【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ

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11 聞いてしまいました!

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 サナトラの一件があるからか、ラス様の秘書的な事をしてる人達も朝早くから出勤していて、執務室までの道程はとても慌ただしかった。
 朝の挨拶をしながら部屋を通り抜けて、奥にあるラス様の執務室に着いた。

 ノックをすると、すぐに返事が返ってきたので、お邪魔させてもらう。

「おはようございます、ラス様」
「ユーニさん、体調は?」

 座ったままだけれど、挨拶もそっちのけで体調を心配してくれる、ラス様に笑って答える。

「もう元気です。昨日はご迷惑おかけしました」
「あまり無理はなさらないように」
「ありがとうございます。あの、今、お忙しいですか」

 中に入っていくと、ラス様の机の上には世界地図や手紙らしきもの、何かを調べていたのか、分厚い本も置いてあって、何やら大変そうだ。

「少しお待ちいただけますか。なんなら、掛けていただいて、そのままお話いただいてもいいですよ」
「ありがとうございます。では」

 いつもの応接のソファに座り、私はもじもじしながらも話しかける。

「あの、ラス様」
「なんでしょう?」
「も、もしですね、私がラス様とも結婚しないといけなくなった場合」
「今の状態が続けばそうなる可能性はありますが、そうならないように努力はしますよ」

 ラス様は書類から顔を上げず、そう返してくれた。
 でもすぐに、私が何か言いよどんでいる事に気が付き、ため息を吐くと書類を机に置いて私の横に座ってくれた。

「飲み物でも?」
「あ、いえ、私はいいです」

 ラス様はテーブルの上に置かれていたコップに、魔法で水を満たすと、一口飲んでから促す。

「何か聞きたいことがあるんですか?」
「あ、あのラス様、その、レディが聞くような話ではないんですが、気になってしまいまして」
「なんでしょう」

 こんな話を聞いていいのか?
 でも気になるし。
 や、でも、やはり実際にそうなってから聞く?
 リアは聞いてみたら、って言ってたし、聞いてもおかしくない?
 いやいや、気が早すぎる?
 こんな質問はユウヤくんへの裏切り行為なの?
 それなら絶対に聞いちゃ駄目だし。
 でも、ユウヤくんも気にしてたみたいだったし。

「ユーニさん、怒ったりしませんからどうぞ」

 うう。
 ラス様もそう言ってくれてるし。
 ええい、言っちゃえ!

「嫌ったりとか、恥知らずとか思わないで下さいね」
「・・・・・たぶん、大丈夫かと思いますが」

 ラス様が不思議そうに私の顔をのぞきこんでくる。
 なので、勇気を出して本題に入ることにした。

「あの、もし結婚する事になったら」
「はい」
「あの、夜の方は」
「は?」
「ですから、夜の方はどうお考えになられてますか!」

 私はラス様の方を見ずに一気にまくし立てる。

「そりゃあ、初めてはユウヤくんがいいんですけど、ラス様には迷惑かけてるし、嫌か、と言われたら、どんな事をするか詳しくはわからないから、なんとも言えないんですけど、そのラス様は私と、そういうのしたいんでしょうか」

 恥ずかしさのあまり、自分の両手で太ももをにぎりしめる。
 ああ、恥ずかしい。
 やっぱり聞くんじゃなかった。
 でも、ほんと、何をするかわかんないし!
 そりゃ、そのキスよりもすごい事をするのはわかりますよ。
 うう。
 ラス様、呆れてるよね。

 ちらりと、ラス様の方を見てみると、予想とは違った。

 ラス様は自分の顔を隠すように頭を抱えていた。
 ん、耳が赤い?
 もしかして。

「あれ、ラス様、照れてます?」
「・・・・・びっくりしただけです」

 ラス様は頭を抱えたまま答えると、そのままの状態で質問を返してきた。

「ユウヤにその話は?」
「してません。リアにはしましたけど」
「リアさんはなんと?」
「確認してみたらって」
「何を考えてるんですか」

 ラス様はとうとう前のめりになってしまう。
 なんか、可愛い。
 ラス様に初めて勝てた気がする。
 ちょっと頭をナデナデしたい気分。

「ユウヤが聞いたら怒りますよ」
「う。だから、ユウヤくんがいない今、聞いたんじゃないですか」
「それはそうかもしれませんが、直接、私に聞きますか」
「だってリアが聞いてみたらって」
「本当にリアさんが?」

 ラス様はなぜか不信そうな表情で聞き返してきた。
 そして、何やら少し考えたあと、ため息を吐いてから口を開く。

「たぶん、リアさんは冗談のつもりだったと思いますよ」
「え?!」
「なので聞いたこと、後悔させます」
「な、なんでですか」
「あなたを好きだと言ってる、恋人でもない男と二人きりになってる上に、そんな話をするのは無防備すぎるでしょう」

 うっ。
 そう言われたらそうかも。

「ラ、ラス様。初夜ってどんな事するのかもわからないんですよ! えっちな事なのかな、って事くらいはわかるんですよ! ただ、具体的に何をするんですか?!」
「それはユウヤが教えてくれますよ。必要になれば私も教えます。でも、今はお仕置きです」
「え、なんで、うひゃあ! や、やめてくださいぃ!」

 ラス様が、私の横腹をくすぐり始めたのでソファに倒れ込んで悶る。
 動きやすい服装にしていたのが仇になった。

「ほんと、ごめ、ひあっ!」

 必死にラス様の手を掴むけれど、力が強いので止められない。
 その時だった。
 
「ラス、入るぞ。なんか、ユウヤが様子見に行けって」

 ノックをしないで有名?なユウマくんが扉を開けて、途中で言葉を止める。

「ちょっと、ノックしろって、何?」

 固まっているユウマくんの後ろから、リアが入ってきて、彼と同じように私達を見て固まった。

 こ、この状態は良くない。
 はたから見れば、今の状態は私がラス様にソファに押し倒されているところだ。

「こ、これは違いますよ!」
「そうだよ! 誤解しないで」 
「ここ最近、ユウヤ派にするかラス派にするか迷ってたけど、やっぱりラス派もいいなあ」

 ユウヤ派?
 ラス派?
 慌てるラス様と私にリアが訳のわからない事を言い出した。

「いや、その、お邪魔しました。行くぞリア」
「はーい」
「ユウマ! リアさん!」
「リア! ユウマくん!」

 リアを連れて部屋から出ようとするユウマくんとリアの背中を、ラス様と私のは慌てて追いかけた。




「まあ、なにかのはずみかなんかだろうなとは思ったけどな」
「なんなんだよ」

 なんとかユウマくん達を引き止め、事情を説明すると引き止めたら、ユウヤくんもちょうどやって来て、一緒に話をする事になった。

「一体、何があってあんな事になったの?」
「元々はリアがあんな話をするから!」
「え、まさか、あの話をしたの?」
「だって」
「バカ正直すぎるでしょ」

 テーブルをはさんで向かいに座るリアが大爆笑する。

 うう。
 覚えとけよ。

「なんの話なんだよ」

 私の隣に座るユウヤくんだけ意味がわからず、仏頂面をしてるので、一人がけのソファに座ったラス様が答える。

「ユウマとリアさんが変な誤解をしそうになってたので」
「誤解?」
「ラスがユーニちゃんを押し」

 ユウマくんがそこまで言ったところで、ラス様がユウマくんの頭をたたき、リアが頬を平手打ちした。

「何すんだよ?!」
「話をややこしくしないで」
「リアさん、わかっていただきありがとうございます」
「いえいえ。でもできれば、あの状況を私で再現いただきたい」

 リアがにやにやして言うと、ラス様は何も隠すことがないからか、けろりとした表情で、

「いいですよ」

 そう答えてから、ユウマくんに言った。

「ユウマ、リアさんに触れますよ」
「なんで」
「さっきの状況を再現するからですよ」

 ふふ。
 リアめ、後悔すると良いよ。

 ラス様はユウマくんと位置を代わってもらい、隣に座ると、予告なしにリアの横腹をくすぐりはじめた。

「にゃああ! ひゃっ、やめ」

 リアがどうにかラス様の手から逃れようと、ソファの上で身体を丸める。

「再現をお願いされたのはリアさんですが?」
「ごめ、ひああっ」

 ジタバタしてるリアが可愛くて、なんかニヤニヤしてしまう。
 が、ユウマくんは気に入らないようで、

「ラス、止めてやれ」
「承知しました」

 ラス様は笑みを浮かべると、くすぐる指を止めた。

「は、反則ですよ、ラス様!」

 リアは起き上がるなり、肩で大きく息をしながら、ラス様の両手をつかんで叫ぶ。

「お願いしたのはリアさんでしょう。あと、あんな事を言うからです」
「あんな事?」
「冗談だと気づいてなかったようです」
「え?」

 リアがラス様の両手をつかんだままこちらを見るので、明後日の方向を見て目をそらす。
 それで、私がすべて正直に話したことがわかったらしい。

「ほんとにバカ正直に言ってどうするの!」
「だって!」
「なんの話か見えないんだが?」

 私に顔を近づけてくるユウヤくんの表情は笑っているように見えるけれど、目は笑ってない。

「私は悪くない、いや、悪いか」
「悪いです」

 ユウヤくんの視線から逃れるように目をそらして言うと、ラス様にきっぱりと言われてしまった。

 そ、そうだよね。
 ラス様だから大丈夫だっただけで、他の人だったら違ったかもしれない。

 すると、ラス様がリアを手招きし、少し私達から離れると背を向け小声で話しはじめた。

「ええっ?! 本当にそんな話を?!」

 リアが驚きの声を上げる。

「ですから、ちゃんと教えてあげていただいても?」
「うちの子がすみませんでした」

 ラス様にリアは深々と頭を下げたあと、私に向き直って言った。

「ユーニ、ちょっと話そうか」

 そう言ったリアの顔は、とても恐ろしかった。
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