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20 夫の過去の行動
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ミシェルとロン様が浮気を否定しているという話を聞いたのは、パトロア様が帰って三日後のことだった。
「今更、そんなことを言っても無駄ですわよね」
教えてくれたミオ様は眉根を寄せて不満そうにしているので頷く。
「裁判中に無実を訴えるつもりかもしれませんが、パトロア様の件がありますし問題はないと思います。でも、控訴されても棄却してもらえるように詰めていきたいとは思っています」
ミシェルたちはパトロア様が私に何をしたか知らない。
パトロア様が言わなければ、裁判の日になってやっと知ることになるでしょう。
でも、さすがにロン様には話すわよね。
そうなると、向こうの交渉代理人であるブランドン先生に連絡がいくはずだから、向こうはどういう手を取ってくるのかしら。
トーマツ先生に連絡をして、対策を講じなくちゃいけないわ。
*****
それから2日後、フェリックス様がエイト公爵邸に帰って来た。
ミオ様と一緒にエントランスホールでお出迎えをして、早速、どうだったのか聞いてみた。
「両親は何か言っていましたか」
「手紙の件は認めてきたが、当然の権利だと言ってきた。まあ、あの頃のシェリルは14歳だったから、保護者の権利を主張されたら何とも言えないところだ。でも、見せなければいいだけで連絡が来ていることを言わないこともどうかと思うがな」
「私のためではなく、ミシェルのために手紙をないものにしたのですから、保護者の権利だなんて正直、納得はいきませんが、もう過去のことですから」
そこまで言って、慌てて頭を下げる。
「あの、フェリックス様には申し訳ないことをしてしまったと思っています」
「……そうだな。俺のことを信じてほしかった、なんて言いたいところだが、あの頃のシェリルにはどうにもできないだろ」
「お兄様、シェリルと呼んではいけません。昔のようにそう呼んで良くなるのは離婚後ですわ」
ミオ様に怒られたフェリックス様は苦虫を噛み潰したような顔になった。
でも、素直に謝ってくる。
「悪かった」
「いいえ。私も神経質になりすぎている部分はあると思います。でも」
「片方だけの浮気だから離婚が認められる可能性が高いけど、そうじゃなかったらってことだよな」
「ロン様は私とフェリックス様の昔のことを知っています。今、エイト公爵邸にお世話になっていることもフェリックス様と関係があるからだと言ってくる可能性があります」
「わかってるよ」
フェリックス様は頷くと、話題を変えてくる。
「君の妹はサンニ子爵家に戻らざるを得なくなった。今頃は夫婦喧嘩で忙しいかもしれないな」
「デイクスに離婚しろと迫るのでしょうね」
「そうなるとサンニ子爵令息は彼女たちの浮気を証言すると脅すだろうな。彼にしてみれば、自分が一番悪いにしても、自分をあんな目に遭わせる原因を作ったのは彼女だから恨む気持ちは強いだろう」
「あんな目に遭って良かったとは思いませんが、あのことがミシェルの足を引っ張ることになったのは不幸中の幸いです」
「……そういえば、君の家族は裁判に行くと言ってたぞ」
険しい顔をしているフェリックス様に苦笑する。
「私に離婚されたくないでしょうから必死でしょうね。ミシェルは向こうの証人として来るつもりでしょう」
この国の裁判は基本は交渉代理人同士が法廷で話をすることが多い。
でも、希望して裁判長から許可を貰えれば当事者同士で会話もできる。
和解なんて無理だから、ミシェルともロン様とも裁判で決着を付ける。
意気込んでいると、フェリックス様が話し始めた。
「それから、勝手ながら向こうで色々と調べてきた」
「……どんなことをでしょうか」
尋ねると、彼の後ろに立っていたフェリックス様の側近が鞄から書類の束を取り出した。
「リグマ伯爵が伯爵令息だった時の周りの証言です」
差し出された書類を受け取って目を通す。
そこにはロン様が私に迷惑行為をしていたという多くの証言だった。
しかも、それは私が気づきにくいものだった。
エルンベル伯爵家から出たゴミを全て受け取り、その中から私が出したりものらしきゴミを探して取り出していた。
そして、それをコレクションにしているという証言だった。
「最悪だわ」
呟いたあと、フェリックス様にお礼を言う。
「ありがとうございます。これも有利な証言になると思います」
「でも、シェリル、これってもしかしたら、今でもリグマ伯爵邸にあるかもしれなくってよ。そう思だけで私は気持ち悪いですわ」
ミオ様が眉尻を下げて言った。
気持ち悪いと思うのは私も同じだ。
裁判でこの話をすれば、全部処分するようにと判決内容に加えてもらえそうな気がするわ。
この話をすぐにでも伝えたかったので、トーマツ先生にエイト公爵邸に来てもらうようにお願いした。
※
次の話はミシェル視点です。
「今更、そんなことを言っても無駄ですわよね」
教えてくれたミオ様は眉根を寄せて不満そうにしているので頷く。
「裁判中に無実を訴えるつもりかもしれませんが、パトロア様の件がありますし問題はないと思います。でも、控訴されても棄却してもらえるように詰めていきたいとは思っています」
ミシェルたちはパトロア様が私に何をしたか知らない。
パトロア様が言わなければ、裁判の日になってやっと知ることになるでしょう。
でも、さすがにロン様には話すわよね。
そうなると、向こうの交渉代理人であるブランドン先生に連絡がいくはずだから、向こうはどういう手を取ってくるのかしら。
トーマツ先生に連絡をして、対策を講じなくちゃいけないわ。
*****
それから2日後、フェリックス様がエイト公爵邸に帰って来た。
ミオ様と一緒にエントランスホールでお出迎えをして、早速、どうだったのか聞いてみた。
「両親は何か言っていましたか」
「手紙の件は認めてきたが、当然の権利だと言ってきた。まあ、あの頃のシェリルは14歳だったから、保護者の権利を主張されたら何とも言えないところだ。でも、見せなければいいだけで連絡が来ていることを言わないこともどうかと思うがな」
「私のためではなく、ミシェルのために手紙をないものにしたのですから、保護者の権利だなんて正直、納得はいきませんが、もう過去のことですから」
そこまで言って、慌てて頭を下げる。
「あの、フェリックス様には申し訳ないことをしてしまったと思っています」
「……そうだな。俺のことを信じてほしかった、なんて言いたいところだが、あの頃のシェリルにはどうにもできないだろ」
「お兄様、シェリルと呼んではいけません。昔のようにそう呼んで良くなるのは離婚後ですわ」
ミオ様に怒られたフェリックス様は苦虫を噛み潰したような顔になった。
でも、素直に謝ってくる。
「悪かった」
「いいえ。私も神経質になりすぎている部分はあると思います。でも」
「片方だけの浮気だから離婚が認められる可能性が高いけど、そうじゃなかったらってことだよな」
「ロン様は私とフェリックス様の昔のことを知っています。今、エイト公爵邸にお世話になっていることもフェリックス様と関係があるからだと言ってくる可能性があります」
「わかってるよ」
フェリックス様は頷くと、話題を変えてくる。
「君の妹はサンニ子爵家に戻らざるを得なくなった。今頃は夫婦喧嘩で忙しいかもしれないな」
「デイクスに離婚しろと迫るのでしょうね」
「そうなるとサンニ子爵令息は彼女たちの浮気を証言すると脅すだろうな。彼にしてみれば、自分が一番悪いにしても、自分をあんな目に遭わせる原因を作ったのは彼女だから恨む気持ちは強いだろう」
「あんな目に遭って良かったとは思いませんが、あのことがミシェルの足を引っ張ることになったのは不幸中の幸いです」
「……そういえば、君の家族は裁判に行くと言ってたぞ」
険しい顔をしているフェリックス様に苦笑する。
「私に離婚されたくないでしょうから必死でしょうね。ミシェルは向こうの証人として来るつもりでしょう」
この国の裁判は基本は交渉代理人同士が法廷で話をすることが多い。
でも、希望して裁判長から許可を貰えれば当事者同士で会話もできる。
和解なんて無理だから、ミシェルともロン様とも裁判で決着を付ける。
意気込んでいると、フェリックス様が話し始めた。
「それから、勝手ながら向こうで色々と調べてきた」
「……どんなことをでしょうか」
尋ねると、彼の後ろに立っていたフェリックス様の側近が鞄から書類の束を取り出した。
「リグマ伯爵が伯爵令息だった時の周りの証言です」
差し出された書類を受け取って目を通す。
そこにはロン様が私に迷惑行為をしていたという多くの証言だった。
しかも、それは私が気づきにくいものだった。
エルンベル伯爵家から出たゴミを全て受け取り、その中から私が出したりものらしきゴミを探して取り出していた。
そして、それをコレクションにしているという証言だった。
「最悪だわ」
呟いたあと、フェリックス様にお礼を言う。
「ありがとうございます。これも有利な証言になると思います」
「でも、シェリル、これってもしかしたら、今でもリグマ伯爵邸にあるかもしれなくってよ。そう思だけで私は気持ち悪いですわ」
ミオ様が眉尻を下げて言った。
気持ち悪いと思うのは私も同じだ。
裁判でこの話をすれば、全部処分するようにと判決内容に加えてもらえそうな気がするわ。
この話をすぐにでも伝えたかったので、トーマツ先生にエイト公爵邸に来てもらうようにお願いした。
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次の話はミシェル視点です。
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