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9 敵か味方か
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その日の夜の夕食後、お父様の部屋でお母様と一緒にオズック様についての話を、改めてすることになった。
「オズック様は浮気は認めないということね。そして、アルミラと結婚したあとは侯爵の座を継いで、アルミラを追い出そうと思っている」
隣に座るお母様がわたしのはなしを聞いて呟くように言うと、お父様が眉尻を下げてわたしを見つめる。
「婚約の破談について話をしてみたが、やはり相手側の返答は証拠もないのに認められないとのことだ。公爵夫人まで出てきて、孫を侮辱するのかと怒り始めてね。エルモード伯爵夫妻も息子の言うことは信じず、娘の言うことしか信じられないのかと文句を言い出すんだ。それはお互い様だろうと思うけどな」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません。元々は、わたしがもっと早くに目を覚ましていれば良かったんです」
「あの頃のアルミラは若かったわ。止めないといけないのは保護者である私たちだったんだから、あなたが悪いんじゃなくて、私たちが悪いのよ」
お母様はそう言ってくださったけれど、子供だったことを言い訳にするのは駄目だと思ってしまうくらいの事態に陥っている気がする。
「いいえ。ある程度の判断がつく年頃でもありました。お父様とお母様があれだけ渋っていたのですから、気づかなかったわたしが悪かったのです。ですが、今回の件で目が覚めました。あの二人は演技だと言っていますが、わたしはあの時の光景を演技だとは思えません」
「目撃した騎士たちもそう言っている。だが、向こうは認めない。結婚をしても彼に侯爵家を継がせるつもりはないという話をしようと思うが意味がないだろうな」
お父様が大きく息を吐いて言うと、お母様が眉尻を下げて頷く。
「それで婚約を破棄するなんて言い出したら、侯爵の爵位を狙っていたことを肯定するようなものですから、婚約の破棄を認めるわけにはいかないでしょうね」
「それに爵位をもらえなくても、侯爵家の婿になれば金には困らないからな。こちらからの破棄ということで押し通してもいいんだが、向こう側は情報操作をして、こちら側が浮気したという話を社交界に流すだろう。そうなった場合、アルミラをもらってくれる男性はいなくなるだろうし、レイドック侯爵家もアルミラが継ぐ前から危なくなるかもしれない」
お父様はそこまで言うと言葉を止め、不安そうにしているわたしを見つめて話を続ける。
「アルミラ、セルロッテ様がお前と直接話をしたいらしい。責めるつもりはなく、どうして婚約を破棄したいと言い出したのか、どうしてあんなにもオズックを好きだったお前が彼を侮辱するような発言をするのか、私の口からではなく、お前の口から聞きたいとおっしゃっている」
「承知いたしました。連絡を取らせていただきます」
「それから、イボンヌという娘と話すように、リラド辺境伯家から連絡が来ている」
「イボンヌというのは、もしかして」
「そうだ。あの傘の持ち主の少女だ」
リラド辺境伯家はオズック様たちがいる領土を管理している辺境伯家だ。
どうして、イボンヌさんのことに関わってくるのかしら。
「イボンヌさんは平民ではなかったのですか」
「平民なことは確かだが、リラド辺境伯家と繋がっているのかもしれない」
そう言って、お父様は胸ポケットから折りたたまれた白い便箋を取り出した。
「ここに書かれている日時に指定の場所に行くようにと」
「承知しました。申し訳ございませんが、お父様」
「わかっている。その間の仕事は私がやる。お前は自分のやらなければならないことをしなさい」
「ありがとうございます」
折りたたまれていた紙を開き、日時と場所を確認した。
リラド辺境伯家と私の家は特に関係性が悪いわけではない。
今のままでは公爵家の権力に負けてしまう。
オズック様たちが言い逃れのできないような証拠を掴まなければならない。
これがリラド辺境伯家からの嫌がらせではないことを祈った。
*****
2日後、待ち合わせたレストランで、イボンヌさんと会った。
レストランの個室で先に中で待ってくれていたイボンヌさんの開口一番の言葉はこうだった。
「あなたの味方になるから、敬語はなしでいい?」
初対面の人にこんな風に話しかけられたのは始めてだったので、驚いて動きを止めてしまった。
「オズック様は浮気は認めないということね。そして、アルミラと結婚したあとは侯爵の座を継いで、アルミラを追い出そうと思っている」
隣に座るお母様がわたしのはなしを聞いて呟くように言うと、お父様が眉尻を下げてわたしを見つめる。
「婚約の破談について話をしてみたが、やはり相手側の返答は証拠もないのに認められないとのことだ。公爵夫人まで出てきて、孫を侮辱するのかと怒り始めてね。エルモード伯爵夫妻も息子の言うことは信じず、娘の言うことしか信じられないのかと文句を言い出すんだ。それはお互い様だろうと思うけどな」
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません。元々は、わたしがもっと早くに目を覚ましていれば良かったんです」
「あの頃のアルミラは若かったわ。止めないといけないのは保護者である私たちだったんだから、あなたが悪いんじゃなくて、私たちが悪いのよ」
お母様はそう言ってくださったけれど、子供だったことを言い訳にするのは駄目だと思ってしまうくらいの事態に陥っている気がする。
「いいえ。ある程度の判断がつく年頃でもありました。お父様とお母様があれだけ渋っていたのですから、気づかなかったわたしが悪かったのです。ですが、今回の件で目が覚めました。あの二人は演技だと言っていますが、わたしはあの時の光景を演技だとは思えません」
「目撃した騎士たちもそう言っている。だが、向こうは認めない。結婚をしても彼に侯爵家を継がせるつもりはないという話をしようと思うが意味がないだろうな」
お父様が大きく息を吐いて言うと、お母様が眉尻を下げて頷く。
「それで婚約を破棄するなんて言い出したら、侯爵の爵位を狙っていたことを肯定するようなものですから、婚約の破棄を認めるわけにはいかないでしょうね」
「それに爵位をもらえなくても、侯爵家の婿になれば金には困らないからな。こちらからの破棄ということで押し通してもいいんだが、向こう側は情報操作をして、こちら側が浮気したという話を社交界に流すだろう。そうなった場合、アルミラをもらってくれる男性はいなくなるだろうし、レイドック侯爵家もアルミラが継ぐ前から危なくなるかもしれない」
お父様はそこまで言うと言葉を止め、不安そうにしているわたしを見つめて話を続ける。
「アルミラ、セルロッテ様がお前と直接話をしたいらしい。責めるつもりはなく、どうして婚約を破棄したいと言い出したのか、どうしてあんなにもオズックを好きだったお前が彼を侮辱するような発言をするのか、私の口からではなく、お前の口から聞きたいとおっしゃっている」
「承知いたしました。連絡を取らせていただきます」
「それから、イボンヌという娘と話すように、リラド辺境伯家から連絡が来ている」
「イボンヌというのは、もしかして」
「そうだ。あの傘の持ち主の少女だ」
リラド辺境伯家はオズック様たちがいる領土を管理している辺境伯家だ。
どうして、イボンヌさんのことに関わってくるのかしら。
「イボンヌさんは平民ではなかったのですか」
「平民なことは確かだが、リラド辺境伯家と繋がっているのかもしれない」
そう言って、お父様は胸ポケットから折りたたまれた白い便箋を取り出した。
「ここに書かれている日時に指定の場所に行くようにと」
「承知しました。申し訳ございませんが、お父様」
「わかっている。その間の仕事は私がやる。お前は自分のやらなければならないことをしなさい」
「ありがとうございます」
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リラド辺境伯家と私の家は特に関係性が悪いわけではない。
今のままでは公爵家の権力に負けてしまう。
オズック様たちが言い逃れのできないような証拠を掴まなければならない。
これがリラド辺境伯家からの嫌がらせではないことを祈った。
*****
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レストランの個室で先に中で待ってくれていたイボンヌさんの開口一番の言葉はこうだった。
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