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2 別人じゃないか? そうですけど、何か?
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次の日、疲れもあったのか、それとも毒の影響なのか、はたまた、私がルキアの中に入り込んだからかはわからないけれど、ぐっすり眠っていた様で、目が覚めた時には、もう昼前の時間になっていた。
ベッドから出て、3つある窓のカーテンを開けてから、近くにあった化粧台の鏡を見ると、鏡の中のルキアは青白い顔をしていて、今にも死んでしまうのではないかと心配になるくらいに生気がない。
ルキアの記憶はちゃんと残っているし、日本人で営業事務をしていた、私、水瀬スズの記憶も鮮明に残っている。
ルキアの人格は、私によって消されてしまったんだろうか。
それとも、私が彼女の状況を、彼女が生きやすいものに変えたら、ひょっこり顔を出したりするのだろうか…。
それとも、死んだ彼女の体を借りて、人生をやり直せという事?
あー、わからない!
「とにかく、お腹が減ったわ! それに、ルキアったら、どうして、こんなに痩せてるのよ! 伯爵令嬢ってお金持ちの娘なんじゃないの!?」
鏡に映るルキアは、痩せているを通り過ぎて、病的なくらいに細かった。
「少しずつ、体力をつけていかないと…。あと、令嬢が起きてこないのに、どうして、誰も様子を見に来ないのよ」
洗面所やトイレも備え付けてある部屋なので、まずは顔を洗い、歯を磨いた。
歯を磨きながら、状況を整理してみると、過去に巻き戻ったとかいうわけではなく、私がいた世界とは違う、別世界に転生したみたいだった。
その後は、部屋の中にあるウォークインクローゼットの扉を開き、動きやすそうな服を引っ張り出してきて着替える。
ルキアの記憶を探ると、馬鹿にしてくるメイドもいたけれど、基本は優しいメイドが多そうだし、とりあえず、性格の良さそうなメイドを探して、朝食を持ってきてもらう事にする。
扉を開けて、廊下に出ると、たまたま近くを歩いていたメイドが、ルキアにいつも優しくしてくれていたメイドだったので、声を掛ける。
「おはよう、メアリー。悪いんだけど、食事を持ってきてくれない?」
「おはようございます、お嬢様! …ではなく、若奥様!」
「それ、止めてくれる? ルキアでいいわ」
「ですが、昨日、ご結婚なされましたし…」
「いいの。離婚予定だから」
「り、離婚!?」
メアリーはとても人の良い子で、ルキアの記憶では、何かあると、いつも自分の事の様に相談に悩んでくれていた。
メアリーの友人のカトリーヌとロザンヌも、性格のタイプは違うけれど、良い子で、彼女達は信用できる。
「離婚って、そんな! まだ一日目ですよ?」
「ちょっと、メアリー。声が大きいわ。中に入って」
黒のメイド服を着て、茶色の髪を2つに分けて三編みにしているメアリーは、ナチュラルメイクの素朴な雰囲気の少女だ。
メアリーは可愛らしい顔を歪めて聞いてくる。
「あの、一体、どういう事なのでしょうか? 私、昨日、夜勤ではなかったので、詳しい事はわからないんですが…」
「メアリー、信じられないかもしれないけど聞いて。私、ルキアじゃないの」
「え?」
「あなたの知ってるルキアは、こんなにはっきり話をしなかったでしょう!?」
「は、はい! ルキア様はいつも優しく微笑まれて、声も小さかったです!」
メアリーがぶるぶる震えながら、首を縦に振った。
「というわけで、今までのルキアと違う事を言い出すかもしれないけど、よっぽどじゃない限り止めないでくれない?」
「え? 止めてくれじゃなくて、止めるな、なんですか?」
「ええ。無茶な事をするつもりはないけど、今までのルキアからしてみれば、無茶な事をするつもりだから」
「い、意味がわかりません! 失礼ですが、どこかで、頭を打たれたとか? もしくは、寝ぼけていらっしゃるとかですかですか?」
「どっちでもいいわ! とにかく、今までのルキアじゃないから!」
若いルキアとは違い、私は彼女よりも云十年は生きている経験がある。
ちょっとやそっとの罵声を浴びせられても気にならない。
なぜなら、勤める会社がブラック企業ばっかりだったからね!
おっさんの罵声なんて聞き慣れてるし、お局の対処もバッチリよ。
って、ここでは、私が局の立場じゃない?
いやいや、だからって、人をいじめるのは良くない。
ただ、自分に何かされたら、文句を言うのは良しという事にしよう。
「とにかく、お腹が減ったの。朝ごはんを用意してくれない?」
「朝ごはん…? 朝食の事でしょうか?」
「そう! 朝食!」
「ルキア様は朝食は召し上がらなかったですし、今はもう、お昼ですね…」
メアリーが窓の外を見て呟くように言った。
「じゃあ、昼食を取るわ! 用意をお願いできる?」
「承知いたしました!」
メアリーはまだ戸惑っている感じだったけれど、頷いてから部屋を出ていこうとして、扉を開けた。
すると、目の前に不機嫌そうな顔をした、ミゲルという男が立っていて、メアリーは驚いて扉を閉めてしまった。
「何してるの」
笑うのをこらえて聞くと、メアリーは泣きそうな顔でこちらを振り返る。
「わたし…クビでしょうか」
「大丈夫よ」
苦笑してから、私が扉を開けると、ミゲルは先程の状態のまま、廊下に立っていた。
「おい、いつまで寝ているつもりだ? それに、さっきのメイドはどうなってるんだよ」
「あなたが怖い顔をしてるからでしょう。それから、何の用ですか? 私の顔なんて、見たくないんじゃなかったでしたっけ?」
「何だよ、その態度は…。昨日とはまるで別人じゃないか?」
ミゲルは眉を寄せて、小柄であるルキアの姿を見下ろして言った。
そう。
ミゲルくん。
君の言ってる事は間違ってない。
「そうですけど、何か?」
どうせ信じてもらえないのだし、隠す必要もないので、笑顔で聞き返した。
ベッドから出て、3つある窓のカーテンを開けてから、近くにあった化粧台の鏡を見ると、鏡の中のルキアは青白い顔をしていて、今にも死んでしまうのではないかと心配になるくらいに生気がない。
ルキアの記憶はちゃんと残っているし、日本人で営業事務をしていた、私、水瀬スズの記憶も鮮明に残っている。
ルキアの人格は、私によって消されてしまったんだろうか。
それとも、私が彼女の状況を、彼女が生きやすいものに変えたら、ひょっこり顔を出したりするのだろうか…。
それとも、死んだ彼女の体を借りて、人生をやり直せという事?
あー、わからない!
「とにかく、お腹が減ったわ! それに、ルキアったら、どうして、こんなに痩せてるのよ! 伯爵令嬢ってお金持ちの娘なんじゃないの!?」
鏡に映るルキアは、痩せているを通り過ぎて、病的なくらいに細かった。
「少しずつ、体力をつけていかないと…。あと、令嬢が起きてこないのに、どうして、誰も様子を見に来ないのよ」
洗面所やトイレも備え付けてある部屋なので、まずは顔を洗い、歯を磨いた。
歯を磨きながら、状況を整理してみると、過去に巻き戻ったとかいうわけではなく、私がいた世界とは違う、別世界に転生したみたいだった。
その後は、部屋の中にあるウォークインクローゼットの扉を開き、動きやすそうな服を引っ張り出してきて着替える。
ルキアの記憶を探ると、馬鹿にしてくるメイドもいたけれど、基本は優しいメイドが多そうだし、とりあえず、性格の良さそうなメイドを探して、朝食を持ってきてもらう事にする。
扉を開けて、廊下に出ると、たまたま近くを歩いていたメイドが、ルキアにいつも優しくしてくれていたメイドだったので、声を掛ける。
「おはよう、メアリー。悪いんだけど、食事を持ってきてくれない?」
「おはようございます、お嬢様! …ではなく、若奥様!」
「それ、止めてくれる? ルキアでいいわ」
「ですが、昨日、ご結婚なされましたし…」
「いいの。離婚予定だから」
「り、離婚!?」
メアリーはとても人の良い子で、ルキアの記憶では、何かあると、いつも自分の事の様に相談に悩んでくれていた。
メアリーの友人のカトリーヌとロザンヌも、性格のタイプは違うけれど、良い子で、彼女達は信用できる。
「離婚って、そんな! まだ一日目ですよ?」
「ちょっと、メアリー。声が大きいわ。中に入って」
黒のメイド服を着て、茶色の髪を2つに分けて三編みにしているメアリーは、ナチュラルメイクの素朴な雰囲気の少女だ。
メアリーは可愛らしい顔を歪めて聞いてくる。
「あの、一体、どういう事なのでしょうか? 私、昨日、夜勤ではなかったので、詳しい事はわからないんですが…」
「メアリー、信じられないかもしれないけど聞いて。私、ルキアじゃないの」
「え?」
「あなたの知ってるルキアは、こんなにはっきり話をしなかったでしょう!?」
「は、はい! ルキア様はいつも優しく微笑まれて、声も小さかったです!」
メアリーがぶるぶる震えながら、首を縦に振った。
「というわけで、今までのルキアと違う事を言い出すかもしれないけど、よっぽどじゃない限り止めないでくれない?」
「え? 止めてくれじゃなくて、止めるな、なんですか?」
「ええ。無茶な事をするつもりはないけど、今までのルキアからしてみれば、無茶な事をするつもりだから」
「い、意味がわかりません! 失礼ですが、どこかで、頭を打たれたとか? もしくは、寝ぼけていらっしゃるとかですかですか?」
「どっちでもいいわ! とにかく、今までのルキアじゃないから!」
若いルキアとは違い、私は彼女よりも云十年は生きている経験がある。
ちょっとやそっとの罵声を浴びせられても気にならない。
なぜなら、勤める会社がブラック企業ばっかりだったからね!
おっさんの罵声なんて聞き慣れてるし、お局の対処もバッチリよ。
って、ここでは、私が局の立場じゃない?
いやいや、だからって、人をいじめるのは良くない。
ただ、自分に何かされたら、文句を言うのは良しという事にしよう。
「とにかく、お腹が減ったの。朝ごはんを用意してくれない?」
「朝ごはん…? 朝食の事でしょうか?」
「そう! 朝食!」
「ルキア様は朝食は召し上がらなかったですし、今はもう、お昼ですね…」
メアリーが窓の外を見て呟くように言った。
「じゃあ、昼食を取るわ! 用意をお願いできる?」
「承知いたしました!」
メアリーはまだ戸惑っている感じだったけれど、頷いてから部屋を出ていこうとして、扉を開けた。
すると、目の前に不機嫌そうな顔をした、ミゲルという男が立っていて、メアリーは驚いて扉を閉めてしまった。
「何してるの」
笑うのをこらえて聞くと、メアリーは泣きそうな顔でこちらを振り返る。
「わたし…クビでしょうか」
「大丈夫よ」
苦笑してから、私が扉を開けると、ミゲルは先程の状態のまま、廊下に立っていた。
「おい、いつまで寝ているつもりだ? それに、さっきのメイドはどうなってるんだよ」
「あなたが怖い顔をしてるからでしょう。それから、何の用ですか? 私の顔なんて、見たくないんじゃなかったでしたっけ?」
「何だよ、その態度は…。昨日とはまるで別人じゃないか?」
ミゲルは眉を寄せて、小柄であるルキアの姿を見下ろして言った。
そう。
ミゲルくん。
君の言ってる事は間違ってない。
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