【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ

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27 ミランダ様、告白する

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「一体、何をおっしゃっているのかわかりません。あなたは被害者なのでは?」

 バーベナ様に尋ねられ、ミランダ様は身体ごと大きく左右に振り否定する。

「違うんです! あの時、ジン様は私にダンスを誘ってくださっていたのです」
「え?」

 聞き返したのはジンさんだ。

「誘っていただいた事に嬉しくて、でも、恥ずかしくなってしまい、ジン様が頭を下げてくれている間に、私はとっさに隣にいた友人を自分の元いた場所に押しやったのです」
「そんな」

 ミランダ様の言葉を聞いて、ジンさんは言葉を無くした。
 それもそうだろうな。
 そのせいでジンさんは、お父さんから家を追い出されて、騎士団の宿舎に生活の場を移したんだから。

「じゃあ、あなたのせいなの?! あなたが違うと伝えてくれていたら」

 バーベナ様が怒りの表情で、私達の後ろにいるミランダ様に視線を合わせたまま近付いてくる。
 ミランダ様を庇うように、私とリアが前に立つと、ユウヤくんとユウマくんが、その前に立ち、バーベナ様の足を止めさせた。

「ユウヤ殿下、ユウマ殿下、通していただきたいのですが」
「悪いが通すわけにはいかない」

 ユウヤくんに言われ、バーベナ様は悔しそうに唇をかんだ。

「なあ」

 少しの静寂のあと、ユウマくんがバーベナ様に話しかけた。

「ユーニ嬢の事を平民だと馬鹿にしてたらしいけど本当か?」
 
 お茶会の時に言われた話をしてるんだと思う。
 実際は聞いていたんだけど、今、聞いたばかりのふりをしてバーベナ嬢にユウマくんが尋ねると、彼女は正直に頷いた。

「はい。間違いありません」
「それってオレにも喧嘩売ってんの?」
「とんでもありません! なぜ、ユウマ殿下に!」
「オレ、元平民だけど」

 ユウマくんが言うと、バーベナ様は慌てて自分の口をおさえた。
 ユウマくんはお母さんが平民で、お母さんが亡くなるまでは平民として暮らしていた。
 王族になってからの期間より平民の期間の方が今はまだ長いし、元平民なのは変わりないもんね。

「オレも認めない? なら、もっと大きな声出して言えよ」
「そ、そういう訳では・・・・・」

 容赦なく言われ、バーベナ様は押し黙る。
 ミランダ様への攻撃を止めさせてくれた上に、平民だから、という差別を公にはさせなくしてくれたので、正直、ちょっとホッとする。

「あと、ラスへの暴言だけど」
「え?」

 聞かれているとは思わなかったんだろう、バーベナ様は口を開いたユウヤくんに向かって聞き返した。

「聞こえちまったんだけど、ひどいことを言ってたよな。ジンはああ言ってるけど、ラスはどうなんだ? 謝罪は必要か?」
「いいえ。それほどまでに傷ついたとおっしゃるなら甘んじて受け止めます。謝罪もいりません。しかし、まだ死ぬわけにはいきませんから、お願いにこたえることはできませんけど」

 ラス様がしれっと答えると、ユウヤくんは軽く笑ってから、バーベナ様に向かって言った。

「本人がそう言っているから、謝れとは言わない。・・・・が、脅迫じみた話については黙っていられない」
「脅迫だなんて」
「そうだろ。社交界に噂を流すなんて発言、こっちに火の粉がかかる可能性もあるのに黙ってるわけにはいかない」
「火の粉・・・・・?」
「嘘の噂を流す人間は、相手が誰であろうとやるだろ? それが第一王子であったとしても」

 なぜかバーベナ様がびくりと身体を震わせた。
 私には背中しか見えないけど、たぶん、ユウヤくんが悪い顔をしたんだと思う。

「もし、イッシュバルド家についての根拠のない噂が広まろうもんなら、まずは君の家から潰す」
「殿下も脅迫してますよ」
「うるせぇ、オマエは黙ってろ」
「承知しました」

 ラス様が呆れた表情でユウヤくんに言ったけれど、相手にしてもらえなかったので、簡単に諦めた。
 まあ、ラス様も本当に止める気はなかったんだろうけど。

「君が馬鹿じゃなければ、どうしたらいいかわかるよな」
「はい・・・・・」

 バーベナ様は俯いてから頷いた。
 やはり、家を潰されるのは困るんだろうな。
 爵位を剥奪とかになるんだろうし、そうなったら、自分が馬鹿にしている平民に自分もなるんだもんね。

「じゃあ、話が済んだならお引取り願おうか。見送りは必要かな」
「いえ、結構です」

 バーベナ様は白い顔を青ざめさせて、私達とは別方向へ向かって小走りに走っていく。
 その背中が見えなくなってから、私はラス様の元へ走る。

「大丈夫でした?」
「ご覧の通りです」
「ひどいですよ、あんな言い方。自分がフラれただけなのに」

 リアも駆け寄ってきて、ラス様にぎゅうとしがみついて言った。

「私が曖昧にし続けたのもだめなんです。嫌なら嫌とはっきり言うべきでした」
「そうかもしれないですけど。あれは言っちゃいけません」

 そこまで言って、リアは動きを止めた。
 リアの視線の先にはジンさんがいて、彼の視線の先にはミランダ様がいた。

 そ、そうだった。
 ジンさんにしてみれば、ミランダ様の話は初耳だったんだ!!

 ジンさんは厳しい表情をして、ミランダ様の方へ歩き出す。
 ラス様が声をかけようとしたけど、私とリアはそれを止める。
 
「どうして」
「ジンさんはミランダ様に怒りに任せて暴力をふるったり、暴言を吐いたりするような人ですか?」
「それはありえません」
「なら、ちょっとだけ見守りましょ」

 私とリアの言葉に、ラス様は軽く息を吐くと、無言で頷いた。
 二人に静かに話をさせるためか、ユウヤくんとユウマくんも私達の横に来て、二人を見守る。

「レイブグル伯爵令嬢」
「は、はい。あの、申し訳ありませんでした」

 ジンさんにミランダ様は身体を震わせながら頭を下げる。

「僕は間違ってなかったんですね?」
「そうです。ジン様は何も悪くありません」
「帰るあなたを追いかけなかったんですから、何も悪くないなんて事はないですよ」
「私に勇気がなかったから、色々な人を傷付け、色々な人に迷惑をかけてしまいました。こんな私がジン様をお慕い続けるのはいけない事ですよね」

 ポロポロと大粒の涙を流しながら、ミランダ様が言うと、ジンさんが声を上げる。

「えっ?! やっぱり、さっきのは聞き間違いじゃなかったんですね。僕を嫌っていたわけではなく?」

 ジンさんは私達に背を向けているから、表情はさっきのユウヤくんみたいに想像するしかないけど、彼の場合はキョトンとしている感じがした。

「え? 兄さん、もしかして、それで?」

 ジンさんはこちらに振り返り、ラス様に説明を求めるような視線を投げた。

「ジン、その話は後でゆっくりしますから、彼女とちゃんと話をしなさい」
「あ、はい」

 ジンさんはラス様に促され、ミランダ様に向き直ると、俯いて泣きじゃくっているミランダ様に、上ポケットから出したハンカチを差し出す。

「あの、事情はわかりました。だから、一度、泣き止んでいただいてもよろしいでしょうか」
「ジン!」
「ジンさん、言い方!」
「ええ?! こういうの経験した事ないんですよ」

 ラス様と私に文句を言われ、ジンさんは頭をかいたあと、ミランダ様にもう一度話しかける。

「お話しても、良いですか?」
「………」

 ジンさんからハンカチを受け取ると、ミランダ様は無言だけれど、首を大きく縦に振った。

「結果的にいえば、僕はあなたに感謝しています」
「………え?」
「祖母や母が守ろうとしたイッシュバルド家の威信がなくなってしまった事に対しても、自分への落ち度しか感じた事はありませんでした」

 ジンさんは優しい声で話し始めた。
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