【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ

文字の大きさ
23 / 53

23 ひとりじゃない

しおりを挟む
 時間が近づいてきたので、私とリアは同じ馬車に乗り込み、ミランダ様の馬車には命令だと無茶な事を言って、ジンさんを無理矢理乗せた。
 荒療治かもしれないけど、功を奏すかもしれないし。
 で、私達はイヤーカフでラス様に連絡をとる。
 今日に限ってはピンチじゃなくても通信できるようにしてもらっていたので、ちょうど良かった。

「どうしました?」

 わかっているはずなのに、耳元でラス様の声が聞こえてドキリとする。
 こういうとこがユウヤくんを不安にさせちゃうのかな?

「どうもこうもないですよ、一大事です」
「一大事ってどういう事だ?」

 リアが発言したからか、ラス様の代わりにユウマくんの声が返ってきた。
 どうやら今日だけ、私達と会話ができるよう魔法を付与してもらったみたい。

「あの、インダーリッド伯爵令嬢なんですけど」
「どうかしましたか?」
「急遽、今回のお茶会に参加されるそうなんです。ミランダ様がさっき教えてくれました」
「・・・・・そうですか。御令嬢方の情報網はすごいですね」

 ラス様にはその情報がつかみとれてなかったんだ。
 まあ、そうだよね。
 知ってたら、すぐに教えてくれてたはず。

「その、インダーリッド伯爵令嬢に気をつけないといけない事はあるんですか?」

 リアが聞くと、ラス様は小さく息を吐いてから答えた。

「面と向かって危害を加えてくるような女性ではありません。粘着質ではあるかもですが」
「ラスの件がなかったら、見た目も中身もおとなしい令嬢だよな」

 ユウヤくんの声が聞こえた。
 今、三人は一緒にいるのかな?

「もし、現地に着いて、名前が出てこない、などありましたら特徴を教えて下さい。わかる範囲になりますがお伝えしますので」
「ありがとうございます」

 礼を言うと、リアも笑顔で言う。

「ラス様がついてくれてるなら安心です」
「オレも一応いるからな」
「はいはい。頼りにしてます」

 ユウマくんの言葉に、リアは軽く笑ってから答えた。
 なんか、リアは余裕そうで羨ましい。
 まあ、今回のお茶会は私のみハードルが高いだけかもだけど。
 でも、これからこんな事は起こるだろうから、場馴れするのも大事だよね。

「あ、ちなみに、マーガレット嬢とバーベナ嬢は刺激しても大丈夫なんですか?」
「どういう意味です?」
「言い返したりしても大丈夫ですか?」
「そういう事ですか。まあ、ことを荒立てないのが一番ですが、あまりにひどい場合はどうぞ。責任はあなた方の婚約者におってもらいます」

 リアの質問にラス様はきっぱりと答えた。

「多少はキツイこと言ってもいいけど、相手は女なんだから言い過ぎるなよ」
「あんたは私をなんだと思ってるの」
「オマエは昔から苦労してるだろ」

 リアとユウマくんのやり取りで気付かされた。
 リアは余裕なんかじゃなくて、相手は違えど、何度も同じ思いをしてるんだ。
 そういえば、リアの事を相手が勝手に好きになっただけなのに、彼氏をとられた、とか、逆恨みみたいな事をする子もいたもんな。

「リア、私、頑張る」
「うん?」

 不思議そうにするリアに、両拳を握りしめて決意表明した。

「そういえば」

 ラス様の声が聞こえて、話すのをやめる。

「ジンをバーベナ嬢に会わせないようにだけ、お願いします。私と婚約破棄になる原因を作ったのは彼ですから」
「そうだった・・・・・」

 ミランダ様の事ばかり考えていたせいで、すっかり頭から抜け落ちていた。
 不安になったので聞いてみる。

「ジンさんを見たら、何かする可能性はありますか?」
「可能性はあります。まあ、よっぽどの事でない限り、バーベナ嬢に傷付けられるという事はないでしょうが」

 ラス様の言葉を聞いて、リアと顔を見合わせる。
 そんな話を聞くと、バーベナ嬢は全然、大人しくないし、どちらかというと過激な匂いしかない。

「大丈夫ですよ。あなた達に手を出す、という事はバーベナ嬢に限ってはありませんから。あと、知り合いの女性にも声をかけておきましたし、力になってくれるでしょう」

 顔を見てもいないのに、私達の不安を感じ取ったのか、ラス様が優しい口調で言った。
 知り合いの女性って、どんな方ですか?
 と聞き返す前に馬車が止まったため、ここで会話を終了する事になった。



 ウッグス邸に着くとミランダ様と共に、中庭がよく見えるテラスに案内された。
 もうすでに何人か人は集まっていて、ミランダ様の友人らしき人が彼女に手を振ったあと、私達の方にも頭を下げてくれた。
 そして、ラス様が言っていた知り合いの女性が誰だかわかった。

「ごきげんよう、エアリー様!」
「エアリー様、お久しぶりです」
「お久しぶりね。お会いできて嬉しいわ!」

 ミランダ様は友人がいるテーブルの方へ行き、私とリアは、一人でテーブルを独占していた、エアリー様の元へ向かった。
 エアリー・ビシェット公爵令嬢は金色の髪を持つ碧眼の女性で、私達が正式に婚約者になる前に知り合ったのだけど、平民の私達にも優しくしてくれた、美人さんでとても優しい人だ。
 手紙では何度もやり取りをしていたけれど、会うのは久しぶりで興奮してしまう。

「お元気にされてましたか?」
「ええ、もちろん」

 本来なら招いてくれた人の元へ向かうべきなのだろうけど、今はこの場にいないみたい。
 もし、この場にいたなら、ミランダ様が一緒に挨拶に行こうと誘ってくれるはずだから。

「ラス様が直接、屋敷に来られた時は驚いたわ」

 扇で口元を隠して微笑んで、エアリー様は続ける。

「ユーニさんとリアさんをお願いします、って頼んでくるんですもの。たかがお茶会で、と思いはしたけれど、事情を聞いてみたら相手が相手ですものね。それに」

 一度言葉を区切り、ちらり、とエミリー様は5つある丸テーブルの1つに、目だけ向けて続けた。

「インダーリッド伯爵令嬢まで来ているなら尚更ね」

 エミリー様の言葉を聞いて、リアと顔を見合わせたあと、横目で確認してみる。
 エアリー様が見ていたのは、ミランダ様とお友達がお話している、四人掛けのテーブルで、一人だけ俯いている女性だった。
 横顔しか見えないけれど、病気なのかと思うくらいに細く、白く透き通るような肌に、腰まである長い黒髪をアップにするわけでもなく、紫色のリボンで一つにまとめていた。
 他三人が談笑しつつも、時折、気を遣うように彼女に声を掛けているけれど、言葉を発する様子もなく、ただ、静かに頷いたりするだけで、本当に大人しそうな女性だった。

「何かお手伝いできれば嬉しいわ。それにお二人には聞きたいこともたくさんあるのよ。さ、お座りになって」

 なぜ、エアリー様一人で座っているんだろうと思ってたけど、私達を座らせるためだったのか、と納得する。
 と、その時だった。

「あら、いらしたわよ」

 エアリー様が小さな声で私達に教えてくれた。
 テラスへの扉が開き、中から現れたのは、濃い赤色のプリンセスラインのドレスに身を包み、赤色のウェーブのかかった腰まで長い髪をおろした、見るからに気の強そうな美女だった。
 
「ごきげんよう皆さま。楽しんでくれていらして?」

 マーガレット嬢は面々に笑顔で挨拶をしたあと、私に向かって言った。

「お初にお目にかかります、マーガレット・ウッグスと申します。ユーニ様、と呼ばせていただいても?」
「もちろんです」
「私の事はマーガレットとお呼びください」

 私に向けた彼女の表情は笑ってはいるけれど、目は全然笑っていなかった。
 今までならここで帰りたくなってたかもしれない。
 だけど、私だって精神的に強くなってる。

「大丈夫だからね」
「私もいますわ」

 大丈夫。
 私は一人じゃない。
 リアとエアリー様の声を聞いて、マーガレット様への恐怖が消え去った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-

七瀬菜々
恋愛
 ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。   両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。  もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。  ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。  ---愛されていないわけじゃない。  アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。  しかし、その願いが届くことはなかった。  アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。  かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。  アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。 ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。  アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。  結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。  望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………? ※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。    ※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。 ※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。  

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。

水鳥楓椛
恋愛
 男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。  イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!

駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』 という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。 それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。 そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。 まず、夫が会いに来ない。 次に、使用人が仕事をしてくれない。 なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。 でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……? そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。 すると、まさかの大激怒!? あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。 ────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。 と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……? 善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。 ────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください! ◆小説家になろう様でも、公開中◆

処理中です...