに騙されたんです!」
「高い勉強代になりましたね。すぐに家に戻って、ご家族とこれからのことについて話し合ってはいかがでしょうか」
追いすがってくる彼らにそう答えると、あとのことは護衛騎士に任せて、ジェリク様と共に店を出たのでした。
「明日の朝には公にされるが、俺とシアリンは結婚した。だから、シアリンは嘘などついていない」
「お、おめでとうございます! で、ですが、シアリン様はその、あなたをラーナから奪ったのですよね?」
そう来ましたか。どんな内容であれ嘘をついたという方向に持っていければ逃れられると思っているわけですね。
「俺がいつラーナ嬢のものになったって言うんだ?」
笑顔を作ることもできなくなったのか、ジェリク様は射るような眼差しを茶髪男性である姉の『悪友1』に向けました。
「ラ、ラーナが言っていたんです。自分とジェリク様は相思相愛なのに、シアリンが邪魔をするって」
「……シアリン?」
「あ! いえ、シアリン様です!」
「そうだよな。親しくもないのに子爵令息が公爵家の嫡男である俺の妻を呼び捨てにするのはおかしいよな?」
ジェリク様に聞き返されると、先ほどまでの強気な態度はどこへやら、悪友1は涙目になって続けます。
「シアリン様がラーナとあなたとの邪魔をして二人の仲を引き裂いたと聞きました! 陰で嫌がらせをされているとも聞いたんです!」
「俺はラーナ嬢のことを好きではない。他人に嫌いという感情が湧くことはないが、彼女にはなぜか嫌悪感を感じる。彼女がそんな嘘をつく人だからか」
ため息を吐いたジェリク様を見て思います。
それって、神様からのお姉様への罰なのではないでしょうか。こんなことを言うのは酷いかもしれませんが、お姉様にとって世界で一番好きな人の中で、自分は世界で一番好きじゃない人になっているんですものね。
「え? あ、でも、ラーナはあなたとは両思いだって」
「ふざけたことを言わないでくれ」
ジェリク様は私と悪友1の間に割り込み、私の両肩を優しく掴んで言い聞かせるように話します。
「シアリン、誤解しないでくれ。俺は君の姉に恋愛感情を一度も持ったことはない。そして、これからもありえない」
お姉様が聞いたらどう思うでしょうか。ジェリク様は私にはとても甘いです。そして、私に嫌われることを恐れています。
ふふふ。悪友1たちにお返しするために、ちょっと悪い女になってみましょうか。
「ジェリク様、私は彼らの言う通り、お姉様との仲を邪魔してしまったのですか?」
「邪魔されてない! 君がサブル殿下の婚約者だった頃から俺は……っ」
さすがに他人の前で王子の婚約者に恋をしていた、なんて発言は駄目だと思ったようです。
ジェリク様は言葉を止めて言い換えます。
「同じことを何度も言うが、昔からラーナ嬢のことを意識したことはない。だから、シアリン、君は邪魔なんてしていない」
「でも、あの人たちは私が邪魔をしたって言うんです」
泣き真似はできませんが、眉尻を下げて言うと、ジェリク様は私の肩から手を離し、悪友1たちに体を向けました。
「ひいぃっ!」
「「「「も、申し訳ございません!」」」」
その瞬間、悲鳴を上げた悪友1だけではなく、他4人も怯えた表情で床に膝をつけました。
「お許しください、ジェリク様!」
「申し訳ございません!」
そんなに怖い顔をしているのでしょうか。ジェリク様は私に背中を向けているので、どんな顔をしているのかさっぱりわかりません。
「君たちの名前は全員調べてある。明日以降、今までと同じ生活が送れるとは思うなよ」
「「「「「そんなっ!」」」」」
お姉様の悪友たちの情けない声が店内に響き渡りました。
トレジット公爵家と取引している業者も多いでしょう。それぞれの領民たちや業者に、令息や令嬢が公爵家に目をつけられたとわかれば、領民からは苦情が出るでしょうし、業者は取引を控えようとするはずです。
お姉様の発言だけを信じて、真実を調べようとしないだけならまだ良かったでしょう。問題は私に誹謗中傷をしたことです。
ジェリク様の影響力もあるでしょうけれど、自分の息子や義理の娘が馬鹿にされたと知れば、閣下たちが動かないわけがありません。
私はジェリク様の横に立って、悪友1たちを見下ろすと、彼らは助けを求めるような目で私を見つめました。
「みなさん、謝っても無駄ですよ。しなくてもいいことをしたのはあなた方です。どんな噂であれ、ジェリク様の名が出た時点で、確証のないことは言わないほうがよろしかったですね」
微笑んで伝えたあと、ジェリク様に話しかけます。
「時間が近づいています。急ぎましょう」
「……わかった」
ジェリク様はまだ彼らに言いたいことがあるようでしたが、王妃陛下との謁見に遅れるわけにはいきません。
「ま、待ってください! 本当に申し訳ございませんでした!」
「ジェリク様、シアリン様! 僕たちはラーナに騙されたんです!」
「高い勉強代になりましたね。すぐに家に戻って、ご家族とこれからのことについて話し合ってはいかがでしょうか」
追いすがってくる彼らにそう答えると、あとのことは護衛騎士に任せて、ジェリク様と共に店を出たのでした。
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