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5 傘の持ち主 ※視点変更あり
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「サプライズも失敗しましたので、本日は失礼させていただきます」
「せっかく来たのに、もう帰るのか? 忘れ物はない?」
厄介者が帰ると聞いて安心したのか、オズック様が笑顔で尋ねてきた。
彼の言う忘れ物というのは、わたしから彼に贈るプレゼントのことだと思う。
いつも、訪ねるたびに何かしら持ってきているから、当たり前のようにもらえると思っているみたい。
本当は馬車の中にあるけれど、もう彼にプレゼントを贈る必要もないと思った。
だから、笑顔で嘘をつく。
「ありません」
「えっ?」
「アルミラ、あなた、私宛の手紙にはお土産を持ってきてくれるって書いていたじゃない」
オズック様の間抜けな声のあとに、ファニが焦った顔で言った。
彼女からは王都で評判になっている焼き菓子を買ってきてほしいと言われていたから、買っては来ている。
でも、やっぱり渡す気にはなれない。
おとなげない気持ちが勝ちそうになる。
駄目よ。
今のわたしは素直で純粋でいなければならないんだから。
「忘れていたわ。ファニの分は買ってきていたの。オズック様の分は買えなかったから、現金を渡そうと思っていたのよ」
「ありがとう、アルミラ! 楽しみにしていたのよ!」
「そんな、現金だなんて悪いよ」
ファニは目を輝かせ、オズック様は嬉しそうな顔になった。
意地が悪いのかもしれないけれど、オズック様に頭を下げる。
「そうですわよね。現金は失礼ですわよね。だって、こんなに素敵な家が建てられるんですもの。もう、これからは現金を渡すだなんて馬鹿なことは申しませんわ」
「あ、いや、建てるのに精いっぱいだったんだ。今月の家賃を支払うのも大変でさ。だから、現金をもらえると」
「この家は分割払いで購入なさったのですか? それならどうして、自分が毎月支払える額で設定されなかったのでしょうか」
問われたオズック様は顔を真っ赤にした。
バカにされていると感じたみたい。
でも、実際にそうだもの。
ファニにはお菓子を渡したけれど、オズック様には何も渡さずに、わたしは帰途についた。
*****
無事に傘を持ち帰ることができたので、戦利品が一つでもあって良かった。
これが物的証拠になってくれると助かるわ。
もし、これだけで攻められるなら、お父様からオズック様のご両親に婚約破棄の連絡を入れてもらいましょう。
そんなことを思っていると、向かい側に座っているサーラの様子がおかしいことに気づいた。
彼女の表情を見て、ただでさえ嫌な気持ちが増していく。
サーラは彼女の横に置いてある、オズック様の家から持ち帰った傘を、まるで親の仇でも見るような目で見つめていた。
さっきの様子もおかしいとは思ったけれど、もしかして、サーラもオズック様と繋がっているのかしら。
疑わしい間は、彼女に本音を話すことはできないわね。
一応、意見がさっきとは変わったのかどうか確認してみることにした。
「ねえ、サーラ」
「……なんでございましょうか」
サーラは難しい表情を一変させ、笑顔を作ってわたしを見た。
「あなたから見て、オズック様は本当に浮気していないと思う? 正直な気持ちを教えてちょうだい」
「そうですね。最初は疑っておりましたが、浮気をされているのではないかと、今となっては思います」
「最初はどうして、そう思わなかったの?」
「オズック様はお嬢様のことを本当に愛していらっしゃると思っていたからです」
「あなたからはそう見えていたの?」
サーラは2年ほど前にわたしの侍女になってくれた。
その時はすでにオズック様と遠距離恋愛になっていたわたしを応援してくれる優しい侍女だ、と思っていた。
サーラを連れて、オズック様の所へ行ったことは何度かある。
わたしが席を外している間に、オズック様が声をかけたのかもしれない。
サーラは女子校に通っていたため、男性とあまり話をしたことがないと言っていたし、彼にころりと騙されてしまった可能性はある。
「はい。私は本当にオズック様がお嬢様を愛していると思っておりました。まさか、他に女性が二人もいるだなんて夢にも思いませんでした」
傘を見つめるサーラの目は、さっきも思ったけれど憎悪に満ちている気がした。
傘の持ち主に対してなのか、オズック様に対してなのかはわからない。
この傘の持ち主がサーラであれば怪しい人物はいなくなり、サーラとファニがオズック様の浮気相手だとわかって、少しはスッキリしていたかもしれない。
でも、この様子だと傘の持ち主はサーラではない。
二人の女性の影以外に、サーラもオズック様の浮気相手の一人として考えたほうが良いのかもしれない。
そうなると、わたし以外に3人の女性と付き合っていることになる。
ため息をつきたくなるのをこらえて、サーラに話しかける。
「そうね。わたしも驚いたわ。だけど、わたしはオズック様を信じることにするわ」
「そうですね。オズック様なら幸せにしてくださると思います」
サーラはどこか上の空の状態で言った。
その日の晩、家に帰り着くと、早速、執務室にいるというお父様に謝罪をしに向かった。
執務室に入れてもらい、今日のことを話して今までのことを謝ると、お父様も謝ってきた。
「実はお前からオズックの所へ行くと聞いて、改めてオズックを調べ、彼が浮気していることを知っていた。傷つけるような真似をしてすまなかった」
「いいえ。自分の目で見るまでは信じなかったでしょう。現実を見せていただき、本当にありがとうございました」
「お礼を言われることではないが、お前が目を覚ましてくれて良かったよ」
「今までは盲目的にオズック様を信じていましたから、言葉だけでは信じなかったと思います。サプライズなんて普段しないことをしたことが功を奏しました」
苦笑すると、お父様が聞いてくる。
「アルミラはどうするつもりなんだ?」
「物的証拠を集めて婚約を破棄するつもりです」
「それについては反対はしない。だけど、かなり難しいと思う」
「……どういうことでしょうか」
「彼の両親は前々から浮気に気づいていて何も言わない。それは、その二人も浮気しているからだよ。そして、彼の祖母のセルロッテ様はオズックを溺愛していて、彼の言うことしか信じない」
名前を聞いて、わたしはこの戦いが長引く可能性があると思った。
セルロッテ様というのはヨレドロール公爵夫人で社交場でも一目置かれている。
そんな方なら、すぐに証拠をもみ消してしまうでしょう。
セルロッテ様を納得させるには、疑う余地もないくらいの証拠を用意しなければならない。
「お父様、わたしはそれでも戦います」
「そうか。なら、セルロッテ様でさえも揉み消せないように証拠を集めよう」
「ありがとうございます、お父様」
婚約者であり、ずっと大好きだった人や親友だと思っていた人に裏切られた最悪な日だった。
サーラだって怪しい。
でも、これは気持ちの持ちようだわ。
裏切られていたことを知ることができた、最良の1日だと考えることにした。
◇◆◇◆◇
「ちょっと、オズックぅ! あたしのお気に入りの傘がないんだけど! もしかして他の女にあげちゃった?」
「どうしてもほしいってうるさかったんだよ! そんなにお気に入りなら、ここに置いていくんじゃねぇよ」
「もう! 近いうちに取り返して来てよね! あれ、くれたの、あたしたちの界隈では敵に回さないほうがいいって有名な奴なんだからね!」
「そんな大事な傘を置いてくんじゃねぇよ!」
「だってぇ、オズックが他の女と遊んでるのはわかってるし、ちょっと匂わせちゃおって思ったのよ」
赤色の髪をハーフツインにした、薄着の若い女はオズックにしなだれかかって言う。
「傘、返してもらってね? 返してもらえないんなら、あんたに手ぇ出されたって言っちゃうから」
「おい、イボンヌ、勘弁してくれよ」
オズックは笑みを浮かべたつもりだったが、恐怖で口元が引きつっていた。
それを見たイボンヌと呼ばれた女は笑う。
「あんたが悪いのよ、オズック。あたしを本気にさせるんだもの。ねえ、金蔓の侯爵令嬢の婚約者とは別れなくていいから、他の女とは早く縁を切ってよね?」
そう言って、イボンヌはオズックをベッドに押し倒した。
「せっかく来たのに、もう帰るのか? 忘れ物はない?」
厄介者が帰ると聞いて安心したのか、オズック様が笑顔で尋ねてきた。
彼の言う忘れ物というのは、わたしから彼に贈るプレゼントのことだと思う。
いつも、訪ねるたびに何かしら持ってきているから、当たり前のようにもらえると思っているみたい。
本当は馬車の中にあるけれど、もう彼にプレゼントを贈る必要もないと思った。
だから、笑顔で嘘をつく。
「ありません」
「えっ?」
「アルミラ、あなた、私宛の手紙にはお土産を持ってきてくれるって書いていたじゃない」
オズック様の間抜けな声のあとに、ファニが焦った顔で言った。
彼女からは王都で評判になっている焼き菓子を買ってきてほしいと言われていたから、買っては来ている。
でも、やっぱり渡す気にはなれない。
おとなげない気持ちが勝ちそうになる。
駄目よ。
今のわたしは素直で純粋でいなければならないんだから。
「忘れていたわ。ファニの分は買ってきていたの。オズック様の分は買えなかったから、現金を渡そうと思っていたのよ」
「ありがとう、アルミラ! 楽しみにしていたのよ!」
「そんな、現金だなんて悪いよ」
ファニは目を輝かせ、オズック様は嬉しそうな顔になった。
意地が悪いのかもしれないけれど、オズック様に頭を下げる。
「そうですわよね。現金は失礼ですわよね。だって、こんなに素敵な家が建てられるんですもの。もう、これからは現金を渡すだなんて馬鹿なことは申しませんわ」
「あ、いや、建てるのに精いっぱいだったんだ。今月の家賃を支払うのも大変でさ。だから、現金をもらえると」
「この家は分割払いで購入なさったのですか? それならどうして、自分が毎月支払える額で設定されなかったのでしょうか」
問われたオズック様は顔を真っ赤にした。
バカにされていると感じたみたい。
でも、実際にそうだもの。
ファニにはお菓子を渡したけれど、オズック様には何も渡さずに、わたしは帰途についた。
*****
無事に傘を持ち帰ることができたので、戦利品が一つでもあって良かった。
これが物的証拠になってくれると助かるわ。
もし、これだけで攻められるなら、お父様からオズック様のご両親に婚約破棄の連絡を入れてもらいましょう。
そんなことを思っていると、向かい側に座っているサーラの様子がおかしいことに気づいた。
彼女の表情を見て、ただでさえ嫌な気持ちが増していく。
サーラは彼女の横に置いてある、オズック様の家から持ち帰った傘を、まるで親の仇でも見るような目で見つめていた。
さっきの様子もおかしいとは思ったけれど、もしかして、サーラもオズック様と繋がっているのかしら。
疑わしい間は、彼女に本音を話すことはできないわね。
一応、意見がさっきとは変わったのかどうか確認してみることにした。
「ねえ、サーラ」
「……なんでございましょうか」
サーラは難しい表情を一変させ、笑顔を作ってわたしを見た。
「あなたから見て、オズック様は本当に浮気していないと思う? 正直な気持ちを教えてちょうだい」
「そうですね。最初は疑っておりましたが、浮気をされているのではないかと、今となっては思います」
「最初はどうして、そう思わなかったの?」
「オズック様はお嬢様のことを本当に愛していらっしゃると思っていたからです」
「あなたからはそう見えていたの?」
サーラは2年ほど前にわたしの侍女になってくれた。
その時はすでにオズック様と遠距離恋愛になっていたわたしを応援してくれる優しい侍女だ、と思っていた。
サーラを連れて、オズック様の所へ行ったことは何度かある。
わたしが席を外している間に、オズック様が声をかけたのかもしれない。
サーラは女子校に通っていたため、男性とあまり話をしたことがないと言っていたし、彼にころりと騙されてしまった可能性はある。
「はい。私は本当にオズック様がお嬢様を愛していると思っておりました。まさか、他に女性が二人もいるだなんて夢にも思いませんでした」
傘を見つめるサーラの目は、さっきも思ったけれど憎悪に満ちている気がした。
傘の持ち主に対してなのか、オズック様に対してなのかはわからない。
この傘の持ち主がサーラであれば怪しい人物はいなくなり、サーラとファニがオズック様の浮気相手だとわかって、少しはスッキリしていたかもしれない。
でも、この様子だと傘の持ち主はサーラではない。
二人の女性の影以外に、サーラもオズック様の浮気相手の一人として考えたほうが良いのかもしれない。
そうなると、わたし以外に3人の女性と付き合っていることになる。
ため息をつきたくなるのをこらえて、サーラに話しかける。
「そうね。わたしも驚いたわ。だけど、わたしはオズック様を信じることにするわ」
「そうですね。オズック様なら幸せにしてくださると思います」
サーラはどこか上の空の状態で言った。
その日の晩、家に帰り着くと、早速、執務室にいるというお父様に謝罪をしに向かった。
執務室に入れてもらい、今日のことを話して今までのことを謝ると、お父様も謝ってきた。
「実はお前からオズックの所へ行くと聞いて、改めてオズックを調べ、彼が浮気していることを知っていた。傷つけるような真似をしてすまなかった」
「いいえ。自分の目で見るまでは信じなかったでしょう。現実を見せていただき、本当にありがとうございました」
「お礼を言われることではないが、お前が目を覚ましてくれて良かったよ」
「今までは盲目的にオズック様を信じていましたから、言葉だけでは信じなかったと思います。サプライズなんて普段しないことをしたことが功を奏しました」
苦笑すると、お父様が聞いてくる。
「アルミラはどうするつもりなんだ?」
「物的証拠を集めて婚約を破棄するつもりです」
「それについては反対はしない。だけど、かなり難しいと思う」
「……どういうことでしょうか」
「彼の両親は前々から浮気に気づいていて何も言わない。それは、その二人も浮気しているからだよ。そして、彼の祖母のセルロッテ様はオズックを溺愛していて、彼の言うことしか信じない」
名前を聞いて、わたしはこの戦いが長引く可能性があると思った。
セルロッテ様というのはヨレドロール公爵夫人で社交場でも一目置かれている。
そんな方なら、すぐに証拠をもみ消してしまうでしょう。
セルロッテ様を納得させるには、疑う余地もないくらいの証拠を用意しなければならない。
「お父様、わたしはそれでも戦います」
「そうか。なら、セルロッテ様でさえも揉み消せないように証拠を集めよう」
「ありがとうございます、お父様」
婚約者であり、ずっと大好きだった人や親友だと思っていた人に裏切られた最悪な日だった。
サーラだって怪しい。
でも、これは気持ちの持ちようだわ。
裏切られていたことを知ることができた、最良の1日だと考えることにした。
◇◆◇◆◇
「ちょっと、オズックぅ! あたしのお気に入りの傘がないんだけど! もしかして他の女にあげちゃった?」
「どうしてもほしいってうるさかったんだよ! そんなにお気に入りなら、ここに置いていくんじゃねぇよ」
「もう! 近いうちに取り返して来てよね! あれ、くれたの、あたしたちの界隈では敵に回さないほうがいいって有名な奴なんだからね!」
「そんな大事な傘を置いてくんじゃねぇよ!」
「だってぇ、オズックが他の女と遊んでるのはわかってるし、ちょっと匂わせちゃおって思ったのよ」
赤色の髪をハーフツインにした、薄着の若い女はオズックにしなだれかかって言う。
「傘、返してもらってね? 返してもらえないんなら、あんたに手ぇ出されたって言っちゃうから」
「おい、イボンヌ、勘弁してくれよ」
オズックは笑みを浮かべたつもりだったが、恐怖で口元が引きつっていた。
それを見たイボンヌと呼ばれた女は笑う。
「あんたが悪いのよ、オズック。あたしを本気にさせるんだもの。ねえ、金蔓の侯爵令嬢の婚約者とは別れなくていいから、他の女とは早く縁を切ってよね?」
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