愛しているなら何でもできる? どの口が言うのですか

風見ゆうみ

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20.5 妹の誓い(ミシェル視点)

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 援助を打ち切られたわたしは、最初はお父様たちがこっそり助けてくれると思っていた。
 でも、無理だった。
 フェリックス様からエルンベル伯爵家を見張るために雇われた女性が、私と両親との接触を阻んだからだ。
 どうして、そんな意地悪をするのかわからない。

 もしかして、フェリックス様はわたしに試練を与えているのかしら。
 これを乗り越えれば、フェリックス様はわたしを好きになってくれると思ってもいいの? 
 ……そうよね。
 これくらいの困難を乗り越えなければ公爵夫人にはなれないわ。
 フェリックス様がお姉様に未練があるなんてことはありえない。
 ううん。
 あってはならないのよ。
 それなら、やっぱり、わたしに試練を与えてるんだわ。

「まずは離婚よ」

 わたしが離婚しないと、フェリックス様とは何も始まらない。
 そうだわ。
 だから、フェリックス様はサンニ子爵家に戻れと言ったんじゃないかしら。
 早く離婚してほしいという意味ね。

 きっとそうよ。
 そうじゃなくちゃおかしい。

 フェリックス様は難しい性格でもあるし、素直に言えなかっただけだわ。
 彼が言っていた目的というのはわたしと結婚することで間違いない。

 それ以外に何があると言うの?

 わたしがサンニ子爵邸に戻ると、使用人たちは笑顔で出迎えてくれた。
 でも、仕事で笑っているだけに違いない。

「デイクスはどこにいるのかしら」
「執務室で仕事をしておられます。ここ最近は働き詰めでお体が心配です」

 フットマンがわたしの荷物を部屋に運んでいる間、メイドがわたしを執務室まで案内してくれながら言った。

「仕事を頑張っているのなら良いじゃないの」
「ですが、過労になっては大変です」

 メイドは心配そうにしているけれど、この時のわたしはこう思った。

 そうよ。
 過労死という手もあるんじゃない?
 過労死してくれれば、わたしは罪に問われることもなく離婚できるわ!

 円満離婚できれは一番良いけれど、過労死も悪くないわね!
 明るい気持ちになったところで、デイクスの執務室に着いた。

 メイドが扉をノックして、わたしが帰ってきたことを告げると、入室の許可が下りた。

「お久しぶりね、デイクス」
「久しぶりだね。帰ってきてくれてありがとう」

 デイクスは書類から目も上げずに言った。
 怒っているのかしら。
 まあ、いいわ。
 とりあえず、駄目元で話をしてみましょう。

「そのことなんだけど、デイクス、わたしはあなたと離婚したいの」
「……無理だよ。君が僕と離婚できるようになる時は、君が家族以外の誰からも必要とされなくなった時だ。今の君には利用価値があるから離婚はしない」
「……どういうこと?」

 聞き返したけれど、デイクスはそれ以上は話をしてくれなかった。



*****



 そうこうしている内に、お姉様とロン様の裁判の日がやって来た。
 裁判所に出廷したロン様の顔色は悪く、妻に逃げられて憔悴しきっている感じが出ていて良かった。

 ロン様のお母様がお姉様にお茶をかけたというから、この裁判はロン様が負けるでしょう。

 傍聴席に座っているフェリックス様を見つめ、心の中で誓う。

 この裁判の判決がどうなろうと関係ない。
 浮気をしていないということだけは証明してみせるわ。

 だって、わたしは本当にフェリックス様のことが好きなんだから。
 はしていないもの。
 
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