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23 レイドック候爵家の応接室での話③
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睨みつけてきたファニを睨み返してから口を開く。
「人を好きになる気持ちは止められないことは理解できるわ。でも、普通なら友人のことや婚約者のことを考えるわよね」
「そんなことも忘れるくらいに好きになったのよ!」
ファニはオズックとの関係を隠すことを諦めたようだった。
そんな彼女に冷静に尋ねる。
「友人や婚約者を裏切ることは恋愛としてはありえることなのかもしれないけれど、家族に迷惑をかけてまでしなきゃいけない恋だったの? そんなに好きだったなら駆け落ちすれば良かったじゃないの」
「簡単に駆け落ちだなんて言わないでよ! お金がなくちゃ駆け落ちなんてできないじゃない! それに連れ戻されるのはわかっているわ」
「ファニ」
ブァーカルド子爵が厳しい口調で彼女の名を呼んだので、ファニはそちらに顔を向けて訴える。
「お父様、聞いてください。私は本当に」
「騙された騙されていないはおいておいて、お前は本当にオズック様のことが好きだったんだな」
「え、あ、そ、それは、そうです。でも、それは騙されたからで!」
「連れ戻しはしないから、彼を追っていきなさい」
「……え?」
ファニは呆然とした表情でブァーカルド子爵を見つめた。
夫人のほうは今にも泣き出しそうな顔をして、自分の夫を見つめている。
「そのままの意味だ。彼は南の地に向かったんだろう。止めやしない。職場に辞める旨を伝えて彼を追って行きなさい。生活が苦しくなれば連絡してくれば良い」
「待ってよ、お父様! 私はレッドと婚約しているんですよ!」
「ファニ、そのことだけど僕は君との婚約を破棄する」
ファニの叫びのあとにレッド様が静かに言うと、ファニはレッド様に顔を向ける。
「ちょっと待って! どうしてよ!?」
「君はたくさんの人に迷惑をかけたってことがわからないのか?」
「肉体関係がないんだから良いじゃないの!」
「ファニ、浮気自体がありえないし、レッド様の心がどれだけ傷ついたと思ってるの!」
ファニを叱ると、彼女は今度はわたしに顔を向けて叫ぶ。
「あなたがオズックをちゃんと捕まえておかないからいけないんじゃないの!」
「それができないから、あなたに見張っておいてと頼んだんじゃないの。これについてはわたしが悪いと思っているから、あなたを責めるつもりはないわ。わたしが問題だと言っているのはその後のことよ。それから、レッド様の話とわたしの話は関係ないでしょう。浮気はあなたの意思の弱さの問題だわ」
「……っ! わかったわよ!」
ファニはまたレッド様のほうに体を向けて叫ぶ。
「婚約の破棄を受け入れるわ! 私はオズックの後を追うわよ! まだ彼は伯爵令息だし、騙されたということで慰謝料をもらって、レッドみたいな騎士なんかじゃなく貴族の男性と結婚するから!」
「婚約破棄を受け入れてくれてありがとう」
レッド様は寂しそうに笑ったあと、部屋の外で待っていた執事を呼び、ファニに婚約破棄の書類とサインするためのペンを渡すように命じた。
そして、ファニがサインを終え、書類がレッド様の手元に渡ると、レッド様は自分の両親とわたしのほうを見た。
私たちが頷くと、レッド様はファニを見つめて口を開く。
「最後に伝えておきたいことがあるんだ」
「何よ」
ファニはふてぶてしい態度で聞き返した。
レッド様は良い人だから、ファニと婚約破棄になって良かったわ。
彼女に伯爵夫人なんて務まらないもの。
「最初は断っていたんだけど、君のために引き受けたことがあったんだ」
「恩着せがましく言わないで、さっさと話をしなさいよ!」
「伯父の爵位を継ぐんだ」
「……え?」
「伯父の家には跡継ぎがいないから、僕に爵位を継いでほしいって言われていたんだ。最初は騎士になりたかったから断っていた。だけど、君のために爵位を継ごうって決めたんだよ。もう君のためにはならないけど、でも、僕は伯爵になる」
ファニはレッド様の告白を聞き、呆然とした表情で口を大きく開けて動きを止めた。
「人を好きになる気持ちは止められないことは理解できるわ。でも、普通なら友人のことや婚約者のことを考えるわよね」
「そんなことも忘れるくらいに好きになったのよ!」
ファニはオズックとの関係を隠すことを諦めたようだった。
そんな彼女に冷静に尋ねる。
「友人や婚約者を裏切ることは恋愛としてはありえることなのかもしれないけれど、家族に迷惑をかけてまでしなきゃいけない恋だったの? そんなに好きだったなら駆け落ちすれば良かったじゃないの」
「簡単に駆け落ちだなんて言わないでよ! お金がなくちゃ駆け落ちなんてできないじゃない! それに連れ戻されるのはわかっているわ」
「ファニ」
ブァーカルド子爵が厳しい口調で彼女の名を呼んだので、ファニはそちらに顔を向けて訴える。
「お父様、聞いてください。私は本当に」
「騙された騙されていないはおいておいて、お前は本当にオズック様のことが好きだったんだな」
「え、あ、そ、それは、そうです。でも、それは騙されたからで!」
「連れ戻しはしないから、彼を追っていきなさい」
「……え?」
ファニは呆然とした表情でブァーカルド子爵を見つめた。
夫人のほうは今にも泣き出しそうな顔をして、自分の夫を見つめている。
「そのままの意味だ。彼は南の地に向かったんだろう。止めやしない。職場に辞める旨を伝えて彼を追って行きなさい。生活が苦しくなれば連絡してくれば良い」
「待ってよ、お父様! 私はレッドと婚約しているんですよ!」
「ファニ、そのことだけど僕は君との婚約を破棄する」
ファニの叫びのあとにレッド様が静かに言うと、ファニはレッド様に顔を向ける。
「ちょっと待って! どうしてよ!?」
「君はたくさんの人に迷惑をかけたってことがわからないのか?」
「肉体関係がないんだから良いじゃないの!」
「ファニ、浮気自体がありえないし、レッド様の心がどれだけ傷ついたと思ってるの!」
ファニを叱ると、彼女は今度はわたしに顔を向けて叫ぶ。
「あなたがオズックをちゃんと捕まえておかないからいけないんじゃないの!」
「それができないから、あなたに見張っておいてと頼んだんじゃないの。これについてはわたしが悪いと思っているから、あなたを責めるつもりはないわ。わたしが問題だと言っているのはその後のことよ。それから、レッド様の話とわたしの話は関係ないでしょう。浮気はあなたの意思の弱さの問題だわ」
「……っ! わかったわよ!」
ファニはまたレッド様のほうに体を向けて叫ぶ。
「婚約の破棄を受け入れるわ! 私はオズックの後を追うわよ! まだ彼は伯爵令息だし、騙されたということで慰謝料をもらって、レッドみたいな騎士なんかじゃなく貴族の男性と結婚するから!」
「婚約破棄を受け入れてくれてありがとう」
レッド様は寂しそうに笑ったあと、部屋の外で待っていた執事を呼び、ファニに婚約破棄の書類とサインするためのペンを渡すように命じた。
そして、ファニがサインを終え、書類がレッド様の手元に渡ると、レッド様は自分の両親とわたしのほうを見た。
私たちが頷くと、レッド様はファニを見つめて口を開く。
「最後に伝えておきたいことがあるんだ」
「何よ」
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レッド様は良い人だから、ファニと婚約破棄になって良かったわ。
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「伯父の家には跡継ぎがいないから、僕に爵位を継いでほしいって言われていたんだ。最初は騎士になりたかったから断っていた。だけど、君のために爵位を継ごうって決めたんだよ。もう君のためにはならないけど、でも、僕は伯爵になる」
ファニはレッド様の告白を聞き、呆然とした表情で口を大きく開けて動きを止めた。
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