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28 何の事ですの? ご存知ありません?
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その時、私の分のお茶が運ばれてきたので、運んでくれたメイドに礼を言うと、少し、驚いた様な表情をしたけれど、軽く一礼して、その場を去っていった。
もしかしたら、この家のメイドは、ププルス侯爵令嬢からお礼を言われた事がないのかもしれない。
メイドはそういうお仕事だろうけど、何かをしてもらっているのだから、感謝の気持ちは持たないといけないと思うんだけど、貴族はそんな事を考えないものなのかな。
もちろん、全ての貴族が、っていうわけではないだろうけど。
感謝できない人は、自分がやった事がないから、苦労がわからないって事なのかなぁ。
「ミゲル様と結婚したいのは山々ですわ。まあ、その事については今はおいておく事にしましょう」
「話をおいておかなくてもいいんじゃない?」
話を変えようとしたププルス侯爵令嬢に対し、今度はロゼッタ様がお相手してくれる。
「私もミゲル様には困っているのよ。うちの次男、ザックを目の敵にしているようだから」
ふぅと、ロゼッタ様が小さく息を吐くと、ププルス侯爵令嬢とミレン様とエレン様、三人は顔を見合わせた。
そしてその後、ロゼッタ様にではなく、ププルス侯爵令嬢が私に向かって言う。
「そう言われてみれば、ザック様とミゲル様が、レイング伯爵令嬢を奪い合っているというお話を聞きましたが、本当の話ですの?」
「奪い合っているというのは大袈裟かもしれませんが、どうやら、そうみたいです。ミゲル様に対して感じる気持ちは迷惑しかないですけれど」
「ザック様の事がお好きなんですか?」
ププルス侯爵令嬢は身を乗り出して聞いてくるので、素直な気持ちを答える。
「ミゲル様とザック様なら、確実にザック様ですよね。ミゲル様は顔だけですもの」
「何ですって!?」
「ちなみに顔もザック様の方が好みですわ」
聞き返してきたププルス侯爵令嬢に笑顔で答えた。
ルキアはどうかわからないけど、私はザック様の方が好みだ。
これに関しては人の好みだからどうしようもない。
「ザック様も素敵かもしれませんが、ミゲル様だって素敵ですわよ!」
「そうよ! ミゲル様の魅力がわからないなんて!」
ミレン様とエレン様がここぞとばかりに攻撃してきたけれど、たぶん、それは悪手だよ。
「という事は、ザック様よりもミゲル様の方が魅力があると?」
「もちろんです!」
「人の好みがありますから、どうこうは言えませんけれど、その場での判断が出来る様になった方がよろしいかと思われますわ」
「な、何の事ですの?」
双子は理解できないようなので、私が紹介して差し上げる。
「こちらにいらっしゃる方をご存知ありません?」
ロゼッタ様を手で示すと、ロゼッタ様はうふふと笑いながら、双子に対して自己紹介した。
「まだ名乗っていなかったみたいね。ごめんなさい。私は、ロゼッタと申します。夫はトルマリア公爵よ。それから息子が2人いて、長男はザラス、次男はザックというの」
「…!!」
双子は思わず顔を見合わせた後、自分達がまずかった事を言ってしまった事に気が付いた様だった。
「私はもちろん、存じております。あの、サラウラ侯爵令嬢、ザック様はトルマリア公爵家の令息でいらっしゃる事を知っていて、先程の話をされていたのでしょうか? ああ、そんな事はないですわよね? だって、ロゼッタ様の事を知らないわけないですものね?」
「あら、ルキアさん。公爵夫人だけど、私は無名なのかもしれないわ。ごめんなさいね、サラウラ侯爵家の、ミレン様とエレン様。まさか、あなた方の妹のマリアン様の婚約者の母の私を知らないだなんて思わなかったものですから」
ロゼッタ様はまた、うふふと笑った。
そうだった。
マリアン様はザラス様の婚約者なんだから、異母姉妹とはいえ、双子がロゼッタ様の事を知らなかったら失礼な話になるよね。
とにかく、私もうふふと笑って、双子の方を見ると、双子はププルス侯爵令嬢に助けを求める様な視線を送った。
「申し訳ございません、トルマリア公爵夫人。彼女達はミゲル様を思うがあまり、興奮してしまったようですわ」
「そうなんです! 失礼な事を申し上げてしまい、申し訳ございませんでした」
「申し訳ございませんでした」
ミレン様の後にエレン様も頭を下げる。
「あら、気にしないでちょうだい。お二人の本音が聞けて良かったわ」
ロゼッタ様の圧は、隣に座っているだけなのに、すごく伝わってくる。
だから、その圧を向けられている双子は、まるで蛇に睨まれた蛙みたいな感じだろうな。
ただ、マリアン様を見ると、ぶるぶると震えていて、未来の公爵夫人が、これで大丈夫なのかと何だか心配になってくる。
私がどうこう言えるものでもないんだけど。
「えっと、で、ミゲル様についてのお話で、まだ、私に聞きたい事はありますか?」
ププルス侯爵令嬢に笑顔で私が話しかけると、彼女は顔を引き攣らせて首を横に振る。
「い、いいえ。今日のところは十分ですわ」
「あら、ご遠慮なさらずに。お答えできるものでしたら、お答えいたしますわよ?」
「今日はせっかくですし、ミゲル様以外のお話をしましょう!」
ププルス侯爵令嬢は無理矢理話題を打ち切り、メイドに指示をして、お茶菓子の追加を頼んだ。
お茶菓子なんかでごまかされないわよ。
なんて思ってたけど、お茶菓子はとっても美味しかった。
結局、ロゼッタ様の圧には誰も敵うはずもなく、ププルス侯爵家のお茶会は、ミゲラーにとっては完敗で終わった。
お開きの時間になったので、ロゼッタ様に挨拶して、帰る前にお手洗いを借りてから、ププルス侯爵令嬢に挨拶すると、不機嫌そうな顔で「また、ご縁がありましたら来て下さいね」と言われた。
たぶん、もう呼ばれないと思う。
帰ろうと思い、メイドに案内されて歩いていくと、エントランスホールにマリアン様の姿が見えた。
声を掛けようかと思ったら、双子が近付いていくのが見えた。
どうしようか迷っていると、双子がマリアン様に話しかける。
「あなた、本当に役に立たないわね」
「今日は何していたの? 額をぶつけただけじゃないの」
「ご、ご、ご…めんなさい…」
ミレン様とエレン様に責められて、マリアン様は泣き出しそうな声を出した。
人の家だから、あまり揉めたくないんだけどなあ。
かといって、このまま見てるのもなんだし。
「ちょっと、家に帰る前にお仕置きよ」
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
マリアン様が泣きながら抵抗するけれど、2人の手により、外に引きずり出される。
私を案内してくれたメイドは、先程の光景を見なかったものとして、3人が出て行った扉を開けてくれた。
すると、ポーチに先程の3人がいた。
「あら、お帰りにならないんですの?」
このままでは帰る事も出来ないので、笑顔でマリアン様達に近づきながら、声を掛けた。
もしかしたら、この家のメイドは、ププルス侯爵令嬢からお礼を言われた事がないのかもしれない。
メイドはそういうお仕事だろうけど、何かをしてもらっているのだから、感謝の気持ちは持たないといけないと思うんだけど、貴族はそんな事を考えないものなのかな。
もちろん、全ての貴族が、っていうわけではないだろうけど。
感謝できない人は、自分がやった事がないから、苦労がわからないって事なのかなぁ。
「ミゲル様と結婚したいのは山々ですわ。まあ、その事については今はおいておく事にしましょう」
「話をおいておかなくてもいいんじゃない?」
話を変えようとしたププルス侯爵令嬢に対し、今度はロゼッタ様がお相手してくれる。
「私もミゲル様には困っているのよ。うちの次男、ザックを目の敵にしているようだから」
ふぅと、ロゼッタ様が小さく息を吐くと、ププルス侯爵令嬢とミレン様とエレン様、三人は顔を見合わせた。
そしてその後、ロゼッタ様にではなく、ププルス侯爵令嬢が私に向かって言う。
「そう言われてみれば、ザック様とミゲル様が、レイング伯爵令嬢を奪い合っているというお話を聞きましたが、本当の話ですの?」
「奪い合っているというのは大袈裟かもしれませんが、どうやら、そうみたいです。ミゲル様に対して感じる気持ちは迷惑しかないですけれど」
「ザック様の事がお好きなんですか?」
ププルス侯爵令嬢は身を乗り出して聞いてくるので、素直な気持ちを答える。
「ミゲル様とザック様なら、確実にザック様ですよね。ミゲル様は顔だけですもの」
「何ですって!?」
「ちなみに顔もザック様の方が好みですわ」
聞き返してきたププルス侯爵令嬢に笑顔で答えた。
ルキアはどうかわからないけど、私はザック様の方が好みだ。
これに関しては人の好みだからどうしようもない。
「ザック様も素敵かもしれませんが、ミゲル様だって素敵ですわよ!」
「そうよ! ミゲル様の魅力がわからないなんて!」
ミレン様とエレン様がここぞとばかりに攻撃してきたけれど、たぶん、それは悪手だよ。
「という事は、ザック様よりもミゲル様の方が魅力があると?」
「もちろんです!」
「人の好みがありますから、どうこうは言えませんけれど、その場での判断が出来る様になった方がよろしいかと思われますわ」
「な、何の事ですの?」
双子は理解できないようなので、私が紹介して差し上げる。
「こちらにいらっしゃる方をご存知ありません?」
ロゼッタ様を手で示すと、ロゼッタ様はうふふと笑いながら、双子に対して自己紹介した。
「まだ名乗っていなかったみたいね。ごめんなさい。私は、ロゼッタと申します。夫はトルマリア公爵よ。それから息子が2人いて、長男はザラス、次男はザックというの」
「…!!」
双子は思わず顔を見合わせた後、自分達がまずかった事を言ってしまった事に気が付いた様だった。
「私はもちろん、存じております。あの、サラウラ侯爵令嬢、ザック様はトルマリア公爵家の令息でいらっしゃる事を知っていて、先程の話をされていたのでしょうか? ああ、そんな事はないですわよね? だって、ロゼッタ様の事を知らないわけないですものね?」
「あら、ルキアさん。公爵夫人だけど、私は無名なのかもしれないわ。ごめんなさいね、サラウラ侯爵家の、ミレン様とエレン様。まさか、あなた方の妹のマリアン様の婚約者の母の私を知らないだなんて思わなかったものですから」
ロゼッタ様はまた、うふふと笑った。
そうだった。
マリアン様はザラス様の婚約者なんだから、異母姉妹とはいえ、双子がロゼッタ様の事を知らなかったら失礼な話になるよね。
とにかく、私もうふふと笑って、双子の方を見ると、双子はププルス侯爵令嬢に助けを求める様な視線を送った。
「申し訳ございません、トルマリア公爵夫人。彼女達はミゲル様を思うがあまり、興奮してしまったようですわ」
「そうなんです! 失礼な事を申し上げてしまい、申し訳ございませんでした」
「申し訳ございませんでした」
ミレン様の後にエレン様も頭を下げる。
「あら、気にしないでちょうだい。お二人の本音が聞けて良かったわ」
ロゼッタ様の圧は、隣に座っているだけなのに、すごく伝わってくる。
だから、その圧を向けられている双子は、まるで蛇に睨まれた蛙みたいな感じだろうな。
ただ、マリアン様を見ると、ぶるぶると震えていて、未来の公爵夫人が、これで大丈夫なのかと何だか心配になってくる。
私がどうこう言えるものでもないんだけど。
「えっと、で、ミゲル様についてのお話で、まだ、私に聞きたい事はありますか?」
ププルス侯爵令嬢に笑顔で私が話しかけると、彼女は顔を引き攣らせて首を横に振る。
「い、いいえ。今日のところは十分ですわ」
「あら、ご遠慮なさらずに。お答えできるものでしたら、お答えいたしますわよ?」
「今日はせっかくですし、ミゲル様以外のお話をしましょう!」
ププルス侯爵令嬢は無理矢理話題を打ち切り、メイドに指示をして、お茶菓子の追加を頼んだ。
お茶菓子なんかでごまかされないわよ。
なんて思ってたけど、お茶菓子はとっても美味しかった。
結局、ロゼッタ様の圧には誰も敵うはずもなく、ププルス侯爵家のお茶会は、ミゲラーにとっては完敗で終わった。
お開きの時間になったので、ロゼッタ様に挨拶して、帰る前にお手洗いを借りてから、ププルス侯爵令嬢に挨拶すると、不機嫌そうな顔で「また、ご縁がありましたら来て下さいね」と言われた。
たぶん、もう呼ばれないと思う。
帰ろうと思い、メイドに案内されて歩いていくと、エントランスホールにマリアン様の姿が見えた。
声を掛けようかと思ったら、双子が近付いていくのが見えた。
どうしようか迷っていると、双子がマリアン様に話しかける。
「あなた、本当に役に立たないわね」
「今日は何していたの? 額をぶつけただけじゃないの」
「ご、ご、ご…めんなさい…」
ミレン様とエレン様に責められて、マリアン様は泣き出しそうな声を出した。
人の家だから、あまり揉めたくないんだけどなあ。
かといって、このまま見てるのもなんだし。
「ちょっと、家に帰る前にお仕置きよ」
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
マリアン様が泣きながら抵抗するけれど、2人の手により、外に引きずり出される。
私を案内してくれたメイドは、先程の光景を見なかったものとして、3人が出て行った扉を開けてくれた。
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