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34 元妹の焦り
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ミシェルは私を睨むだけで何も言わない。
だから、話を続けさせてもらう。
「サウニ子爵家から連絡があったのですが、離婚届は提出しておくとのことでした」
「……え?」
「なんですって?」
「なんだって?」
流れる涙をそのままに口をぽかんと開けたミシェル、そして驚愕の表情を浮かべる元伯爵夫妻に伝える。
「言葉通りです。サウニ子爵令息はミシェルさんが離婚したがっているから離婚することにしたと言っておられましたよ」
「そんな! 噓よ! どうして今更!」
「嘘なんてついていません」
「ちょ、そんな……、ありえないわ」
ミシェルのピンク色の頬が白くなっていく。
「おめでとうございます、ミシェルさん。あなたには貴族の血が流れているのかもしれませんが、今日から立場は平民ですね」
笑顔を作って言うと、ミシェルは両頬を手で押さえて何度も首を横に振る。
「嘘……、わたしが平民だなんて、そんなの絶対に嘘よ!」
「私の話が信じられないというのでしたら、サウニ子爵家に戻って確認してみてくださいませ」
「言われなくてもそうします!」
ミシェルは慌てた様子で、ポーチの向こうに停まっている馬車に駆け寄っていく。
「ま、待ってミシェル!」
「そうだ、置いていかないでくれ」
慌てて元伯爵夫妻がミシェルを追いかけて、馬車に乗り込んでいった。
あれだけ揉めていたのに、緊急事態となると一緒に行動することを望むのね。
それはそれで良かった。
捕まるのは一人じゃない。
皆で仲良く捕まればいいわ。
雨はまだ降り続いている。
今のミシェルの感情はこんなものなのかしら。
そう思った時、雷鳴が轟いた。
*****
ミシェルたちが去っていくと、ドアマンによって扉が静かに閉められた。
「ミシェルたちはどうなるのかしら」
ミオ様に尋ねられたので苦笑して答える。
「予想にしかなりませんが、サウニ子爵家に戻り、デイクスから離婚を告げられるでしょう。その後、どうなったかはシド公爵家が手配してくれた人が確認してくれると思います」
ロータス様が手配してくれた人がサウニ子爵家にいて、追い出されたミシェルたちがどう動くか監視してくれることになっている。
ミオ様がまた違う質問をしてくる。
「警察に情報提供はしているのよね」
「はい。今、裏付けをしているんだと思います。もしかすると、サウニ子爵家、もしくはミシェルたちが頼って行く場所に警察が待ち構えているかもしれません」
「頼って行く場所?」
不思議そうにするミオ様にフェリックスが答える。
「サウニ子爵家に追い出されて行く所といったら一つしかないだろう」
「一つしかない?」
パチパチと目を瞬かせるミオ様が可愛らしくて、少し和んでから頷く。
「ミシェルは平民になりたくないはずです」
「……そうなると、彼女たちが頼るのは親戚やエルンベル男爵かしら」
「そうです。祖父母は両家ともに亡くなっていますし、親戚のほうはロータス様とフェリックスが三人を助けないように連絡を入れてくれていますので門前払いされるでしょう」
確実に捕まってしまう人間を自分の家に匿うような馬鹿な親戚たちではなかった。
ソラン様も自分の息子の命を狙った人たちを助けてあげるとは思えない。
ミオ様は納得したように頷くと、話題を変えてくる。
「そういえば、お兄様。シェリルから良いお返事はもらえたのですか?」
「ああ」
笑みを浮かべて頷いたフェリックスを睨む。
「あんな所で言うなんて酷いわ。しかも、ミオ様も知っていらしたんですか?」
「ちょっと無理矢理にしないと、シェリルは身を引こうとするんじゃないかと思ったんですの」
ミオ様は不安げに私を見つめて尋ねてくる。
「許してもらえないかしら」
「……私がミオ様を許さないわけがないじゃないですか」
「良かったですわ! お祝いをしなければなりませんわね! シェリルは今度こそ自由になれますし、悪い人たちには天罰が下るのですから、良いことばかりです」
「ありがとうございます、ミオ様」
お祝いしてもらえることは有り難い。
でも、今はミシェルたちがどうなるのかが気になった。
※
次の話はミシェル視点です。
明日に本編完結ですが、10万字を超えてしまうので短編から長編に変更しました。
だから、話を続けさせてもらう。
「サウニ子爵家から連絡があったのですが、離婚届は提出しておくとのことでした」
「……え?」
「なんですって?」
「なんだって?」
流れる涙をそのままに口をぽかんと開けたミシェル、そして驚愕の表情を浮かべる元伯爵夫妻に伝える。
「言葉通りです。サウニ子爵令息はミシェルさんが離婚したがっているから離婚することにしたと言っておられましたよ」
「そんな! 噓よ! どうして今更!」
「嘘なんてついていません」
「ちょ、そんな……、ありえないわ」
ミシェルのピンク色の頬が白くなっていく。
「おめでとうございます、ミシェルさん。あなたには貴族の血が流れているのかもしれませんが、今日から立場は平民ですね」
笑顔を作って言うと、ミシェルは両頬を手で押さえて何度も首を横に振る。
「嘘……、わたしが平民だなんて、そんなの絶対に嘘よ!」
「私の話が信じられないというのでしたら、サウニ子爵家に戻って確認してみてくださいませ」
「言われなくてもそうします!」
ミシェルは慌てた様子で、ポーチの向こうに停まっている馬車に駆け寄っていく。
「ま、待ってミシェル!」
「そうだ、置いていかないでくれ」
慌てて元伯爵夫妻がミシェルを追いかけて、馬車に乗り込んでいった。
あれだけ揉めていたのに、緊急事態となると一緒に行動することを望むのね。
それはそれで良かった。
捕まるのは一人じゃない。
皆で仲良く捕まればいいわ。
雨はまだ降り続いている。
今のミシェルの感情はこんなものなのかしら。
そう思った時、雷鳴が轟いた。
*****
ミシェルたちが去っていくと、ドアマンによって扉が静かに閉められた。
「ミシェルたちはどうなるのかしら」
ミオ様に尋ねられたので苦笑して答える。
「予想にしかなりませんが、サウニ子爵家に戻り、デイクスから離婚を告げられるでしょう。その後、どうなったかはシド公爵家が手配してくれた人が確認してくれると思います」
ロータス様が手配してくれた人がサウニ子爵家にいて、追い出されたミシェルたちがどう動くか監視してくれることになっている。
ミオ様がまた違う質問をしてくる。
「警察に情報提供はしているのよね」
「はい。今、裏付けをしているんだと思います。もしかすると、サウニ子爵家、もしくはミシェルたちが頼って行く場所に警察が待ち構えているかもしれません」
「頼って行く場所?」
不思議そうにするミオ様にフェリックスが答える。
「サウニ子爵家に追い出されて行く所といったら一つしかないだろう」
「一つしかない?」
パチパチと目を瞬かせるミオ様が可愛らしくて、少し和んでから頷く。
「ミシェルは平民になりたくないはずです」
「……そうなると、彼女たちが頼るのは親戚やエルンベル男爵かしら」
「そうです。祖父母は両家ともに亡くなっていますし、親戚のほうはロータス様とフェリックスが三人を助けないように連絡を入れてくれていますので門前払いされるでしょう」
確実に捕まってしまう人間を自分の家に匿うような馬鹿な親戚たちではなかった。
ソラン様も自分の息子の命を狙った人たちを助けてあげるとは思えない。
ミオ様は納得したように頷くと、話題を変えてくる。
「そういえば、お兄様。シェリルから良いお返事はもらえたのですか?」
「ああ」
笑みを浮かべて頷いたフェリックスを睨む。
「あんな所で言うなんて酷いわ。しかも、ミオ様も知っていらしたんですか?」
「ちょっと無理矢理にしないと、シェリルは身を引こうとするんじゃないかと思ったんですの」
ミオ様は不安げに私を見つめて尋ねてくる。
「許してもらえないかしら」
「……私がミオ様を許さないわけがないじゃないですか」
「良かったですわ! お祝いをしなければなりませんわね! シェリルは今度こそ自由になれますし、悪い人たちには天罰が下るのですから、良いことばかりです」
「ありがとうございます、ミオ様」
お祝いしてもらえることは有り難い。
でも、今はミシェルたちがどうなるのかが気になった。
※
次の話はミシェル視点です。
明日に本編完結ですが、10万字を超えてしまうので短編から長編に変更しました。
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