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46 懲りない男④
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ヒスティー嬢は迷ったような顔をしたけれど、アフック様を信じると決めたのか、わたしの言葉を否定してくる。
「嘘です! アフック様は私と結婚してくれると言いました!」
「ヒスティー嬢! やめるんだ!」
「どうして、やめないといけないんですか! アルミラ様の言う通りだからですか!?」
ヒスティー嬢に聞き返されたアフック様はこの場をどう切り抜けようかと考えているのか、唇を噛んで険しい顔をしている。
今度はフィルがヒスティー嬢に話しかける。
「君は彼から結婚してやるから嘘の証言をしろとでも言われたのか?」
「ち、違います。私は本当にあなたと何度も夜を」
「ヒスティー嬢! やめろと言っているだろう!」
アフック様が口を押さえようとした手を伸ばす。
すると、ヒスティー嬢がその手に噛みついた。
「痛いな! 何をするんだ!」
「約束を破るなんて言わせないわ。そんなことをしたらどうなるかわかっているんでしょうね!」
「それはこっちのセリフだ! もういい。君を信じた僕が馬鹿だった」
アフック様は大きく息を吐くと、噛まれた手を、もう片方の手でさすりながら目を伏せた。
ヒスティー嬢は冷静を取り戻したのか、焦った顔になる。
「アフック様?」
「……リアド辺境伯、フィリップ様、申し訳ございません。彼女が本当のことを言っているのだと思い込んでいました。ですが、僕は騙されていたようです」
「……アフック様、何を言っているんですか!?」
掴みかかろうとしたヒスティー嬢の腕を掴み、アフック様は言う。
「僕が君と結婚するだなんて、嘘の話をするんじゃない! いつか見た夢と混同しているんだ」
「嘘はついていません! あなたは約束してくれました!」
「それも嘘だ。僕を巻き込むのはやめてくれ!」
アフック様の様子を見ていると、わたしたちがいなければ、ヒスティー嬢を今頃は亡き者にしているのではないかと思うくらいに冷たいものだった。
「アフック様! あなたは最初から私を見捨てるつもりだったんですか!? 勝算がないことは、私も言っていたじゃないですか! それなのにあなたが!」
「違う!」
「ヒスティーさん、別室でゆっくり話をしませんか? アフック様がいると、中々、話が進まないでしょうから」
「……そうですね」
わたしが話しかけると、ヒスティー嬢は悔しそうな顔をしながらも頷いた。
「リアド辺境伯、申し訳ないのですが、どこかお部屋をお借りできないでしょうか」
「すぐに用意をさせよう」
「ありがとうございます」
一礼すると、アフック様が訴えてくる。
「アルミラ嬢! 誤解しないでください! ヒスティー嬢は僕を嫌っていて、そんな嘘をついているんです!」
「アフック様、申し訳ございませんが、わたしとあなたは一般的な伯爵令息と侯爵令嬢という関係でしかありません。レイドック候爵令嬢と呼んでいただけますか。わたしもエルモード卿とお呼びしますので」
今まではオズックとアフック様の両方がエルモード家だったから、わかりやすいように下の名前で呼んでいた。
でももう、彼らと話すこともないでしょう。
にこりと微笑んで言うと、エルモード卿は顔を真っ赤にした。
「覚えていなさいよ」
そんな彼を見て、ヒスティー嬢が小さく呟いたことを、わたしは聞き逃さなかった。
「嘘です! アフック様は私と結婚してくれると言いました!」
「ヒスティー嬢! やめるんだ!」
「どうして、やめないといけないんですか! アルミラ様の言う通りだからですか!?」
ヒスティー嬢に聞き返されたアフック様はこの場をどう切り抜けようかと考えているのか、唇を噛んで険しい顔をしている。
今度はフィルがヒスティー嬢に話しかける。
「君は彼から結婚してやるから嘘の証言をしろとでも言われたのか?」
「ち、違います。私は本当にあなたと何度も夜を」
「ヒスティー嬢! やめろと言っているだろう!」
アフック様が口を押さえようとした手を伸ばす。
すると、ヒスティー嬢がその手に噛みついた。
「痛いな! 何をするんだ!」
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アフック様は大きく息を吐くと、噛まれた手を、もう片方の手でさすりながら目を伏せた。
ヒスティー嬢は冷静を取り戻したのか、焦った顔になる。
「アフック様?」
「……リアド辺境伯、フィリップ様、申し訳ございません。彼女が本当のことを言っているのだと思い込んでいました。ですが、僕は騙されていたようです」
「……アフック様、何を言っているんですか!?」
掴みかかろうとしたヒスティー嬢の腕を掴み、アフック様は言う。
「僕が君と結婚するだなんて、嘘の話をするんじゃない! いつか見た夢と混同しているんだ」
「嘘はついていません! あなたは約束してくれました!」
「それも嘘だ。僕を巻き込むのはやめてくれ!」
アフック様の様子を見ていると、わたしたちがいなければ、ヒスティー嬢を今頃は亡き者にしているのではないかと思うくらいに冷たいものだった。
「アフック様! あなたは最初から私を見捨てるつもりだったんですか!? 勝算がないことは、私も言っていたじゃないですか! それなのにあなたが!」
「違う!」
「ヒスティーさん、別室でゆっくり話をしませんか? アフック様がいると、中々、話が進まないでしょうから」
「……そうですね」
わたしが話しかけると、ヒスティー嬢は悔しそうな顔をしながらも頷いた。
「リアド辺境伯、申し訳ないのですが、どこかお部屋をお借りできないでしょうか」
「すぐに用意をさせよう」
「ありがとうございます」
一礼すると、アフック様が訴えてくる。
「アルミラ嬢! 誤解しないでください! ヒスティー嬢は僕を嫌っていて、そんな嘘をついているんです!」
「アフック様、申し訳ございませんが、わたしとあなたは一般的な伯爵令息と侯爵令嬢という関係でしかありません。レイドック候爵令嬢と呼んでいただけますか。わたしもエルモード卿とお呼びしますので」
今まではオズックとアフック様の両方がエルモード家だったから、わかりやすいように下の名前で呼んでいた。
でももう、彼らと話すこともないでしょう。
にこりと微笑んで言うと、エルモード卿は顔を真っ赤にした。
「覚えていなさいよ」
そんな彼を見て、ヒスティー嬢が小さく呟いたことを、わたしは聞き逃さなかった。
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