32 / 34
32 何も出来ないくせに? これくらいは出来ますわよ?
しおりを挟む
そして、二週間後、ザック様と私は、とある伯爵家の夜会に出席していた。
結局、未だに私はザック様との婚約を保留にしたままで、お父様には何を迷う事があるのかと言われてしまっている。
いや、でも迷うでしょ。
ルキアにいつか返さないといけない体なんだから。
たぶん、ザック様の事をルキアは嫌っていないと思う。
だけど、ルキアの好きなタイプはミゲルだったんだよなあ…。
ルキアの為を思えば、ミゲルを選ばないといけなくなるんだけど、私はそれは絶対に嫌…。
あんな男と復縁だなんてありえん。
というか、ミゲルの言葉でショックを受けて、死のうと思ったくらいなんだから、ルキアもさすがによりを戻したくはないよね?
いや、ルキアの性格だから、どうかわからないんだよなぁ。
「考え事をしてるのか?」
「…申し訳ございません」
「謝らなくてもいい」
「ありがとうございます」
ザック様の横顔を見てみると、整った顔立ちをしているし、ミゲルに負けていないと思うから、私としては、ザック様派なんだけどなあ…。
ただ、ミゲラーみたいな人もいるから、一概にザック様一択とは言えないし難しいところ。
ザック様は公爵令息だし、お父様やお兄様のお仕事の手伝いをしているからか、色んな貴族から声をかけられている。
私も女伯爵になるのなら、自分から話しかけていかないと駄目なんだろうけど、まだ、お父様から認められていなくて、仕事を任せてもらえない。
お父様も、また、中身がルキアに戻った時の事を考えているのかもしれない。
昔のルキアが女伯爵になったとしたら、たちまち家が潰れそう。
お手洗いに行きたくなったので、化粧を直してくると伝えると、ザック様は、今いる場所で待っていると言ってくれた。
急いで、お手洗いに向かっていると、男性用のお手洗いから出てきた若い男達が私を見て足を止めた。
「レイング伯爵令嬢だよな?」
「……そうですけど」
二人の内の一人は酔っ払っているのか顔が赤くて、足取りもフラフラしている。
パートナーがいるのかどうかはわからないけど、いたとしたら、こんな奴のパートナーになって、お気の毒としか言いようがない。
酒は飲んでも飲まれるな。
と日本では聞いた事があるけれど、そっち系の話なのか、それとも、気が大きくなっちゃってるだけなのか、よくはわからないけど、公爵令息のパートナーに絡んでくるのだから、賢い人間ではなさそう。
「本当に伯爵になる気か? ただでさえ女が、そんな出しゃばった事を言うだけでも腹が立つのに、お前みたいな女が伯爵になるだなんて、地に足をつけて物を言え!」
「お好きな様に言って下さい。あなたにどうこう言われる筋合いはありませんから」
こっちは、お手洗いに行きたい。
とても、我慢している。
だから、会話を終えて、女性用のお手洗いに入ろうとした時、肩をつかんで止められた。
「おい、話は終わってないぞ」
「私の中では終わりました。それから、気軽に触らないで下さい」
「偉そうに!」
「おい、やめとけって! 相手は」
「うるさいな、何をビビってんだよ!」
一緒にいた男性が止めようとしたけど、酔っぱらいのひょろりとした体型の男は叫ぶ。
「俺はこんな女、怖くないからな。ほら、伯爵になんてなりませんて言えよ!」
「いいかげんにしてくれませんか?」
「あ? なりませんって言えば許してやるよ」
イライラする。
ここ最近は特に、色々と悩んでいたから余計に精神が不安定だった。
調子が出ない。
…そうか。
調子が出ない理由は私らしくないからだ。
「ちょっと一緒に来ていただけます?」
トイレに行きたい!
だけど、大人としてやらないといけない事がある!
「あなたのお名前は? おいくつ?」
「伯爵家のバロンだよ。20歳だよ。何か文句あるか?」
パーティー会場に戻りながら、情報を聞き出す。
「バロン伯爵家の令息? パートナーは?」
「そうだよ。パートナーは会場にいる。だから何か文句あるかって言ってるだろ!」
「おい、やめろって!」
友人の方は私が何をしでかすかわからないと警戒しているのか、必死にバロン伯爵令息を止めようとしているけど、彼の言葉は止まらない。
「公爵家の力を借りないと何も出来ないくせに」
「何も出来ないとは失礼ですわ。これくらいは出来ますわよ?」
パーティー会場内に入り、大きく息を吸ってから叫ぶ。
「黒のタキシードを着た、バロン伯爵令息と仰る、20歳の大きなお子様がパートナーの方と、はぐれてしまいました。こちらでお預かりしておりますので、お引取り願えませんでしょうか? 繰り返します、黒のタキシードを着た、バロン伯爵令息と仰る大きなお子様が」
「や、やめろ!」
「何も出来ないというので、まずは、あなたのパートナー探しを」
「そんな事、頼んでない!」
バロン伯爵令息が私に向かって、手を出そうとした時だった。
ザック様が現れ、彼が伸ばしてきた腕を掴むと、もう片方の腕で、バロン伯爵令息の首を掴んだ。
「僕のパートナーに手荒な真似をするな」
「……っ! も、申し訳ございませんでした!」
私の叫び声で、ザック様は気が付いてくれたらしい。
そして、ザック様とバロン伯爵令息とのやり取りで、一斉に、私達に注目が集まった。
バロン伯爵令息は酔いが一気に冷めたのか、涙目でザック様に謝る。
「本当に申し訳ございません…。もう、二度とこんな事は致しませんから…」
「当たり前だ。で、この、大きなお子様のパートナーは?」
ザック様が手をはなし、周りを見回すと、一人の女性が震えながら、ザック様の前に現れた。
ザック様は女性を一瞥してから口を開く。
「君のせいだとは言わないが、酒を飲んだら分別のつかなくなる人間に、こんな場所で酒を飲ませない方がいい。君が頼んでも飲む様なら、それまでの男だ。大きなお世話かもしれないが、冷静に判断するんだな」
ザック様はそう言うと、私の手を取って歩き出す。
「帰るぞ」
「あの、ザック様、ありがとうございました」
「気にするな」
「あの、ザック様」
「何だ?」
「お手洗いに行きたいです!」
私の言葉を聞いたザック様は、目を丸くして立ち止まった。
いや、だって、あの男のせいでお手洗いに行けてないんです!
そう言おうとした時、ザック様が笑った。
「やっと、君らしくなったな」
「……」
様子がおかしい私を心配してくれていたんだなぁ。
ザック様の優しさを感じて、心が温かくなった。
「大丈夫です。吹っ切れましたから。ウジウジしてるのは性に合いません! そして、生理現象も我慢できませんので、申し訳ございませんが、失礼します! すぐに戻りますから!」
「僕の事は気にするな。早く行くんだ。我慢は良くない」
ザック様に見守られながら、私はお手洗いへと急いだのだった。
結局、未だに私はザック様との婚約を保留にしたままで、お父様には何を迷う事があるのかと言われてしまっている。
いや、でも迷うでしょ。
ルキアにいつか返さないといけない体なんだから。
たぶん、ザック様の事をルキアは嫌っていないと思う。
だけど、ルキアの好きなタイプはミゲルだったんだよなあ…。
ルキアの為を思えば、ミゲルを選ばないといけなくなるんだけど、私はそれは絶対に嫌…。
あんな男と復縁だなんてありえん。
というか、ミゲルの言葉でショックを受けて、死のうと思ったくらいなんだから、ルキアもさすがによりを戻したくはないよね?
いや、ルキアの性格だから、どうかわからないんだよなぁ。
「考え事をしてるのか?」
「…申し訳ございません」
「謝らなくてもいい」
「ありがとうございます」
ザック様の横顔を見てみると、整った顔立ちをしているし、ミゲルに負けていないと思うから、私としては、ザック様派なんだけどなあ…。
ただ、ミゲラーみたいな人もいるから、一概にザック様一択とは言えないし難しいところ。
ザック様は公爵令息だし、お父様やお兄様のお仕事の手伝いをしているからか、色んな貴族から声をかけられている。
私も女伯爵になるのなら、自分から話しかけていかないと駄目なんだろうけど、まだ、お父様から認められていなくて、仕事を任せてもらえない。
お父様も、また、中身がルキアに戻った時の事を考えているのかもしれない。
昔のルキアが女伯爵になったとしたら、たちまち家が潰れそう。
お手洗いに行きたくなったので、化粧を直してくると伝えると、ザック様は、今いる場所で待っていると言ってくれた。
急いで、お手洗いに向かっていると、男性用のお手洗いから出てきた若い男達が私を見て足を止めた。
「レイング伯爵令嬢だよな?」
「……そうですけど」
二人の内の一人は酔っ払っているのか顔が赤くて、足取りもフラフラしている。
パートナーがいるのかどうかはわからないけど、いたとしたら、こんな奴のパートナーになって、お気の毒としか言いようがない。
酒は飲んでも飲まれるな。
と日本では聞いた事があるけれど、そっち系の話なのか、それとも、気が大きくなっちゃってるだけなのか、よくはわからないけど、公爵令息のパートナーに絡んでくるのだから、賢い人間ではなさそう。
「本当に伯爵になる気か? ただでさえ女が、そんな出しゃばった事を言うだけでも腹が立つのに、お前みたいな女が伯爵になるだなんて、地に足をつけて物を言え!」
「お好きな様に言って下さい。あなたにどうこう言われる筋合いはありませんから」
こっちは、お手洗いに行きたい。
とても、我慢している。
だから、会話を終えて、女性用のお手洗いに入ろうとした時、肩をつかんで止められた。
「おい、話は終わってないぞ」
「私の中では終わりました。それから、気軽に触らないで下さい」
「偉そうに!」
「おい、やめとけって! 相手は」
「うるさいな、何をビビってんだよ!」
一緒にいた男性が止めようとしたけど、酔っぱらいのひょろりとした体型の男は叫ぶ。
「俺はこんな女、怖くないからな。ほら、伯爵になんてなりませんて言えよ!」
「いいかげんにしてくれませんか?」
「あ? なりませんって言えば許してやるよ」
イライラする。
ここ最近は特に、色々と悩んでいたから余計に精神が不安定だった。
調子が出ない。
…そうか。
調子が出ない理由は私らしくないからだ。
「ちょっと一緒に来ていただけます?」
トイレに行きたい!
だけど、大人としてやらないといけない事がある!
「あなたのお名前は? おいくつ?」
「伯爵家のバロンだよ。20歳だよ。何か文句あるか?」
パーティー会場に戻りながら、情報を聞き出す。
「バロン伯爵家の令息? パートナーは?」
「そうだよ。パートナーは会場にいる。だから何か文句あるかって言ってるだろ!」
「おい、やめろって!」
友人の方は私が何をしでかすかわからないと警戒しているのか、必死にバロン伯爵令息を止めようとしているけど、彼の言葉は止まらない。
「公爵家の力を借りないと何も出来ないくせに」
「何も出来ないとは失礼ですわ。これくらいは出来ますわよ?」
パーティー会場内に入り、大きく息を吸ってから叫ぶ。
「黒のタキシードを着た、バロン伯爵令息と仰る、20歳の大きなお子様がパートナーの方と、はぐれてしまいました。こちらでお預かりしておりますので、お引取り願えませんでしょうか? 繰り返します、黒のタキシードを着た、バロン伯爵令息と仰る大きなお子様が」
「や、やめろ!」
「何も出来ないというので、まずは、あなたのパートナー探しを」
「そんな事、頼んでない!」
バロン伯爵令息が私に向かって、手を出そうとした時だった。
ザック様が現れ、彼が伸ばしてきた腕を掴むと、もう片方の腕で、バロン伯爵令息の首を掴んだ。
「僕のパートナーに手荒な真似をするな」
「……っ! も、申し訳ございませんでした!」
私の叫び声で、ザック様は気が付いてくれたらしい。
そして、ザック様とバロン伯爵令息とのやり取りで、一斉に、私達に注目が集まった。
バロン伯爵令息は酔いが一気に冷めたのか、涙目でザック様に謝る。
「本当に申し訳ございません…。もう、二度とこんな事は致しませんから…」
「当たり前だ。で、この、大きなお子様のパートナーは?」
ザック様が手をはなし、周りを見回すと、一人の女性が震えながら、ザック様の前に現れた。
ザック様は女性を一瞥してから口を開く。
「君のせいだとは言わないが、酒を飲んだら分別のつかなくなる人間に、こんな場所で酒を飲ませない方がいい。君が頼んでも飲む様なら、それまでの男だ。大きなお世話かもしれないが、冷静に判断するんだな」
ザック様はそう言うと、私の手を取って歩き出す。
「帰るぞ」
「あの、ザック様、ありがとうございました」
「気にするな」
「あの、ザック様」
「何だ?」
「お手洗いに行きたいです!」
私の言葉を聞いたザック様は、目を丸くして立ち止まった。
いや、だって、あの男のせいでお手洗いに行けてないんです!
そう言おうとした時、ザック様が笑った。
「やっと、君らしくなったな」
「……」
様子がおかしい私を心配してくれていたんだなぁ。
ザック様の優しさを感じて、心が温かくなった。
「大丈夫です。吹っ切れましたから。ウジウジしてるのは性に合いません! そして、生理現象も我慢できませんので、申し訳ございませんが、失礼します! すぐに戻りますから!」
「僕の事は気にするな。早く行くんだ。我慢は良くない」
ザック様に見守られながら、私はお手洗いへと急いだのだった。
30
あなたにおすすめの小説
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました
ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。
このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。
そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。
ーーーー
若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。
作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。
完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。
第一章 無計画な婚約破棄
第二章 無計画な白い結婚
第三章 無計画な告白
第四章 無計画なプロポーズ
第五章 無計画な真実の愛
エピローグ
姉の婚約者であるはずの第一王子に「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」と言われました。
ふまさ
恋愛
「お前はとても優秀だそうだから、婚約者にしてやってもいい」
ある日の休日。家族に疎まれ、蔑まれながら育ったマイラに、第一王子であり、姉の婚約者であるはずのヘイデンがそう告げた。その隣で、姉のパメラが偉そうにふんぞりかえる。
「ぞんぶんに感謝してよ、マイラ。あたしがヘイデン殿下に口添えしたんだから!」
一方的に条件を押し付けられ、望まぬまま、第一王子の婚約者となったマイラは、それでもつかの間の安らぎを手に入れ、歓喜する。
だって。
──これ以上の幸せがあるなんて、知らなかったから。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
【完結】婚約破棄に感謝します。貴方のおかげで今私は幸せです
コトミ
恋愛
もうほとんど結婚は決まっているようなものだった。これほど唐突な婚約破棄は中々ない。そのためアンナはその瞬間酷く困惑していた。婚約者であったエリックは優秀な人間であった。公爵家の次男で眉目秀麗。おまけに騎士団の次期団長を言い渡されるほど強い。そんな彼の隣には自分よりも胸が大きく、顔が整っている女性が座っている。一つ一つに品があり、瞬きをする瞬間に長い睫毛が揺れ動いた。勝てる気がしない上に、張り合う気も失せていた。エリックに何とここぞとばかりに罵られた。今まで募っていた鬱憤を晴らすように。そしてアンナは婚約者の取り合いという女の闘いから速やかにその場を退いた。その後エリックは意中の相手と結婚し侯爵となった。しかしながら次期騎士団団長という命は解かれた。アンナと婚約破棄をした途端に負け知らずだった剣の腕は衰え、誰にも勝てなくなった。
【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。
やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。
落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。
毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。
様子がおかしい青年に気づく。
ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。
ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
最終話まで予約投稿済です。
次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。
ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。
楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる