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23 ひとりじゃない
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時間が近づいてきたので、私とリアは同じ馬車に乗り込み、ミランダ様の馬車には命令だと無茶な事を言って、ジンさんを無理矢理乗せた。
荒療治かもしれないけど、功を奏すかもしれないし。
で、私達はイヤーカフでラス様に連絡をとる。
今日に限ってはピンチじゃなくても通信できるようにしてもらっていたので、ちょうど良かった。
「どうしました?」
わかっているはずなのに、耳元でラス様の声が聞こえてドキリとする。
こういうとこがユウヤくんを不安にさせちゃうのかな?
「どうもこうもないですよ、一大事です」
「一大事ってどういう事だ?」
リアが発言したからか、ラス様の代わりにユウマくんの声が返ってきた。
どうやら今日だけ、私達と会話ができるよう魔法を付与してもらったみたい。
「あの、インダーリッド伯爵令嬢なんですけど」
「どうかしましたか?」
「急遽、今回のお茶会に参加されるそうなんです。ミランダ様がさっき教えてくれました」
「・・・・・そうですか。御令嬢方の情報網はすごいですね」
ラス様にはその情報がつかみとれてなかったんだ。
まあ、そうだよね。
知ってたら、すぐに教えてくれてたはず。
「その、インダーリッド伯爵令嬢に気をつけないといけない事はあるんですか?」
リアが聞くと、ラス様は小さく息を吐いてから答えた。
「面と向かって危害を加えてくるような女性ではありません。粘着質ではあるかもですが」
「ラスの件がなかったら、見た目も中身もおとなしい令嬢だよな」
ユウヤくんの声が聞こえた。
今、三人は一緒にいるのかな?
「もし、現地に着いて、名前が出てこない、などありましたら特徴を教えて下さい。わかる範囲になりますがお伝えしますので」
「ありがとうございます」
礼を言うと、リアも笑顔で言う。
「ラス様がついてくれてるなら安心です」
「オレも一応いるからな」
「はいはい。頼りにしてます」
ユウマくんの言葉に、リアは軽く笑ってから答えた。
なんか、リアは余裕そうで羨ましい。
まあ、今回のお茶会は私のみハードルが高いだけかもだけど。
でも、これからこんな事は起こるだろうから、場馴れするのも大事だよね。
「あ、ちなみに、マーガレット嬢とバーベナ嬢は刺激しても大丈夫なんですか?」
「どういう意味です?」
「言い返したりしても大丈夫ですか?」
「そういう事ですか。まあ、ことを荒立てないのが一番ですが、あまりにひどい場合はどうぞ。責任はあなた方の婚約者におってもらいます」
リアの質問にラス様はきっぱりと答えた。
「多少はキツイこと言ってもいいけど、相手は女なんだから言い過ぎるなよ」
「あんたは私をなんだと思ってるの」
「オマエは昔から苦労してるだろ」
リアとユウマくんのやり取りで気付かされた。
リアは余裕なんかじゃなくて、相手は違えど、何度も同じ思いをしてるんだ。
そういえば、リアの事を相手が勝手に好きになっただけなのに、彼氏をとられた、とか、逆恨みみたいな事をする子もいたもんな。
「リア、私、頑張る」
「うん?」
不思議そうにするリアに、両拳を握りしめて決意表明した。
「そういえば」
ラス様の声が聞こえて、話すのをやめる。
「ジンをバーベナ嬢に会わせないようにだけ、お願いします。私と婚約破棄になる原因を作ったのは彼ですから」
「そうだった・・・・・」
ミランダ様の事ばかり考えていたせいで、すっかり頭から抜け落ちていた。
不安になったので聞いてみる。
「ジンさんを見たら、何かする可能性はありますか?」
「可能性はあります。まあ、よっぽどの事でない限り、バーベナ嬢に傷付けられるという事はないでしょうが」
ラス様の言葉を聞いて、リアと顔を見合わせる。
そんな話を聞くと、バーベナ嬢は全然、大人しくないし、どちらかというと過激な匂いしかない。
「大丈夫ですよ。あなた達に手を出す、という事はバーベナ嬢に限ってはありませんから。あと、知り合いの女性にも声をかけておきましたし、力になってくれるでしょう」
顔を見てもいないのに、私達の不安を感じ取ったのか、ラス様が優しい口調で言った。
知り合いの女性って、どんな方ですか?
と聞き返す前に馬車が止まったため、ここで会話を終了する事になった。
ウッグス邸に着くとミランダ様と共に、中庭がよく見えるテラスに案内された。
もうすでに何人か人は集まっていて、ミランダ様の友人らしき人が彼女に手を振ったあと、私達の方にも頭を下げてくれた。
そして、ラス様が言っていた知り合いの女性が誰だかわかった。
「ごきげんよう、エアリー様!」
「エアリー様、お久しぶりです」
「お久しぶりね。お会いできて嬉しいわ!」
ミランダ様は友人がいるテーブルの方へ行き、私とリアは、一人でテーブルを独占していた、エアリー様の元へ向かった。
エアリー・ビシェット公爵令嬢は金色の髪を持つ碧眼の女性で、私達が正式に婚約者になる前に知り合ったのだけど、平民の私達にも優しくしてくれた、美人さんでとても優しい人だ。
手紙では何度もやり取りをしていたけれど、会うのは久しぶりで興奮してしまう。
「お元気にされてましたか?」
「ええ、もちろん」
本来なら招いてくれた人の元へ向かうべきなのだろうけど、今はこの場にいないみたい。
もし、この場にいたなら、ミランダ様が一緒に挨拶に行こうと誘ってくれるはずだから。
「ラス様が直接、屋敷に来られた時は驚いたわ」
扇で口元を隠して微笑んで、エアリー様は続ける。
「ユーニさんとリアさんをお願いします、って頼んでくるんですもの。たかがお茶会で、と思いはしたけれど、事情を聞いてみたら相手が相手ですものね。それに」
一度言葉を区切り、ちらり、とエミリー様は5つある丸テーブルの1つに、目だけ向けて続けた。
「インダーリッド伯爵令嬢まで来ているなら尚更ね」
エミリー様の言葉を聞いて、リアと顔を見合わせたあと、横目で確認してみる。
エアリー様が見ていたのは、ミランダ様とお友達がお話している、四人掛けのテーブルで、一人だけ俯いている女性だった。
横顔しか見えないけれど、病気なのかと思うくらいに細く、白く透き通るような肌に、腰まである長い黒髪をアップにするわけでもなく、紫色のリボンで一つにまとめていた。
他三人が談笑しつつも、時折、気を遣うように彼女に声を掛けているけれど、言葉を発する様子もなく、ただ、静かに頷いたりするだけで、本当に大人しそうな女性だった。
「何かお手伝いできれば嬉しいわ。それにお二人には聞きたいこともたくさんあるのよ。さ、お座りになって」
なぜ、エアリー様一人で座っているんだろうと思ってたけど、私達を座らせるためだったのか、と納得する。
と、その時だった。
「あら、いらしたわよ」
エアリー様が小さな声で私達に教えてくれた。
テラスへの扉が開き、中から現れたのは、濃い赤色のプリンセスラインのドレスに身を包み、赤色のウェーブのかかった腰まで長い髪をおろした、見るからに気の強そうな美女だった。
「ごきげんよう皆さま。楽しんでくれていらして?」
マーガレット嬢は面々に笑顔で挨拶をしたあと、私に向かって言った。
「お初にお目にかかります、マーガレット・ウッグスと申します。ユーニ様、と呼ばせていただいても?」
「もちろんです」
「私の事はマーガレットとお呼びください」
私に向けた彼女の表情は笑ってはいるけれど、目は全然笑っていなかった。
今までならここで帰りたくなってたかもしれない。
だけど、私だって精神的に強くなってる。
「大丈夫だからね」
「私もいますわ」
大丈夫。
私は一人じゃない。
リアとエアリー様の声を聞いて、マーガレット様への恐怖が消え去った。
荒療治かもしれないけど、功を奏すかもしれないし。
で、私達はイヤーカフでラス様に連絡をとる。
今日に限ってはピンチじゃなくても通信できるようにしてもらっていたので、ちょうど良かった。
「どうしました?」
わかっているはずなのに、耳元でラス様の声が聞こえてドキリとする。
こういうとこがユウヤくんを不安にさせちゃうのかな?
「どうもこうもないですよ、一大事です」
「一大事ってどういう事だ?」
リアが発言したからか、ラス様の代わりにユウマくんの声が返ってきた。
どうやら今日だけ、私達と会話ができるよう魔法を付与してもらったみたい。
「あの、インダーリッド伯爵令嬢なんですけど」
「どうかしましたか?」
「急遽、今回のお茶会に参加されるそうなんです。ミランダ様がさっき教えてくれました」
「・・・・・そうですか。御令嬢方の情報網はすごいですね」
ラス様にはその情報がつかみとれてなかったんだ。
まあ、そうだよね。
知ってたら、すぐに教えてくれてたはず。
「その、インダーリッド伯爵令嬢に気をつけないといけない事はあるんですか?」
リアが聞くと、ラス様は小さく息を吐いてから答えた。
「面と向かって危害を加えてくるような女性ではありません。粘着質ではあるかもですが」
「ラスの件がなかったら、見た目も中身もおとなしい令嬢だよな」
ユウヤくんの声が聞こえた。
今、三人は一緒にいるのかな?
「もし、現地に着いて、名前が出てこない、などありましたら特徴を教えて下さい。わかる範囲になりますがお伝えしますので」
「ありがとうございます」
礼を言うと、リアも笑顔で言う。
「ラス様がついてくれてるなら安心です」
「オレも一応いるからな」
「はいはい。頼りにしてます」
ユウマくんの言葉に、リアは軽く笑ってから答えた。
なんか、リアは余裕そうで羨ましい。
まあ、今回のお茶会は私のみハードルが高いだけかもだけど。
でも、これからこんな事は起こるだろうから、場馴れするのも大事だよね。
「あ、ちなみに、マーガレット嬢とバーベナ嬢は刺激しても大丈夫なんですか?」
「どういう意味です?」
「言い返したりしても大丈夫ですか?」
「そういう事ですか。まあ、ことを荒立てないのが一番ですが、あまりにひどい場合はどうぞ。責任はあなた方の婚約者におってもらいます」
リアの質問にラス様はきっぱりと答えた。
「多少はキツイこと言ってもいいけど、相手は女なんだから言い過ぎるなよ」
「あんたは私をなんだと思ってるの」
「オマエは昔から苦労してるだろ」
リアとユウマくんのやり取りで気付かされた。
リアは余裕なんかじゃなくて、相手は違えど、何度も同じ思いをしてるんだ。
そういえば、リアの事を相手が勝手に好きになっただけなのに、彼氏をとられた、とか、逆恨みみたいな事をする子もいたもんな。
「リア、私、頑張る」
「うん?」
不思議そうにするリアに、両拳を握りしめて決意表明した。
「そういえば」
ラス様の声が聞こえて、話すのをやめる。
「ジンをバーベナ嬢に会わせないようにだけ、お願いします。私と婚約破棄になる原因を作ったのは彼ですから」
「そうだった・・・・・」
ミランダ様の事ばかり考えていたせいで、すっかり頭から抜け落ちていた。
不安になったので聞いてみる。
「ジンさんを見たら、何かする可能性はありますか?」
「可能性はあります。まあ、よっぽどの事でない限り、バーベナ嬢に傷付けられるという事はないでしょうが」
ラス様の言葉を聞いて、リアと顔を見合わせる。
そんな話を聞くと、バーベナ嬢は全然、大人しくないし、どちらかというと過激な匂いしかない。
「大丈夫ですよ。あなた達に手を出す、という事はバーベナ嬢に限ってはありませんから。あと、知り合いの女性にも声をかけておきましたし、力になってくれるでしょう」
顔を見てもいないのに、私達の不安を感じ取ったのか、ラス様が優しい口調で言った。
知り合いの女性って、どんな方ですか?
と聞き返す前に馬車が止まったため、ここで会話を終了する事になった。
ウッグス邸に着くとミランダ様と共に、中庭がよく見えるテラスに案内された。
もうすでに何人か人は集まっていて、ミランダ様の友人らしき人が彼女に手を振ったあと、私達の方にも頭を下げてくれた。
そして、ラス様が言っていた知り合いの女性が誰だかわかった。
「ごきげんよう、エアリー様!」
「エアリー様、お久しぶりです」
「お久しぶりね。お会いできて嬉しいわ!」
ミランダ様は友人がいるテーブルの方へ行き、私とリアは、一人でテーブルを独占していた、エアリー様の元へ向かった。
エアリー・ビシェット公爵令嬢は金色の髪を持つ碧眼の女性で、私達が正式に婚約者になる前に知り合ったのだけど、平民の私達にも優しくしてくれた、美人さんでとても優しい人だ。
手紙では何度もやり取りをしていたけれど、会うのは久しぶりで興奮してしまう。
「お元気にされてましたか?」
「ええ、もちろん」
本来なら招いてくれた人の元へ向かうべきなのだろうけど、今はこの場にいないみたい。
もし、この場にいたなら、ミランダ様が一緒に挨拶に行こうと誘ってくれるはずだから。
「ラス様が直接、屋敷に来られた時は驚いたわ」
扇で口元を隠して微笑んで、エアリー様は続ける。
「ユーニさんとリアさんをお願いします、って頼んでくるんですもの。たかがお茶会で、と思いはしたけれど、事情を聞いてみたら相手が相手ですものね。それに」
一度言葉を区切り、ちらり、とエミリー様は5つある丸テーブルの1つに、目だけ向けて続けた。
「インダーリッド伯爵令嬢まで来ているなら尚更ね」
エミリー様の言葉を聞いて、リアと顔を見合わせたあと、横目で確認してみる。
エアリー様が見ていたのは、ミランダ様とお友達がお話している、四人掛けのテーブルで、一人だけ俯いている女性だった。
横顔しか見えないけれど、病気なのかと思うくらいに細く、白く透き通るような肌に、腰まである長い黒髪をアップにするわけでもなく、紫色のリボンで一つにまとめていた。
他三人が談笑しつつも、時折、気を遣うように彼女に声を掛けているけれど、言葉を発する様子もなく、ただ、静かに頷いたりするだけで、本当に大人しそうな女性だった。
「何かお手伝いできれば嬉しいわ。それにお二人には聞きたいこともたくさんあるのよ。さ、お座りになって」
なぜ、エアリー様一人で座っているんだろうと思ってたけど、私達を座らせるためだったのか、と納得する。
と、その時だった。
「あら、いらしたわよ」
エアリー様が小さな声で私達に教えてくれた。
テラスへの扉が開き、中から現れたのは、濃い赤色のプリンセスラインのドレスに身を包み、赤色のウェーブのかかった腰まで長い髪をおろした、見るからに気の強そうな美女だった。
「ごきげんよう皆さま。楽しんでくれていらして?」
マーガレット嬢は面々に笑顔で挨拶をしたあと、私に向かって言った。
「お初にお目にかかります、マーガレット・ウッグスと申します。ユーニ様、と呼ばせていただいても?」
「もちろんです」
「私の事はマーガレットとお呼びください」
私に向けた彼女の表情は笑ってはいるけれど、目は全然笑っていなかった。
今までならここで帰りたくなってたかもしれない。
だけど、私だって精神的に強くなってる。
「大丈夫だからね」
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