26 / 43
25 縮まらない距離
しおりを挟む
パートナーの件については、すぐにお断りの手紙を書いた。
いくら敷地内といえど、時間的に今すぐ持っていってもらうわけにはいかないので、明日の朝に届けてもらうことにした。
エルン様が予想していた通り、わたしの元には『パートナーがいないのであれば、ぜひ自分と行きませんか』という手紙がたくさん来ていた。
気持ちはありがたいけれど、あわよくば国王になんて気持ちが見え隠れしている気がして、中々、受ける気にはならなかった。
「リアンナお姉様は人気があるんですね」
両親と会えないと知ったロブは、朝は拗ねていたようだったけど、夜には機嫌が直っていて、夕食時には笑顔で話しかけてきた。
家族なんてものはこんなものなのか、もしくは子供がこんなものなのかはわからない。
でも、こちらから、そのことを話題にして不機嫌にさせる必要もない。
だから、わたしも何もなかった顔で答える。
「人気があるんじゃないわ。色々と大人には目的があるのよ」
「目的ってなんですか?」
「ロブも大きくなったらわかるわよ。好き嫌いだけでは生きていけないということがね」
「ふぅん。そうなんですね。それなら、大人になりたくないなあ」
「大人にしかできないこともあるから何とも言えないけれど、子供だからできることもあるかもしれないから、ロブは今を楽しんでね」
「わかりました」
夕食を終えると、わたしの部屋へと移動する。
昨日までのロブは、ロザンナが近くにいないと不安そうにしていた。
でも、この屋敷にも1日で慣れてしまったようで、明るい笑顔でよく話す。
「色々とあったし疲れたけど、これからも頑張るよ。ロザンナお姉様に会えなくなるのは寂しいけど、しょうがないよね?」
「ロブはロザンナにも一緒に住んでほしいんじゃないの?」
「……うん。だって、ロザンナお姉様がいたから僕は今まで生きてこれてると思うから、本当なら一緒にいてほしい」
「ロザンナがいなくても大丈夫なの?」
「うん! それにね、ロザンナお姉様は僕のことが心配で、しばらくすれば僕のところへ戻って来てくれるはずだから」
ロブの考えは甘いと思った。
ロザンナは優しいけれど、わたしと同じように両親に期待していないし、何かを求めてもいない。
ロブのことを可愛がってはいる。
でも、あの二人の元へ帰ろうとはしないだろうと思った。
*****
次の日の朝、手紙を持っていってもらってすぐに、テナミ様からまた手紙が来た。
『本当に後悔している。会って謝りたい。でも、両親に城内から出るなと言われているんだ。だから、会いに来てくれないだろうか』
わたしは両陛下のところに行きたかったけれど、この様子だと城の入り口で待ち構えられている可能性もある。
両陛下には誰かに言伝を頼むことにする。
『テナミ様はムーニャ様と出席なさってください』
それだけ書いて返すと、またすぐに返事がきた。
『ムーニャはハリーと出席するはずだ』
これについてはありえないことはわかっていた。
だって、ハリー様からもパーティーのパートナーに誘われていたからだ。
「テイル公爵令息にお願いしてみてはどうでしょう? 相手がいるとわかれば、さすがの殿下もパーティーの日までは大人しくしてくれるのではないでしょうか」
ロザンナにアドバイスされたわたしは、アクス様に依頼をして、無事に承諾してもらえた。
このことにより、わたしがアクス様のことを好きなのではないかという噂が社交界に流れた。
誤解なのだけど、予想はしていたし、結果的に良いことで、たくさん送られてきていたお手紙もピタリとやんだ。
テナミ様に渡すプレゼントや、着ていく服装を合わせるために、お互いの家を行き来している間に、アクス様との距離はかなり近づいていった。
そして、自分がアクス様を意識していることに気が付いたと同時に思った。
テナミ様の時もそうだったけれど、わたしは欠点のある男性が好きなのだと。
「リアンナお姉様は世話焼きですからね。」
すっかりわたしに懐いてくれたロザンナに言われ、返す言葉もなかった。
わたしとアクス様やロザンナとの距離は近づいても、ロブとの距離は中々縮まらなかった。
「酷かもしれないですが、ロブには現実を見せたほうが良いかもしれません」
頑なに拒むロブを見て、ロザンナは言った。
いくら敷地内といえど、時間的に今すぐ持っていってもらうわけにはいかないので、明日の朝に届けてもらうことにした。
エルン様が予想していた通り、わたしの元には『パートナーがいないのであれば、ぜひ自分と行きませんか』という手紙がたくさん来ていた。
気持ちはありがたいけれど、あわよくば国王になんて気持ちが見え隠れしている気がして、中々、受ける気にはならなかった。
「リアンナお姉様は人気があるんですね」
両親と会えないと知ったロブは、朝は拗ねていたようだったけど、夜には機嫌が直っていて、夕食時には笑顔で話しかけてきた。
家族なんてものはこんなものなのか、もしくは子供がこんなものなのかはわからない。
でも、こちらから、そのことを話題にして不機嫌にさせる必要もない。
だから、わたしも何もなかった顔で答える。
「人気があるんじゃないわ。色々と大人には目的があるのよ」
「目的ってなんですか?」
「ロブも大きくなったらわかるわよ。好き嫌いだけでは生きていけないということがね」
「ふぅん。そうなんですね。それなら、大人になりたくないなあ」
「大人にしかできないこともあるから何とも言えないけれど、子供だからできることもあるかもしれないから、ロブは今を楽しんでね」
「わかりました」
夕食を終えると、わたしの部屋へと移動する。
昨日までのロブは、ロザンナが近くにいないと不安そうにしていた。
でも、この屋敷にも1日で慣れてしまったようで、明るい笑顔でよく話す。
「色々とあったし疲れたけど、これからも頑張るよ。ロザンナお姉様に会えなくなるのは寂しいけど、しょうがないよね?」
「ロブはロザンナにも一緒に住んでほしいんじゃないの?」
「……うん。だって、ロザンナお姉様がいたから僕は今まで生きてこれてると思うから、本当なら一緒にいてほしい」
「ロザンナがいなくても大丈夫なの?」
「うん! それにね、ロザンナお姉様は僕のことが心配で、しばらくすれば僕のところへ戻って来てくれるはずだから」
ロブの考えは甘いと思った。
ロザンナは優しいけれど、わたしと同じように両親に期待していないし、何かを求めてもいない。
ロブのことを可愛がってはいる。
でも、あの二人の元へ帰ろうとはしないだろうと思った。
*****
次の日の朝、手紙を持っていってもらってすぐに、テナミ様からまた手紙が来た。
『本当に後悔している。会って謝りたい。でも、両親に城内から出るなと言われているんだ。だから、会いに来てくれないだろうか』
わたしは両陛下のところに行きたかったけれど、この様子だと城の入り口で待ち構えられている可能性もある。
両陛下には誰かに言伝を頼むことにする。
『テナミ様はムーニャ様と出席なさってください』
それだけ書いて返すと、またすぐに返事がきた。
『ムーニャはハリーと出席するはずだ』
これについてはありえないことはわかっていた。
だって、ハリー様からもパーティーのパートナーに誘われていたからだ。
「テイル公爵令息にお願いしてみてはどうでしょう? 相手がいるとわかれば、さすがの殿下もパーティーの日までは大人しくしてくれるのではないでしょうか」
ロザンナにアドバイスされたわたしは、アクス様に依頼をして、無事に承諾してもらえた。
このことにより、わたしがアクス様のことを好きなのではないかという噂が社交界に流れた。
誤解なのだけど、予想はしていたし、結果的に良いことで、たくさん送られてきていたお手紙もピタリとやんだ。
テナミ様に渡すプレゼントや、着ていく服装を合わせるために、お互いの家を行き来している間に、アクス様との距離はかなり近づいていった。
そして、自分がアクス様を意識していることに気が付いたと同時に思った。
テナミ様の時もそうだったけれど、わたしは欠点のある男性が好きなのだと。
「リアンナお姉様は世話焼きですからね。」
すっかりわたしに懐いてくれたロザンナに言われ、返す言葉もなかった。
わたしとアクス様やロザンナとの距離は近づいても、ロブとの距離は中々縮まらなかった。
「酷かもしれないですが、ロブには現実を見せたほうが良いかもしれません」
頑なに拒むロブを見て、ロザンナは言った。
応援ありがとうございます!
20
お気に入りに追加
2,874
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる