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4 素直で純粋なわたし
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「その反応を見ると、浮気しているということは間違いないようですわね」
微笑んだあと、わたしは玄関の扉を自分で開けて、ポーチに立っていた騎士に傘を手渡す。
「この傘、大事に持っていてくれないかしら。オズック様からのわたしへのプレゼントなのよ」
「承知いたしました」
「ま、待ってくれ、アルミラ! 君は何か誤解している! オレのことをそんな風な目で見るなんて酷いよ」
オズック様は眉尻を下げて訴えてきた。
今は傘よりも、わたしの疑いを晴らすことに決めたらしい。
それにしても酷いのはどちらのほうよ。
わたしのほうは二度と恋なんてしたくないくらいのダメージを受けているのに、この人は少なくとも浮気相手が二人いる。
わたしともう一人の女性が、彼にとって都合のいい女ということでしょうね。
もしくは、ファニがそうだったりするのかしら。
大きく深呼吸して気持ちを落ち着けてから尋ねる。
「誤解とはどのようなことでしょうか」
「それよりもまずは、アルミラに聞きたい。君はどんなことを聞いたと言うんだよ」
「わたしの口から言えとおっしゃるのですか。冷たい御方ですわね」
失笑すると、オズック様は眉根を寄せて否定する。
「オレにはアルミラしかいないんだ。冷たいことを言っているのは君だよ。オレを信じるって約束しただろ」
「残念ながら、この目と耳で確認したのです」
「何を聞いたんだ」
オズック様は笑顔を作っているつもりのようだけれど、目は一切笑えていなかった。
「そうですわね。オズック様がファニに今の恋人と別れるようにお願いしていましたわね。そして、ファニもそれを受け入れるようでしたわ」
「え、それは、そんなわけないじゃない!」
ファニは焦った表情で言った。
彼女にしてみれば仲良くしているところを見られても良いけれど、恋人についての話は聞かれたくなかったみたいだった。
焦るなら、あんな所で話をすべきではないわ。
ファニの恋人については、2、3度会ったくらいで詳しくは知らない。
騎士だということや、2歳年上だということは知っている。
彼についても詳しく調べてみなくちゃいけないわ。
ファニの浮気について知っているのかいないのか。
知らないのなら、こちらの味方になってくれる可能性もある。
「そうよね。あなたは恋人と上手くいっていると言っていたものね。恋人のことを手紙に書いてくれていたもの」
笑顔で頷いてから、オズック様を見て話を続ける。
「その恋人というのが誰のことを言っているのかはわかりません。わたしはファニと上手くいっているほうの恋人がオズック様だと思っております」
「何を言っているんだよ! アルミラ、いい加減にしないと本気で怒るぞ」
「良いですわ。怒ってくださいませ。そして、嫌いになって婚約を破棄していただけますと有り難いですわ」
「婚約破棄なんてしない。それに、誤解だと言っているだろ! 君が聞いたのは演技なんだ」
「演技、ですか」
言った言っていないでは堂々巡りになることに気が付いたのか、オズック様は言ったことを認めることにしたようだった。
「ああ、そうだよ。君がどんな反応をするか見たかっただけだ。本気で言ったわけじゃない。そうだろ、ファニ」
「え、ええ。そうよ。あなたなら私たちを信じてくれると思っていたのよ。そんなことを言われたらショックだわ」
彼女たちは嘘をつきなれている。
そんな風に感じた。
いつから、こんな関係になったのかはわからない。
お父様にお願いして調べてもらいましょう。
あまりに踏み込んで証拠を消されても困る。
だから、今日はここで引いておくことにする。
「ごめんなさい。久しぶりに会えたのに、二人の仲がとても親密に見えて何だか不安になってしまったんです」
今までのわたしのように素直に謝ると、オズック様は微笑んで、わたしに手を差し出してくる。
「わかってくれたのなら良いよ。だけど、本当に今日の君は君らしくない。いつもの素直で純粋な君のことをオレは選んだんだよ。それを忘れないでほしい」
どうして、あなたはそんな上から目線でものを言うんでしょうね。
今までは、そんなあなたが大人だからだと思っていた。
でも、大人だからこそ、そんな言い方はしないはずなのだと、社会に出てわかった。
「そうですか。オズック様の好きなわたしは、素直で純粋なわたしなのですね」
「そうだよ。わかってくれてありがとう」
オズック様は安堵したのか小さく息を吐いてから頷いた。
では、これからのわたしは、あなたの好みではない女性になることを誓うわ。
微笑んだあと、わたしは玄関の扉を自分で開けて、ポーチに立っていた騎士に傘を手渡す。
「この傘、大事に持っていてくれないかしら。オズック様からのわたしへのプレゼントなのよ」
「承知いたしました」
「ま、待ってくれ、アルミラ! 君は何か誤解している! オレのことをそんな風な目で見るなんて酷いよ」
オズック様は眉尻を下げて訴えてきた。
今は傘よりも、わたしの疑いを晴らすことに決めたらしい。
それにしても酷いのはどちらのほうよ。
わたしのほうは二度と恋なんてしたくないくらいのダメージを受けているのに、この人は少なくとも浮気相手が二人いる。
わたしともう一人の女性が、彼にとって都合のいい女ということでしょうね。
もしくは、ファニがそうだったりするのかしら。
大きく深呼吸して気持ちを落ち着けてから尋ねる。
「誤解とはどのようなことでしょうか」
「それよりもまずは、アルミラに聞きたい。君はどんなことを聞いたと言うんだよ」
「わたしの口から言えとおっしゃるのですか。冷たい御方ですわね」
失笑すると、オズック様は眉根を寄せて否定する。
「オレにはアルミラしかいないんだ。冷たいことを言っているのは君だよ。オレを信じるって約束しただろ」
「残念ながら、この目と耳で確認したのです」
「何を聞いたんだ」
オズック様は笑顔を作っているつもりのようだけれど、目は一切笑えていなかった。
「そうですわね。オズック様がファニに今の恋人と別れるようにお願いしていましたわね。そして、ファニもそれを受け入れるようでしたわ」
「え、それは、そんなわけないじゃない!」
ファニは焦った表情で言った。
彼女にしてみれば仲良くしているところを見られても良いけれど、恋人についての話は聞かれたくなかったみたいだった。
焦るなら、あんな所で話をすべきではないわ。
ファニの恋人については、2、3度会ったくらいで詳しくは知らない。
騎士だということや、2歳年上だということは知っている。
彼についても詳しく調べてみなくちゃいけないわ。
ファニの浮気について知っているのかいないのか。
知らないのなら、こちらの味方になってくれる可能性もある。
「そうよね。あなたは恋人と上手くいっていると言っていたものね。恋人のことを手紙に書いてくれていたもの」
笑顔で頷いてから、オズック様を見て話を続ける。
「その恋人というのが誰のことを言っているのかはわかりません。わたしはファニと上手くいっているほうの恋人がオズック様だと思っております」
「何を言っているんだよ! アルミラ、いい加減にしないと本気で怒るぞ」
「良いですわ。怒ってくださいませ。そして、嫌いになって婚約を破棄していただけますと有り難いですわ」
「婚約破棄なんてしない。それに、誤解だと言っているだろ! 君が聞いたのは演技なんだ」
「演技、ですか」
言った言っていないでは堂々巡りになることに気が付いたのか、オズック様は言ったことを認めることにしたようだった。
「ああ、そうだよ。君がどんな反応をするか見たかっただけだ。本気で言ったわけじゃない。そうだろ、ファニ」
「え、ええ。そうよ。あなたなら私たちを信じてくれると思っていたのよ。そんなことを言われたらショックだわ」
彼女たちは嘘をつきなれている。
そんな風に感じた。
いつから、こんな関係になったのかはわからない。
お父様にお願いして調べてもらいましょう。
あまりに踏み込んで証拠を消されても困る。
だから、今日はここで引いておくことにする。
「ごめんなさい。久しぶりに会えたのに、二人の仲がとても親密に見えて何だか不安になってしまったんです」
今までのわたしのように素直に謝ると、オズック様は微笑んで、わたしに手を差し出してくる。
「わかってくれたのなら良いよ。だけど、本当に今日の君は君らしくない。いつもの素直で純粋な君のことをオレは選んだんだよ。それを忘れないでほしい」
どうして、あなたはそんな上から目線でものを言うんでしょうね。
今までは、そんなあなたが大人だからだと思っていた。
でも、大人だからこそ、そんな言い方はしないはずなのだと、社会に出てわかった。
「そうですか。オズック様の好きなわたしは、素直で純粋なわたしなのですね」
「そうだよ。わかってくれてありがとう」
オズック様は安堵したのか小さく息を吐いてから頷いた。
では、これからのわたしは、あなたの好みではない女性になることを誓うわ。
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