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18 婚約破棄に向けて②
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「アルミラ、お祖母様、聞いてください! オレとここにいる彼女は職場の繋がりで知り合っただけで、何かあるというわけではないんです!」
「職場の繋がりというだけでは、異性と二人で食事をする理由にはならないわ。それにあなた、今さっき、自分が言った言葉も忘れてしまったの?」
セルロッテ様がぴしゃりと言うと、オズックは助けを求めるかのようにシャーロット様を見た。
シャーロット様は苦笑しているだけで何も言わない。
どうこの場を切り抜けようか考えているのか、黙り込んだオズックに話しかける。
「オズック様はわたしの友人が本当にお好きなようですわね」
「ど、どういうことだよ」
「ファニの時もそうでしたし、今、あなたの目の前にいるシャーロット様も、わたしのお友達ですわ」
「シャーロットだって?」
オズックは口をぽかんと大きく開けたあと、シャーロット様のほうに振り返った。
「職場では偽名を使っています。上司には許可を得ていますし、同僚の方も今回の件については協力してくれています」
シャーロット様が視線を左に向けると、彼女の職場の人らしき人たちがオズックに小さく頭を下げた。
「……どういうことなんだよ」
オズックは焦った顔をして周りを見回す。
「どうもこうもないわ。あなたが素直に浮気を認めないから、ここまで大事になったのよ」
わたしが答える前にセルロッテ様はそう言って大きなため息を吐くと、店の出入り口付近にいたエルモード伯爵家の人たちに告げる。
「レイドック侯爵家からの婚約の破棄に応じなさい」
「そんな、お母様!」
エルモード伯爵が首を横に振って訴える。
「私は伯爵の爵位以外、何も持っていないんですよ! このままではオズックに爵位を与えられません!」
「息子がどうこう言う前に、あなたはどうするつもりだったの」
「そ、それは、その養ってもらうつもりでした」
「誰に?」
セルロッテ様が冷たい声で尋ねると、エルモード伯爵は黙り込んでしまった。
本当はオズックに侯爵家を継がせて、オズックに養ってもらうつもりでいたんでしょう。
エルモード家のことはセルロッテ様にお任せして、わたしはオズックに話しかける。
「オズック様、これだけ多くの証人もおります。まさか、これも演技だなんて馬鹿なことは言いませんわよね?」
「そ、それは、その、シャーロットに騙されたんだ!」
「わ、わ、私から誘惑した覚えもありませんしっ、デートに誘ってこられたのも、オズック様ですっ! 先程っ、私に惹かれているとおっしゃいましたが、そんなことを言うように私は頼んだ覚えはありません!」
シャーロット様が声を震わせながら言い返した時、少し離れたテーブルに座っていたストレートの長い黒髪を持つ美人が立ち上がって叫ぶ。
「オズック! あなた、私には自分と付き合ってくれたら、アルミラ様と別れると言っていたし、付き合ったら付き合ったで、アルミラ様が別れてくれないなんて嘘をついていたわよね!」
「やめろ!」
「やめないわ! もし、私とあなたとの仲がバレたら、アルミラ様に莫大な慰謝料を請求されるから、黙って別れろだとか言ったじゃないの! 私のためだとか言いながら、自分のことしか考えていないじゃないの!」
女性は息を整えてから、私を見て深々と頭を下げた。
「申し訳ございませんでした。アルミラ様という婚約者がいるとわかっていて、お付き合いした私が悪いことはわかっています。何年かかるかわかりませんが、慰謝料は必ずお支払いいたしますので」
「あなたも被害者のようなものでしょう。ですから、その話は改めてしましょう。それよりも、あなた宛のオズックからの手紙があると聞いたのだけれど」
「持参しておりますので、お渡しします」
そう言って、女性が封筒を何通か持って、こちらに歩いて来た。
すると、オズックは顔を真っ青にさせて叫ぶ。
「やめろ!」
女性に向かって行こうとするオズックの足を誰かが引っ掛けたのか、オズックは派手に転んで、女性の足元に倒れ込んだ。
そのため、私から女性の元に近づき、手紙を受け取ってからオズックを見下ろす。
「オズック様、あなたは手紙など証拠になるものは焼き捨てるようにお願いしていたそうですわね。でも、残念でした。好きな人からの手紙を全ての女性が簡単に捨てるとは思わないでくださいませ」
物的証拠が出てきたとわかったオズックは、床にうつ伏せになったまま、情けない表情で私を見つめたのだった。
「職場の繋がりというだけでは、異性と二人で食事をする理由にはならないわ。それにあなた、今さっき、自分が言った言葉も忘れてしまったの?」
セルロッテ様がぴしゃりと言うと、オズックは助けを求めるかのようにシャーロット様を見た。
シャーロット様は苦笑しているだけで何も言わない。
どうこの場を切り抜けようか考えているのか、黙り込んだオズックに話しかける。
「オズック様はわたしの友人が本当にお好きなようですわね」
「ど、どういうことだよ」
「ファニの時もそうでしたし、今、あなたの目の前にいるシャーロット様も、わたしのお友達ですわ」
「シャーロットだって?」
オズックは口をぽかんと大きく開けたあと、シャーロット様のほうに振り返った。
「職場では偽名を使っています。上司には許可を得ていますし、同僚の方も今回の件については協力してくれています」
シャーロット様が視線を左に向けると、彼女の職場の人らしき人たちがオズックに小さく頭を下げた。
「……どういうことなんだよ」
オズックは焦った顔をして周りを見回す。
「どうもこうもないわ。あなたが素直に浮気を認めないから、ここまで大事になったのよ」
わたしが答える前にセルロッテ様はそう言って大きなため息を吐くと、店の出入り口付近にいたエルモード伯爵家の人たちに告げる。
「レイドック侯爵家からの婚約の破棄に応じなさい」
「そんな、お母様!」
エルモード伯爵が首を横に振って訴える。
「私は伯爵の爵位以外、何も持っていないんですよ! このままではオズックに爵位を与えられません!」
「息子がどうこう言う前に、あなたはどうするつもりだったの」
「そ、それは、その養ってもらうつもりでした」
「誰に?」
セルロッテ様が冷たい声で尋ねると、エルモード伯爵は黙り込んでしまった。
本当はオズックに侯爵家を継がせて、オズックに養ってもらうつもりでいたんでしょう。
エルモード家のことはセルロッテ様にお任せして、わたしはオズックに話しかける。
「オズック様、これだけ多くの証人もおります。まさか、これも演技だなんて馬鹿なことは言いませんわよね?」
「そ、それは、その、シャーロットに騙されたんだ!」
「わ、わ、私から誘惑した覚えもありませんしっ、デートに誘ってこられたのも、オズック様ですっ! 先程っ、私に惹かれているとおっしゃいましたが、そんなことを言うように私は頼んだ覚えはありません!」
シャーロット様が声を震わせながら言い返した時、少し離れたテーブルに座っていたストレートの長い黒髪を持つ美人が立ち上がって叫ぶ。
「オズック! あなた、私には自分と付き合ってくれたら、アルミラ様と別れると言っていたし、付き合ったら付き合ったで、アルミラ様が別れてくれないなんて嘘をついていたわよね!」
「やめろ!」
「やめないわ! もし、私とあなたとの仲がバレたら、アルミラ様に莫大な慰謝料を請求されるから、黙って別れろだとか言ったじゃないの! 私のためだとか言いながら、自分のことしか考えていないじゃないの!」
女性は息を整えてから、私を見て深々と頭を下げた。
「申し訳ございませんでした。アルミラ様という婚約者がいるとわかっていて、お付き合いした私が悪いことはわかっています。何年かかるかわかりませんが、慰謝料は必ずお支払いいたしますので」
「あなたも被害者のようなものでしょう。ですから、その話は改めてしましょう。それよりも、あなた宛のオズックからの手紙があると聞いたのだけれど」
「持参しておりますので、お渡しします」
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「オズック様、あなたは手紙など証拠になるものは焼き捨てるようにお願いしていたそうですわね。でも、残念でした。好きな人からの手紙を全ての女性が簡単に捨てるとは思わないでくださいませ」
物的証拠が出てきたとわかったオズックは、床にうつ伏せになったまま、情けない表情で私を見つめたのだった。
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