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4 わかっていて最低なお願いをする
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「本気で言ってるんですか」
ラス様はユウヤくんの言葉が信じられなかったのか、表情を歪めて聞き返した。
「もう一人必要ならオマエしかいないだろ。ユーニは反対してるから、オレの独断だけどな」
「ふざけないで下さいよ。あなたは自分が何を言ってるか理解できてるんですか?」
「最初はオマエだって、建前上、ユーニを自分の嫁にしてオレの愛人になればいいって言ってただろ!」
ラス様の怒りの言葉に、ユウヤくんが彼の襟首をつかんで言い返す。
昔、ラス様は元婚約者と破談になった時、毎日やってくる釣書にうんざりし、私をお飾りの妻にしようとしていた時期がある。
ユウヤくんはその時の事を言ってるんだろう。
だけど、それは。
「あの時と状況が違うのはお前だってわかってるだろ!!」
ユウヤくんの手を振り放し、キレて敬語を使わなくなったラス様が叫んだ。
「そんな簡単に忘れられると……っ」
そこまで言って、私の存在を思い出した彼は言葉を止めた。
「頼む」
静かになった部屋に、ユウヤくんの声が響く。
「悔しいけど、今、ユーニを守れるのは、それくらいしか思いつかねぇんだ」
そう言って、ユウヤくんはラス様に向かって頭を下げた。
「やめてください」
「どんな奴かもわからない奴にユーニを渡すわけにはいかねぇんだよ」
「それは私も同じ意見です」
冷静さを取り戻したラス様は、大きく息を吐いたあと、頭を下げたままのユウヤくんに言う。
「頭を上げて下さい」
「オマエが承諾するまで上げない」
ユウヤくんの姿を見て泣きそうになってしまう。
私のせいではないとはいえ、私のためにユウヤくんはラス様に頭を下げ続けてくれている。
「ユウヤ、あなたと私は友人ですよね?」
「ああ」
「なら、わかって下さい。フリとはいえ、あなたの頼み事は私にとって望めないものを一時期だけつかませるようなものです。いつか手放さなければならなくなった時、どんな気持ちになると思うんですか」
ラス様が少し震えた声で言った。
アレンくんが褒美の内容を変えると言い出す日が来た時の話をしているんだろう。
そうなれば、私とラス様の関係はどうなるのか。
私がラス様の立場だったら、絶対に辛い。
「その時はその時で考える」
「自分勝手すぎる。大体、フリだけなら私じゃなくてもいいでしょう! って」
ラス様は私の方を見るなり表情を歪めた。
ユウヤくんもラス様が私を見て固まっているのに気付き、顔を上げてこちらを見た瞬間、なぜかふき出した。
なんでよ?
「ユーニ、顔! いや、可愛いけど!」
あれだけ深刻な表情をしてたにもかかわらず、ユウヤくんが笑い出す。
でも、何も言い返せない。
口を開いたら、こらえてる涙が溢れ出してしまいそうだから。
「ユーニさん、泣くのをこらえてるのかもしれませんが、その顔は」
とうとう、ラス様までが顔をそむけて笑い出してしまった。
部屋にある大きな姿見でちらりと自分の顔を見ると、泣かないために眉間にシワを寄せ、口をへの字に曲げている不細工な顔をしてる自分がいた。
いや、ひどい顔してるのはわかるけど、笑うのはどうなの?!
「ひどい」
口を開いたとたん、こらえていたものが溢れ出した。
泣くな。
我慢しろ。
そう思ってたのに。
「ごめんなさい。泣くつもりじゃなかったのに」
嫌なことをユウヤくんに言わせて、自分は傷つかない位置にいようとしていた事に本当に嫌気が差した。
しっかりしろ!
「ラス様」
「・・・・・なんでしょう」
「ラス様はいたいけな乙女の心なんて無視してたじゃないですか」
言いながら指で自分の涙を拭うと、ラス様が困った顔をしてシャツの胸ポケットからハンカチを取り出し、目元に優しく当ててくれた。
「あの時はこんな事になるなんて思わなかったんですよ」
「わかります、わかりますよ! でも、私の気持ちは無視なのはかわりないですよね」
「まあ、あの時はそうなりますね」
「じゃあ、お願いしますよ」
私はユウヤくんを見て、彼が頷くのを確認してから続けた。
「私をラス様のお飾りの愛人にして下さい」
「「は?!」」
あれ、違った?
ユウヤくんまでびっくりしてるから、言葉を間違ったのかもしれない。
まあ、いいや。
「ラス様に好きな人や結婚したい人が出来るまで、私を助けて下さい。いたいけな乙女の心を傷付けた罰です」
「傷付けましたか?」
「いや、わかんないですけど、たぶん傷ついたんですよ」
ラス様から視線をそらして答えると、ため息を吐かれた。
なんかなかったかな。
傷付いたこと……。
あ、あった!
「ありましたよラス様」
「なんですか」
「初めて会った日に私にお飾りの妻になれとおっしゃいましたね?」
「そのような事を言いましたね」
ふふふ。
「悪い顔してんなあ」
ユウヤくんの言葉は無視する。
「その時に私の胸の話をしましたね!」
「っ!」
はっきり覚えていますとも!
私の胸のサイズを確認してましたよね!
しかも自分の手と比べあわせて!
まあ、触られてはないけど。
「なんの話だ?」
今回もユウヤくんの言葉は無視する。
「あのときは申し訳ありませんでした。どの女性に対してもしてはならない事をしたと猛省しております」
ラス様は私に向かって頭を下げて続ける。
「二度とあのような発言はいたしません。ですから、今回につきましては配慮いただきたく」
ラス様が遠回しに断ろうとしてきているのがわかって、慌てて私は言葉をはさむ。
「都合の良いこと言ってるってわかってるんですよ! でも、ラス様しかいなくて!」
「オレもオマエなら信じられるから頼んでるだけで、オマエに嫌な思いさせたいわけじゃなくて」
「・・・・・はいはい、わかりましたよ」
もういい、と言わんばかりにラス様は手をたたくと、私達に向かって言った。
「あなた方は忘れてますけど、元々、私に拒否権なんてないんですよ」
「え?」
私は聞き返したが、ユウヤくんは何か思い立ったらしく、
「ああ! 何やってんだ、オレ」
頭を抱えて叫んだ。
「ど、どういう事?」
「私は次期公爵ではありますが、それまでの人間です。で、この人は?」
頭を抱えたままのユウヤくんをラス様が指差す。
それでわかった。
ユウヤくんは王子なんだから。
「ラス様に命令できる」
「正解です。頭なんて下げなくても、王子として命令すれば良かっただけです」
ラス様が呆れた顔をして言うと、横からユウヤくんが恨めしそうな声で言う。
「オマエ、最初から気付いてたんか」
「当たり前でしょう。まあ、さっきは感情がたかぶって、それどころではなくなってましたが」
「なんで言わなかったんだよ!」
「言わなくても普通は気付くでしょうし、わざわざ言いたくなかったんです」
ラス様は軽くため息を吐いてから、諦めたようにソファに座ると言葉を続ける。
「協力するのは良いにしても根本的な事をどうにかしない限り、あなた達は結婚できませんよ」
座った状態で自分の太ももに肘をおき、組んだ指を口元に当てると、ラス様は考えながら言葉を続ける。
「結婚できたとしても、ユーニさんは」
「ラスと結婚しないといけなくなる」
「このままいけばそうなります」
そう言われてみればそうか。
ユウヤくんと結婚したら、私は誰かとも結婚しなくちゃいけなくなる。
そうなると、ラス様と結婚するの?
いやいや、そんな事になったら、どれほどの人に恨まれるか!
まあ、ユウヤくんもなんだかんだと令嬢にはモテていたようだし、すでに恨まれてるのは確実だし、まあいいか。
いや、でも!
「どうしたらいいんだろ」
「アレンの考えを変えさせないといけないのか」
「そうです。この事が他の国に知られれば撤回するのが難しくなりますから、早いうちに」
ラス様がユウヤくんに答えた、その時だった。
扉がノックされ、ラス様が立ち上がり応対する。
ラス様は部下らしき人と険しい表情をしながら、小声の会話を終えると、扉を閉め、ユウヤくんに言った。
「あのバカが来てたんですか」
「ん? ああ、来てたな」
ユウヤくんは表情を歪めて頷く。
バカが来てたとは?
「あのバカ、自分が夫に立候補したい、なんて事言ってたぞ」
「はあ?!」
「しかも他の当主達の前で」
「なぜあんな奴を、そんな大事な場所に」
ラス様は取り乱すとはいかないけれど、動揺を見せて呟く。
「あの」
「どうしました?」
「バカとか言ってますが、ラス様と関係が?」
手を挙げて私が聞くと、ラス様はなぜかユウヤくんを見た。
「言うの忘れてた」
「ああ、そうですか」
ラス様はユウヤくんに呆れた表情を見せてから、今度は私に向かって言った。
「あなたを不快にさせたと思われる若い男と、その男と一緒にいた男性は私の弟と父です」
え?
あの嫌なやつがラス様の弟?!
全然、似てないんですけど???
ラス様はユウヤくんの言葉が信じられなかったのか、表情を歪めて聞き返した。
「もう一人必要ならオマエしかいないだろ。ユーニは反対してるから、オレの独断だけどな」
「ふざけないで下さいよ。あなたは自分が何を言ってるか理解できてるんですか?」
「最初はオマエだって、建前上、ユーニを自分の嫁にしてオレの愛人になればいいって言ってただろ!」
ラス様の怒りの言葉に、ユウヤくんが彼の襟首をつかんで言い返す。
昔、ラス様は元婚約者と破談になった時、毎日やってくる釣書にうんざりし、私をお飾りの妻にしようとしていた時期がある。
ユウヤくんはその時の事を言ってるんだろう。
だけど、それは。
「あの時と状況が違うのはお前だってわかってるだろ!!」
ユウヤくんの手を振り放し、キレて敬語を使わなくなったラス様が叫んだ。
「そんな簡単に忘れられると……っ」
そこまで言って、私の存在を思い出した彼は言葉を止めた。
「頼む」
静かになった部屋に、ユウヤくんの声が響く。
「悔しいけど、今、ユーニを守れるのは、それくらいしか思いつかねぇんだ」
そう言って、ユウヤくんはラス様に向かって頭を下げた。
「やめてください」
「どんな奴かもわからない奴にユーニを渡すわけにはいかねぇんだよ」
「それは私も同じ意見です」
冷静さを取り戻したラス様は、大きく息を吐いたあと、頭を下げたままのユウヤくんに言う。
「頭を上げて下さい」
「オマエが承諾するまで上げない」
ユウヤくんの姿を見て泣きそうになってしまう。
私のせいではないとはいえ、私のためにユウヤくんはラス様に頭を下げ続けてくれている。
「ユウヤ、あなたと私は友人ですよね?」
「ああ」
「なら、わかって下さい。フリとはいえ、あなたの頼み事は私にとって望めないものを一時期だけつかませるようなものです。いつか手放さなければならなくなった時、どんな気持ちになると思うんですか」
ラス様が少し震えた声で言った。
アレンくんが褒美の内容を変えると言い出す日が来た時の話をしているんだろう。
そうなれば、私とラス様の関係はどうなるのか。
私がラス様の立場だったら、絶対に辛い。
「その時はその時で考える」
「自分勝手すぎる。大体、フリだけなら私じゃなくてもいいでしょう! って」
ラス様は私の方を見るなり表情を歪めた。
ユウヤくんもラス様が私を見て固まっているのに気付き、顔を上げてこちらを見た瞬間、なぜかふき出した。
なんでよ?
「ユーニ、顔! いや、可愛いけど!」
あれだけ深刻な表情をしてたにもかかわらず、ユウヤくんが笑い出す。
でも、何も言い返せない。
口を開いたら、こらえてる涙が溢れ出してしまいそうだから。
「ユーニさん、泣くのをこらえてるのかもしれませんが、その顔は」
とうとう、ラス様までが顔をそむけて笑い出してしまった。
部屋にある大きな姿見でちらりと自分の顔を見ると、泣かないために眉間にシワを寄せ、口をへの字に曲げている不細工な顔をしてる自分がいた。
いや、ひどい顔してるのはわかるけど、笑うのはどうなの?!
「ひどい」
口を開いたとたん、こらえていたものが溢れ出した。
泣くな。
我慢しろ。
そう思ってたのに。
「ごめんなさい。泣くつもりじゃなかったのに」
嫌なことをユウヤくんに言わせて、自分は傷つかない位置にいようとしていた事に本当に嫌気が差した。
しっかりしろ!
「ラス様」
「・・・・・なんでしょう」
「ラス様はいたいけな乙女の心なんて無視してたじゃないですか」
言いながら指で自分の涙を拭うと、ラス様が困った顔をしてシャツの胸ポケットからハンカチを取り出し、目元に優しく当ててくれた。
「あの時はこんな事になるなんて思わなかったんですよ」
「わかります、わかりますよ! でも、私の気持ちは無視なのはかわりないですよね」
「まあ、あの時はそうなりますね」
「じゃあ、お願いしますよ」
私はユウヤくんを見て、彼が頷くのを確認してから続けた。
「私をラス様のお飾りの愛人にして下さい」
「「は?!」」
あれ、違った?
ユウヤくんまでびっくりしてるから、言葉を間違ったのかもしれない。
まあ、いいや。
「ラス様に好きな人や結婚したい人が出来るまで、私を助けて下さい。いたいけな乙女の心を傷付けた罰です」
「傷付けましたか?」
「いや、わかんないですけど、たぶん傷ついたんですよ」
ラス様から視線をそらして答えると、ため息を吐かれた。
なんかなかったかな。
傷付いたこと……。
あ、あった!
「ありましたよラス様」
「なんですか」
「初めて会った日に私にお飾りの妻になれとおっしゃいましたね?」
「そのような事を言いましたね」
ふふふ。
「悪い顔してんなあ」
ユウヤくんの言葉は無視する。
「その時に私の胸の話をしましたね!」
「っ!」
はっきり覚えていますとも!
私の胸のサイズを確認してましたよね!
しかも自分の手と比べあわせて!
まあ、触られてはないけど。
「なんの話だ?」
今回もユウヤくんの言葉は無視する。
「あのときは申し訳ありませんでした。どの女性に対してもしてはならない事をしたと猛省しております」
ラス様は私に向かって頭を下げて続ける。
「二度とあのような発言はいたしません。ですから、今回につきましては配慮いただきたく」
ラス様が遠回しに断ろうとしてきているのがわかって、慌てて私は言葉をはさむ。
「都合の良いこと言ってるってわかってるんですよ! でも、ラス様しかいなくて!」
「オレもオマエなら信じられるから頼んでるだけで、オマエに嫌な思いさせたいわけじゃなくて」
「・・・・・はいはい、わかりましたよ」
もういい、と言わんばかりにラス様は手をたたくと、私達に向かって言った。
「あなた方は忘れてますけど、元々、私に拒否権なんてないんですよ」
「え?」
私は聞き返したが、ユウヤくんは何か思い立ったらしく、
「ああ! 何やってんだ、オレ」
頭を抱えて叫んだ。
「ど、どういう事?」
「私は次期公爵ではありますが、それまでの人間です。で、この人は?」
頭を抱えたままのユウヤくんをラス様が指差す。
それでわかった。
ユウヤくんは王子なんだから。
「ラス様に命令できる」
「正解です。頭なんて下げなくても、王子として命令すれば良かっただけです」
ラス様が呆れた顔をして言うと、横からユウヤくんが恨めしそうな声で言う。
「オマエ、最初から気付いてたんか」
「当たり前でしょう。まあ、さっきは感情がたかぶって、それどころではなくなってましたが」
「なんで言わなかったんだよ!」
「言わなくても普通は気付くでしょうし、わざわざ言いたくなかったんです」
ラス様は軽くため息を吐いてから、諦めたようにソファに座ると言葉を続ける。
「協力するのは良いにしても根本的な事をどうにかしない限り、あなた達は結婚できませんよ」
座った状態で自分の太ももに肘をおき、組んだ指を口元に当てると、ラス様は考えながら言葉を続ける。
「結婚できたとしても、ユーニさんは」
「ラスと結婚しないといけなくなる」
「このままいけばそうなります」
そう言われてみればそうか。
ユウヤくんと結婚したら、私は誰かとも結婚しなくちゃいけなくなる。
そうなると、ラス様と結婚するの?
いやいや、そんな事になったら、どれほどの人に恨まれるか!
まあ、ユウヤくんもなんだかんだと令嬢にはモテていたようだし、すでに恨まれてるのは確実だし、まあいいか。
いや、でも!
「どうしたらいいんだろ」
「アレンの考えを変えさせないといけないのか」
「そうです。この事が他の国に知られれば撤回するのが難しくなりますから、早いうちに」
ラス様がユウヤくんに答えた、その時だった。
扉がノックされ、ラス様が立ち上がり応対する。
ラス様は部下らしき人と険しい表情をしながら、小声の会話を終えると、扉を閉め、ユウヤくんに言った。
「あのバカが来てたんですか」
「ん? ああ、来てたな」
ユウヤくんは表情を歪めて頷く。
バカが来てたとは?
「あのバカ、自分が夫に立候補したい、なんて事言ってたぞ」
「はあ?!」
「しかも他の当主達の前で」
「なぜあんな奴を、そんな大事な場所に」
ラス様は取り乱すとはいかないけれど、動揺を見せて呟く。
「あの」
「どうしました?」
「バカとか言ってますが、ラス様と関係が?」
手を挙げて私が聞くと、ラス様はなぜかユウヤくんを見た。
「言うの忘れてた」
「ああ、そうですか」
ラス様はユウヤくんに呆れた表情を見せてから、今度は私に向かって言った。
「あなたを不快にさせたと思われる若い男と、その男と一緒にいた男性は私の弟と父です」
え?
あの嫌なやつがラス様の弟?!
全然、似てないんですけど???
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