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43 懲りない男①
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ここ最近は、フィルに会いに来てもらうことが多かったので、知らせを聞いたわたしはフィルに会いに出かけた。
その前にセルロッテ様に連絡を入れて、アフック様がわたしに近づかないようにお願いをした。
セルロッテ様は、オズックにはとても甘かったけれど、アフック様は嫡男ということもあり、オズック様のように見過ごせなかったらしい。
だから、今回は少しだけ厳しい対処をしてくれた。
わたしの許可がない限り、アフック様はわたしに近づいてはならない。
もし、近づいた場合は――
扉がノックされる音が聞こえて、ここで思考が途切れた。
フィルが仕事から帰って来るまで、彼の部屋に案内されて待っていた。
だから、慌ててソファから立ち上がる。
「おかえりなさい、フィル。お邪魔しているわ」
「……ただいま」
フィルが照れくさそうにするので不思議に思ったあと、ここは自分の部屋ではなかったことを思い出して慌てて謝る。
「ごめんなさい、ここはあなたの部屋なのに」
「いや、いいよ。わざわざ来てくれてありがとう」
仕事終わりのフィルは、いつもよりも疲れた顔をしているけれど、わたしに笑顔を向けて言った。
「あなたを巻き込んでしまったんだから、わたしのほうから伺うのは当たり前のことだわ。フィルを巻き込んでしまってごめんなさい」
頭を下げると、フィルはわたしの前までやって来ると、優しくわたしの左手を取った。
「巻き込まれたなんて思ってない。アルミラが来てくれたことはすごく嬉しい。でも、外に出たらエルモード卿が近寄ってくるかもしれないぞ。そっちのほうが心配だ」
「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。セルロッテ様が協力してくださっているから」
「それなら良いけど、アルミラはえらくヨレドロール公爵夫人に気に入られたんだな」
「そうかしら」
「そうだと思う」
フィルが微笑んで、わたしにソファに座るように促してくれる。
お礼を言ってから座ると、フィルは隣に座って話を続ける。
「あんなにもオズックを信じていた人の目を覚まさせたんだから気に入られてるんだと思うぞ」
「セルロッテ様が悪い人ではなかったからよ」
「そうかもしれないが、アルミラにそこまでしてくれる必要はないだろ」
そのことはわたしも不思議に思っていた。
あんなにもオズックを信じて、他の人の証言をもみ消していたのに、とうしてわたしの場合は違うのかしら。
口に出していないのに、フィルがわたしの疑問の答えを教えてくれる。
「今のアルミラじゃなくて、少し前のアルミラはギラギラしてたからな」
「ギラギラ?」
「ああ。オズックやブァーカルド子爵令嬢を殺しても良いくらいの感じだったろ」
「口には出していないのに、どうしてそんなことがわかるの?」
フィルの問いかけに答えはせずに質問を返した。
「それくらいアルミラの目が死んでた」
「その言い方はないんじゃないの!?」
「本当のことだよ」
「じゃあ、今のわたしの目はどうなの?」
少しだけ機嫌を悪くして尋ねたからか、フィルは握っていた手を優しく握り直してから、言いにくそうに口を開く。
「今のアルミラは……、その」
「その、何なの?」
顔を近づけて睨みつけると、フィルの頬が赤くなった。
どうしてか赤くなったのかわからなかった。
でも、目がまた合った瞬間、慌ててフィルから離れた。
顔を近づけすぎて、鼻先が触れそうになっていた。
「ごめんなさい」
「謝らなくていい。こっちこそごめん」
「どうしてフィルが謝るのよ。わたしが悪いんだから謝らないで! 本当にごめんなさい」
「いや、こっちこそ」
謝り合っていた時、フィルの部屋の扉が叩かれた。
フィルが謝ってくるのをやめて返事をすると、メイドらしき女性の声が聞こえる。
「フィリップ様、旦那様がお呼びです。できればアルミラ様もご一緒に来ていただければとのことでございます」
「……アルミラはどうする?」
「ご希望なら行くわ」
わたしとフィルは先程のことは頭の隅に追いやってから立ち上がったのだった。
その前にセルロッテ様に連絡を入れて、アフック様がわたしに近づかないようにお願いをした。
セルロッテ様は、オズックにはとても甘かったけれど、アフック様は嫡男ということもあり、オズック様のように見過ごせなかったらしい。
だから、今回は少しだけ厳しい対処をしてくれた。
わたしの許可がない限り、アフック様はわたしに近づいてはならない。
もし、近づいた場合は――
扉がノックされる音が聞こえて、ここで思考が途切れた。
フィルが仕事から帰って来るまで、彼の部屋に案内されて待っていた。
だから、慌ててソファから立ち上がる。
「おかえりなさい、フィル。お邪魔しているわ」
「……ただいま」
フィルが照れくさそうにするので不思議に思ったあと、ここは自分の部屋ではなかったことを思い出して慌てて謝る。
「ごめんなさい、ここはあなたの部屋なのに」
「いや、いいよ。わざわざ来てくれてありがとう」
仕事終わりのフィルは、いつもよりも疲れた顔をしているけれど、わたしに笑顔を向けて言った。
「あなたを巻き込んでしまったんだから、わたしのほうから伺うのは当たり前のことだわ。フィルを巻き込んでしまってごめんなさい」
頭を下げると、フィルはわたしの前までやって来ると、優しくわたしの左手を取った。
「巻き込まれたなんて思ってない。アルミラが来てくれたことはすごく嬉しい。でも、外に出たらエルモード卿が近寄ってくるかもしれないぞ。そっちのほうが心配だ」
「心配してくれてありがとう。でも、大丈夫よ。セルロッテ様が協力してくださっているから」
「それなら良いけど、アルミラはえらくヨレドロール公爵夫人に気に入られたんだな」
「そうかしら」
「そうだと思う」
フィルが微笑んで、わたしにソファに座るように促してくれる。
お礼を言ってから座ると、フィルは隣に座って話を続ける。
「あんなにもオズックを信じていた人の目を覚まさせたんだから気に入られてるんだと思うぞ」
「セルロッテ様が悪い人ではなかったからよ」
「そうかもしれないが、アルミラにそこまでしてくれる必要はないだろ」
そのことはわたしも不思議に思っていた。
あんなにもオズックを信じて、他の人の証言をもみ消していたのに、とうしてわたしの場合は違うのかしら。
口に出していないのに、フィルがわたしの疑問の答えを教えてくれる。
「今のアルミラじゃなくて、少し前のアルミラはギラギラしてたからな」
「ギラギラ?」
「ああ。オズックやブァーカルド子爵令嬢を殺しても良いくらいの感じだったろ」
「口には出していないのに、どうしてそんなことがわかるの?」
フィルの問いかけに答えはせずに質問を返した。
「それくらいアルミラの目が死んでた」
「その言い方はないんじゃないの!?」
「本当のことだよ」
「じゃあ、今のわたしの目はどうなの?」
少しだけ機嫌を悪くして尋ねたからか、フィルは握っていた手を優しく握り直してから、言いにくそうに口を開く。
「今のアルミラは……、その」
「その、何なの?」
顔を近づけて睨みつけると、フィルの頬が赤くなった。
どうしてか赤くなったのかわからなかった。
でも、目がまた合った瞬間、慌ててフィルから離れた。
顔を近づけすぎて、鼻先が触れそうになっていた。
「ごめんなさい」
「謝らなくていい。こっちこそごめん」
「どうしてフィルが謝るのよ。わたしが悪いんだから謝らないで! 本当にごめんなさい」
「いや、こっちこそ」
謝り合っていた時、フィルの部屋の扉が叩かれた。
フィルが謝ってくるのをやめて返事をすると、メイドらしき女性の声が聞こえる。
「フィリップ様、旦那様がお呼びです。できればアルミラ様もご一緒に来ていただければとのことでございます」
「……アルミラはどうする?」
「ご希望なら行くわ」
わたしとフィルは先程のことは頭の隅に追いやってから立ち上がったのだった。
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