【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ

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36 噂が事実になりました

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 慌てて五人で向かった先は、以前に集まったことのある会議室で、すでに陛下と知らないおじいさんが一人座っていて、私達が入ってくるのを確認すると、扉の前で待っていたセバスさんが外に出て、扉を閉めた。
 どうやら、今日は今いるメンバーだけらしい。
 知らないおじいさんは、椅子に座っているから詳しくはわからないけれど、服装は白いシャツの上に黒色のジャケットを着ていて、別に珍しい格好でもないから、役職的なものはさっぱりわからない。
 刈り上げられた後ろの髪もすべて銀髪で見た所、優しそうな風貌。
 けれど、眉間に深くシワが刻まれているから、風貌よりも難しい人なのかもしれない。
 私とリア、ラス様が陛下に挨拶をすると、席に着くように促される。
 ラス様はおじいさんにも軽く頭を下げたから、ラス様よりも位の高い人なんだろう。
 私達がそれぞれ席に着くと、陛下がおじいさんの方を見て頷く。

「まずは話の前に、ユーニ様、リア様には初めてお目にかかります。ウルグレッズと申します」
「うちの宰相だ」

 隣りに座るユウヤくんが耳打ちしてくれた。
 宰相は説明しろと言われると難しいけど、たぶん、ラス様や他の人達に指示したり、とりまとめたりするような、とりあえず偉い人なのはわかるので、私もリアも立ち上がって挨拶を返した。

「では早速ですが、こちらを見ていただけますでしょうか」

 差し出されたのは3通の封筒。
 わざわざ立ち上がって、2通はリアに、1通は私に手渡してくれた。
 私に渡された封筒は、どこの貴族だったか、見たことのある印章が押された、なんの飾りもない白い封筒だった。
 促されて中身を出し、書かれてある短い文章を読んでギョッとした。

「こ、これは」
「どうした?」

 ユウヤくんに聞かれ、ウルグレッズ宰相を見ると、無言だけれど頷いてくれたので、ユウヤくんに便箋を渡す。

「マヌグリラの第二王子から求婚?! 何考えてんだ!」
「リアは?!」

 私が聞くと、向かいに座るリアは彼女の隣りに座るユウマくんに便箋を渡しながら答える。

「私はマヌグリラの第一王子殿下と、サナトラの王太子殿下から。サナトラの王太子殿下とは面識あるけど、マヌグリラの第一王子殿下って面識ないんだけどな」

 リアの疑問に、ラス様が陛下に発言の許可をとってから答える。

「アスラン王太子殿下を狙っていた二人組のうちの一人です」

 しまった。
 陛下がいるのに、普通に話してしまった。
 こういう所が駄目なんだろうなあ。
 
 私とリアは視線を交わしたあと、陛下の方に同時に目を向ける。

「許可はいらん。勝手に話せばいい」
「「ありがとうございます」」

 リアと声を合わせて礼を言ったあと、リアがユウマくんの方を見て、ぎょっとした顔をする。
 なぜかというと、

「ちょっと、手紙を破らないでよ!」
「いらんだろ、こんな手紙」
「いやいや、ちょっと待ってよ」

 ユウマくんがびりびり破り捨てるのを慌てて、リアが彼の手をつかんで止める。
 
 これ、王子様だから許されるんだろうな。

「ユウマ殿下、サナトラの王太子殿下からのお手紙は破ってはいけなかったのではないでしょうか」

 ウルグレッズ宰相が笑ってはいるけれど、圧をかけるような口調でたしなめると、ユウマくんは肩をおとして、残りの手紙をリアに返しながら謝る。

「悪かったよ」
「え、リア、もしかして」
「前に言われてたでしょ? で、当たり障りのない人かなと思って候補にしてた」
「他国の王太子だよ?!」
「これは?」

 リアがユウマくんを指差すので、

「これって言うな」

 彼はリアの手をつかんで文句を言う。

「そっか。王子様か」
「今、ユーニちゃん、王子様っぽくないと思ったろ」
「い、いいえ!」

 慌てて首を横に振るけど、実は思ってた。
 だって、王子様が怒りに任せて他国の王家からの手紙をびりびり破ったりしないでしょ。

「噂が他国の王家にまで回っている以上、このままなかった事にはできません」

 緩んでしまった空気を一変するような厳しい声で、宰相は続ける。

「アレン王子の願いを陛下の決定で可決します。そして、噂が流れるきっかけを作った責任をイッシュバルド公爵にとっていただきます」

 その言葉を聞いて、私だけじゃなく、リア達も一斉にラス様の方を見た。
 ラス様は大きなため息を吐いてから、宰相の方は見ずに尋ねた。

「爵位の剥奪ですか」
「そう考えてたんだが、一つ案がある」
「案、ですか」
「もう一人相手が必要となった場合、リア様はサナトラの王太子殿下、ユーニ様に関しての候補は君だと聞いてる」
「・・・・・・」

 ラス様は下げていた顔を上げて、今度はちゃんと宰相の顔を見た。

「それを陛下の命令とし、その命令に従うことで、褒美として君に公爵の地位を譲るようにさせる」
「周りは納得するでしょうか」
「納得もくそもない。俺の命令だ。あと、夫を二人だなんてこんな馬鹿げた事は民には知らせん。貴族間だけの話にする」

 陛下がふんぞり返って答える。

 う、やっぱり、ユウマくんは王子さまなんだな。
 態度がそっくり。

「命の危険は伴うが、どうするかね」

 宰相の命の危険、という言葉に、思わずユウヤくんの方を見る。

「ラスは簡単に死なねぇから」
「でも」

 ユウヤくんは子供に言い聞かせるように優しく言ってくれたけど、やっぱり不安になって声を出そうとすると、ラス様がそれを遮った。

「誰がなっても命の危険にさらされるのは一緒です。それなら私のように命をかけれる理由があった人間の方がいい」
「でも、ラス様の!」
「私以外の人間なら死んでもいいというお考えですか?」
「そんな訳ないです!!」
「では、私しかいません」

 ラス様が厳しい口調で言った。
 これってもしかして、私が傷つかないようにしてくれてるの?
 今までだったら、私がラス様を選んだ、になってたけど、陛下が命令して、ラス様が望んだ、という風に?
 でも、いきなりどうして?
 昨日のラス様の事があったから?
 もしかして。

「そんな顔すんな」

 ユウヤくんは座っていた椅子をこちらに近付けると、私の肩を抱き寄せて、頭に自分の頬をのせて続ける。

「オマエは何も悪くねぇから」

 その言葉でわかった。
 ユウヤくんか。
 ユウヤくんがこういう風に持っていってくれたのか・・・・・。

「私の身内が、ご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした」

 ラス様が立ち上がり、私達全員に頭を下げた。
 その姿を見て、ユウヤくんが何か言いたげに顔を上げる。
 私は私で、ユウヤくんからはなれてラス様を見た。
 
 なんで、ラス様が謝るの。
 悪いのは、次男なのに。

「お前は悪くない。むしろ被害者だろ」

 陛下はさらっとした口調で答えると、宰相に向かって言葉を続ける。

「サナトラの王太子には返事を待ってもらうように返してくれ。それから、マヌグリラに関しては断りの手紙を」
「畏まりました」
「ユーニ嬢とリア嬢には悪いが、このようにさせてもらう」
「「承知いたしました」」

 陛下の言葉に口答えするわけにはいかないので、私もリアも決められた言葉を返す。
 私達の返事を確認したあと、陛下は立ち上がったかと思うと、さっさと部屋を出ていってしまった。
 出る前にラス様の肩を軽くたたいてはいったけれど。
 宰相も同じようにラス様をねぎらってから出ていく。
 その姿を見送ると、部屋の中は、いつもの五人だけになった。

「あーーーーーー」

 突然、ラス様が机に突っ伏して叫ぶ。
 こんな姿を見たことがなかっただけに、私とリアは顔を見合わせた。

「とっとと追い出しときゃ良かった」
「まあいいじゃねぇか。これで親父さん殺さなくて済むし」
「何を物騒な事言ってんの!」
「爵位継ぐには父が邪魔でしたからね」

 たしなめるリアにラス様は突っ伏したまま、ユウマくんの言葉を肯定するような言葉を放つ。

「あのラス」
「わかってますよ。あなたが入れ知恵しましたね」

 ユウヤくんがおずおずと口を開くと、がばりとラス様は顔を上げて恨めしそうな視線を送って続ける。

「でも、悪くない案です」
「だろ? 一応、父上と話はしたんだが、公爵の処分とオマエへの引き継ぎに関して、アレンが意見を変えたとしても有効にしてる。ただ、オマエが手っ取り早く公爵になるには、アレンが意見を変えずに、なおかつ、オレとユーニが結婚したあとになる」
「ユーニさんのお飾りの夫になるご褒美が爵位の引き継ぎですか」

 ラス様は身を起こし、テーブルに頬杖をついて言った。

「ユウヤくん、ラス様」

 真剣な表情で言ったからか、リアとユウマくんも無言になって私を見る。

「私、頑張るから! 二人に守ってもらわなくても大丈夫なように強くなるから!」

 せわしないけど、二人の顔を交互に見ながら言うと、ユウマくんが口を挟んできた。

「強くなんなくてもいいだろ。だって、二人を幸せにするんだろ?」
「・・・・・・!!」
 
 にやりと笑って言ったユウマくんの言葉に、私はあの日のことを思い出して、声にならない声を上げた。
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