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21 効果のない脅し ③ (シルフィーナSide)
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騎士隊に捕まったシルフィーナだったが、ニーカ侯爵家に連絡が行き、これ以上、家名を汚されたくないロヴァンスが保釈金を払い、彼女は釈放された。
「最悪な目にあったわ」
ニーカ侯爵邸に向かう馬車の中で、シルフィーナが不機嫌そうに言った。ロヴァンスはそんな彼女を睨みつけながら尋ねる。
「君はどうかしているのか?」
「どうかしているとはどういうことです?」
「公爵家の前で暴れるなんて、普通の人間のやることではない!」
「私はファリアーナの姉です! それなのに中に入れてもらえないんですよ!? 失礼なのは向こうです! こうなったら、アシュ様やファリアーナが酷い人物だと公にするしかないと思うのです。ロヴァンス様はどう思われますか?」
「勝手にしろ」
「ありがとうございます!」
この時のシルフィーナは『自由に動けば良い』という意味だと受け取った。だが、実際は違っていた。
ニーカ侯爵家に戻ったシルフィーナは友人たちを呼び寄せ、嬉々として、ファリアーナの悪口やアシュの秘密について話した。
だが、彼女の話を信じる者はもういなかった。
「シルフィーナ様は私たちを騙していたんですよね?」
「え?」
予想外の友人の反応にシルフィーナは驚きを隠せなかった。
「ニーカ侯爵からあなたは嘘つきだと聞きましたし、披露パーティーの件でもレイン公爵家から迷惑料を請求されたんです!」
「そうです! うちは請求された迷惑料だけで破産するところでした! 誠心誠意謝って減額してもらえましたが、あんなことになったのも、あなたがつかなくてもいい嘘をついたからです!」
ファリアーナたちの披露パーティーの時にシルフィーナの味方してくれた友人たちは、レイン公爵家を敵に回してしまい、今は他の貴族からの信用を取り戻すのに必死の状態だった。
シルフィーナがたとえ真実を伝えたとしても、あの一件のせいで、友人たちは彼女を信用していないため聞く耳を持たなかった。
「私の言うことを信じてくれないのなら、どうしてここまで来たのよ!?」
「あなたが侯爵夫人だからです」
一人がそう言って立ち上がると、もう一人も立ち上がる。
「レイン公爵家にこれ以上睨まれたくありませんので失礼させていただきます。もう、連絡をしてこないでください」
「シルフィーナ様、今までありがとうございました」
二人はシルフィーナの返事も待たずに、応接室から出ていってしまった。
「な……、なんなの! どうして私がこんな惨めな思いをしないといけないの!? 全部、ファリアーナのせいだわ!」
こんなことになったのはファリアーナのせいではない。ただ、彼女は自分は悪くないと思い込んでいる。そのため、何でもかんでもファリアーナのせいにしてしまうのだ。
「このまま、ファリアーナの思い通りにさせてやるもんですか!」
応接室のソファに座ったまま、シルフィーナが叫んでいると、ロヴァンスが入ってきた。シルフィーナは立ち上がって、彼に怒りをぶつける。
「ロヴァンス様! どうして私が嘘をついているという話を友人たちにしたのですか!」
「これ以上、馬鹿なことをされては困るからだ」
ロヴァンスは冷たく言い放つと、シルフィーナの顔に書類を叩きつける。
「もう我慢できない。君とは離婚だ」
「……そんな! 聞いてください、ロヴァンス様! アシュ様には弱点があるんです! それを世間にバラされたくなければと脅せば」
「公爵家を敵に回す妻などいらない!」
ロヴァンスは叫び、シルフィーナの手にペンを握らせる。
「今すぐに書いて出ていくんだ。実家に送り届けるくらいはしてやろう」
「聞いてください、ロヴァンス様! 今度は本当のことなんです!」
「うるさい! 嘘つきの言うことなど信じられるか。早く書け! 書かないと痛い目にあわせるぞ!」
「……嘘じゃないのに、本当のことを言おうとしているだけなのに……」
ポロポロと涙を流しながら、シルフィーナは震える手で、離婚を認める書類にサインをせざるを得なかった。
嘘をつき続けたシルフィーナの言葉を信じる人間は、実家にいる家族しかいなくなっていた。
「最悪な目にあったわ」
ニーカ侯爵邸に向かう馬車の中で、シルフィーナが不機嫌そうに言った。ロヴァンスはそんな彼女を睨みつけながら尋ねる。
「君はどうかしているのか?」
「どうかしているとはどういうことです?」
「公爵家の前で暴れるなんて、普通の人間のやることではない!」
「私はファリアーナの姉です! それなのに中に入れてもらえないんですよ!? 失礼なのは向こうです! こうなったら、アシュ様やファリアーナが酷い人物だと公にするしかないと思うのです。ロヴァンス様はどう思われますか?」
「勝手にしろ」
「ありがとうございます!」
この時のシルフィーナは『自由に動けば良い』という意味だと受け取った。だが、実際は違っていた。
ニーカ侯爵家に戻ったシルフィーナは友人たちを呼び寄せ、嬉々として、ファリアーナの悪口やアシュの秘密について話した。
だが、彼女の話を信じる者はもういなかった。
「シルフィーナ様は私たちを騙していたんですよね?」
「え?」
予想外の友人の反応にシルフィーナは驚きを隠せなかった。
「ニーカ侯爵からあなたは嘘つきだと聞きましたし、披露パーティーの件でもレイン公爵家から迷惑料を請求されたんです!」
「そうです! うちは請求された迷惑料だけで破産するところでした! 誠心誠意謝って減額してもらえましたが、あんなことになったのも、あなたがつかなくてもいい嘘をついたからです!」
ファリアーナたちの披露パーティーの時にシルフィーナの味方してくれた友人たちは、レイン公爵家を敵に回してしまい、今は他の貴族からの信用を取り戻すのに必死の状態だった。
シルフィーナがたとえ真実を伝えたとしても、あの一件のせいで、友人たちは彼女を信用していないため聞く耳を持たなかった。
「私の言うことを信じてくれないのなら、どうしてここまで来たのよ!?」
「あなたが侯爵夫人だからです」
一人がそう言って立ち上がると、もう一人も立ち上がる。
「レイン公爵家にこれ以上睨まれたくありませんので失礼させていただきます。もう、連絡をしてこないでください」
「シルフィーナ様、今までありがとうございました」
二人はシルフィーナの返事も待たずに、応接室から出ていってしまった。
「な……、なんなの! どうして私がこんな惨めな思いをしないといけないの!? 全部、ファリアーナのせいだわ!」
こんなことになったのはファリアーナのせいではない。ただ、彼女は自分は悪くないと思い込んでいる。そのため、何でもかんでもファリアーナのせいにしてしまうのだ。
「このまま、ファリアーナの思い通りにさせてやるもんですか!」
応接室のソファに座ったまま、シルフィーナが叫んでいると、ロヴァンスが入ってきた。シルフィーナは立ち上がって、彼に怒りをぶつける。
「ロヴァンス様! どうして私が嘘をついているという話を友人たちにしたのですか!」
「これ以上、馬鹿なことをされては困るからだ」
ロヴァンスは冷たく言い放つと、シルフィーナの顔に書類を叩きつける。
「もう我慢できない。君とは離婚だ」
「……そんな! 聞いてください、ロヴァンス様! アシュ様には弱点があるんです! それを世間にバラされたくなければと脅せば」
「公爵家を敵に回す妻などいらない!」
ロヴァンスは叫び、シルフィーナの手にペンを握らせる。
「今すぐに書いて出ていくんだ。実家に送り届けるくらいはしてやろう」
「聞いてください、ロヴァンス様! 今度は本当のことなんです!」
「うるさい! 嘘つきの言うことなど信じられるか。早く書け! 書かないと痛い目にあわせるぞ!」
「……嘘じゃないのに、本当のことを言おうとしているだけなのに……」
ポロポロと涙を流しながら、シルフィーナは震える手で、離婚を認める書類にサインをせざるを得なかった。
嘘をつき続けたシルフィーナの言葉を信じる人間は、実家にいる家族しかいなくなっていた。
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