【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ

文字の大きさ
28 / 53

28 少しずつでも進みましょう

しおりを挟む
「もちろん変な噂をたてた、あなたのご両親に対しては何も感じていないといえば嘘になりますし、どちらかというと関わり合いになりたくない、というのも事実です」

 ジンさんの言葉にミランダ様の身体が一瞬だけ震えた。
 それに気付いているのかいないのかわからないけれど、ジンさんは言葉を続ける。

「先日、兄からあなたとの婚約についての話がありました。あなたのご両親とも話はついていて、その際に噂についての正式な謝罪もあったそうです。それでも、あなたのご両親を僕は許せませんでした。僕のミスではじまった事とはいえ、その時期は噂を終息させるために、兄が倒れるまで追い込んだんですから」

 ジンさんの話を聞いて、その事を知らなかった私とリアはラス様を睨む。
 
 なんで、そんな無茶するんですか!

「お二人と知り合ってない頃ですよ」

 ラス様はそう答えて、向こうの話を邪魔しないように、と人差し指を口に当てる。

「そんな事を思い出すと、あなたと結婚だなんてありえないと思いました」
「・・・・・・」

 ミランダ様の瞳からまた大粒の涙がこぼれる。
 
 どうしよう。
 思わず、私とリアが目を合わせた時だった。

「それは過去の話で」

 ジンさんはミランダ様の瞳に指を当てて、涙を拭うと続けた。

「今は兄があんな女性と婚約破棄になるきっかけを作ってくださった事に感謝していて、そして、こんな僕を慕っていてくれた事も嬉しく思います」

 きゃー!
 と叫び出したい気持ちをグッとこらえて、リアと私は手と手を取り合う。

「ただ、僕の事に興味を持ってくださっている方ならわかると思うのですが、僕はこういう類には縁がないもので、あなたの気持ちにこたえられるかもわからない所でして」

 ジンさんのへたれ発言を聞いてしまい、今度はがっくりしてしまう。
 ミランダ様はそんなジンさんをやはりわかっていたのか、涙をこぼしながらも笑顔を見せた。

「兄さん」
「俺に頼るな、って言ってるだろ」

 困ったように振り向くジンさんにラス様が冷たい声を出した。

 そっか。
 兄弟だから敬語もないんだ。

「本人がいる前でなんなんですが、僕は兄を本当に尊敬してるんです。僕なら元婚約者だとはいえ、あんな風に言われたら傷付きますよ」
「人を鬼のように」 

 ラス様の呟く声が聞こえ、私達四人は声に出さずに笑う。

「だから、僕は兄の意見に従おうと思います。今はまだ申し訳ないですが、あなたに対して、その、恋愛感情的なものがなくって」

 ジンさんがモゴモゴ言い始めると、ラス様は大きなため息を吐いた。

「ミランダ嬢、兄である私には弟に強制的にあなたとの婚約を認めさせる事はできます。でも、出来るならそれはしたくないんです」

 ラス様は二人に近付いていきながら、言葉を続ける。

「それをすると、弟が幸せになれない可能性がありますから」
「兄さん」
「出来ればお前には好きな人と恋愛して、好きな人と結婚してほしいと思ってる」

 ラス様はジンさんの肩に手を置いたあと、ミランダ様に向かって尋ねた。

「ですから、私の義理の妹になるのであれば、あなたがジンにとって、そういう存在になっていただかないと困るのですが?」
「わ、私」

 ミランダ様はジン様から借りているハンカチをぎゅうっと握りしめて、顔を上げると答えた。

「ユーニさんがユウヤ殿下とラス様におっしゃったみたいに、私はジン様を幸せにできるよう頑張ります」
「ひっ!」

 ミランダ様の大事なシーンなのに、私はついつい変な声を出してしまった。

「何やってんだ」

 ユウヤくんから後ろから抱きしめられ、口を手でおさえられる。
 だって、忘れていた事を思い出してしまったから!
 幸せにする、って、私、言ってた!

「恥ずかしい」
「あ、す、すみません! そうですよね! リア様以外は知らない話を!」

 ミランダ様はユウヤくん達が聞いてた事を知らないから、私の様子を見て慌てる。

「なんの話ですか?」
「さあ? ユーニさんが何かをおっしゃったんでしょうね」

 不思議そうにしているジンさんに、ラス様は知らないフリをして首を傾げる。

 それはそれで悲しい気持ちにもなってしまうんですが・・・・・。

「幸せにしてくれるんだよな。すげー楽しみ」

 ユウヤくんが私の耳元で囁くから、恥ずかしさが勝って、ついついお腹に肘鉄を食らわせた。

「あの、えと、ですから、私、ジン様が私と一緒にいて幸せと思って下さるよう努力いたします!」
「そうですか」

 ラス様は頷くと、ジンさんに向かって言う。

「とりあえず、友達から始めたらどうだ? お互いに気付くところも出てくるだろ。ミランダ嬢がお前に愛想をつかす可能性もあるし」
「そ、それは絶対にありえません!」

 ハンカチを握りしめたまま、ミランダ様がラス様に訴えると、彼は優しく笑って言った。

「不出来な弟ですが、よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ!!」

 ミランダ様が大きく頭を下げた。
 
「えっと、これは上手くいったのかな?」
「じゃないかな」

 リアに聞くと、笑顔で頷く。

「あ、えと、ハンカチは洗ってからお返ししますね」
「返さなくて結構ですよ。よろしければ差し上げます」
「え?!」
「いらなければ捨ててください」

 ミランダ様の言葉に対し、なんの悪気もなく言うジンさんにラス様が口を開こうとした時、ミランダ様が斜め上の発言をした。

「いえ、大切に保管させていただきます! いただけるのなら洗いません!」
「いや、洗ってください」

 ジンさんがミランダ様に真剣な表情で突っ込んだ。
 
 お互いに冗談が言えないタイプだし、真面目カップルで上手くいってくれるといいな。

「ジンさんとミランダ様が上手くいくと、ミランダ様はラス様の義理の妹になるのかあ。それなら、ユーニの妹にもなるの?」
「え?!」
「リアちゃん」
「そんなに睨まないでよ。ラス様にだったらいいんじゃなかったの?」

 リアがユウヤくんに抗議すると、

「それはそうなんだけどさ」

 納得していないような声で答えて、腕の力を強めてきた。

「独占欲が強いのも困りものね。一夫多妻は許されるのに一妻多夫は許されない世の中なのね」
「うっ」

 リアの言葉になぜか、ユウヤくんだけじゃなく、ユウマくんまでもダメージを受けていて笑ってしまう。

「ユーニ様が義理のお姉さまになるのでしたら、私はとっても嬉しいです。私、がんばります!」
「え? あ? いや」

 ユウヤくんに後ろから抱きしめられている状態で、ラス様の話をされても、申し訳ないことこの上ないのですが。

「ミランダ嬢、別にユーニさんが私の妻になるわけでは」
「妻!」

 なぜかラス様のその言葉にリアが反応した。
 ラス様は眉間にシワを寄せてリアに言う。

「なんですか」
「なんか、妻って言い方やらしくないですか」
「普通に言いますよ。リアさん、またどんな小説を読んだんですか」
「官能小説です」
「また余計な知識を身につけようとしてますね。どうせならユウマから実践で習っては?」
「ラス様!!!」

 リアよりもやはりラス様の方が頭の回転は上だった。
 リアが顔を赤くして叫ぶと、

「教えてやろうか?」

 ユウマくんが彼女を引き寄せて、顔を近付けて言った。

 うわー!
 け、結婚前なのにいいんですか?!

「あんたは黙ってて!」

 顔を赤くしたまま、リアはユウマくんの腕を振り払うと、ミランダ様とジンさんに向かって言った。

「せっかくだし、デートの約束でもしたらどうです?」
「え?!」

 ジンさんとミランダ様の声が重なる。

「そうですね。ジンの休みの日にでも行ってきてはどうです?」

 ラス様はミランダ様には笑顔で言うけれど、

「レディを困らせるな。早く誘え」
 
 ジンさんには冷たく言い放つ。

「兄さんも一緒に行って下さいよ」
「保護者同伴のデートするつもりか」
「あ、あのラス様! 私は気になりませんよ!」
「いや、ミランダ嬢、そういう問題ではなく」

 困るラス様に、リアがぽんと手を打つと、私を見て言う。

「ユーニも行って、ダブルデートにしたら?」
「?!」

 私とラス様は同時に声にならない声を上げた。

「オレも行く」

 ユウヤくんが私の肩に顎を置いて言うので、ラス様はため息を吐いてから口を開く。

「では、ユーニさんとユウヤが付き添いに」
「兄さんが来てくださいよ!」
「ラスも来ればいいだろ。命令な」
「・・・・・わかりました」

 ラス様は恨めしげにユウヤくんを見たあと、ため息を吐いてから首を縦に振った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。

ねーさん
恋愛
 あ、私、悪役令嬢だ。  クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。  気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
恋愛
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

【完結】アッシュフォード男爵夫人-愛されなかった令嬢は妹の代わりに辺境へ嫁ぐ-

七瀬菜々
恋愛
 ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。   両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。  もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。  ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。  ---愛されていないわけじゃない。  アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。  しかし、その願いが届くことはなかった。  アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。  かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。  アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。 ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。  アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。  結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。  望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………? ※全部で3部です。話の進みはゆっくりとしていますが、最後までお付き合いくださると嬉しいです。    ※色々と、設定はふわっとしてますのでお気をつけください。 ※作者はザマァを描くのが苦手なので、ザマァ要素は薄いです。  

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

完 独身貴族を謳歌したい男爵令嬢は、女嫌い公爵さまと結婚する。

水鳥楓椛
恋愛
 男爵令嬢オードリー・アイリーンはある日父が負った借金により、大好きな宝石だけでは食べていけなくなってしまった。そんな時、オードリーの前に現れたのは女嫌いと有名な公爵エドワード・アーデルハイトだった。愛する家族を借金苦から逃すため、オードリーは悪魔に嫁ぐ。結婚の先に待ち受けるのは不幸か幸せか。少なくとも、オードリーは自己中心的なエドワードが大嫌いだった………。  イラストは友人のしーなさんに描いていただきました!!

駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど
恋愛
『私は恋に生きるから、探さないでそっとしておいてほしい』 という置き手紙を残して、駆け落ちした姉のクラリス。 それにより、主人公のレイチェルは姉の婚約者────“悪辣公爵”と呼ばれるヘレスと結婚することに。 そうして、始まった新婚生活はやはり前途多難で……。 まず、夫が会いに来ない。 次に、使用人が仕事をしてくれない。 なので、レイチェル自ら家事などをしないといけず……とても大変。 でも────自由気ままに一人で過ごせる生活は、案外悪くなく……? そんな時、夫が現れて使用人達の職務放棄を知る。 すると、まさかの大激怒!? あっという間に使用人達を懲らしめ、それからはレイチェルとの時間も持つように。 ────もっと残忍で冷酷な方かと思ったけど、結構優しいわね。 と夫を見直すようになった頃、姉が帰ってきて……? 善意の押し付けとでも言うべきか、「あんな男とは、離婚しなさい!」と迫ってきた。 ────いやいや!こっちは幸せに暮らしているので、放っておいてください! ◆小説家になろう様でも、公開中◆

処理中です...