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第4章 切らなければならない縁

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 エルファの怪我が大丈夫だったことを再度確認して、巻き込んでしまったことを二人に謝ると、二人共にわたしのせいではないと言ってくれた。
 そして、すでにわたしの婚約の話をシード様から聞いていたようだった。

「シード様とのご婚約が上手く成立しますように。私は絶対にセフィリア様に付いていきますので!」
「僕もです!」

 あんなことがあったのに、二人が変わらず優しいから感動してしまった。
 ここ最近、嫌な目に遭ってばっかりだったから、少し涙腺が弱くなっている。

 泣かないように笑顔を作ってから、エルファに着替えを手伝ってもらい、改めてシード様と合流した。

 シード様と一緒にダイニングルームで朝食をとっていると、ロビースト様がイライラした様子で中に入ってきた。
 その後ろにはお姉様がいて、泣いていたのか目の周りを真っ赤に腫らしている。

 ロビースト様は一直線にシード様のところに向かって話しかけた。

「シード、あなたは好き勝手やってくれているようですね」
「そうだな」

 ロビースト様に話しかけられたシード様は食事の手を止めて頷く。
 ても、すぐにロビースト様からの冷たい視線を気にしていない様子で食事を再開した。

「そうだなでは済まされないんですよ! 大体、痩せている素敵な女性を連れてくると言いましたが、どこから連れてくるんですか!? 痩せているだけでは駄目なんですよ! 顔もそこそこでなくては!」
「うるせぇな。ちょっと待ってろ」

 シード様はまた食事の手を止めてから立ち上がり、廊下に立っている、わたしが初めて見る騎士に指示をする。

「彼女を連れてきてくれ」
「承知しました」

 騎士は大きな声で返事をすると、持ち場から離れていった。

「わたくしの目にかなう女性がいるとは思えませんけどねぇ?」

 ロビースト様はニヤニヤ笑いながら、シード様の隣の席に座る。

「わたくしの好みではなかった場合は、責任を取ってくれるのでしょうね?」
「ああ。もうお前は用無しだからな」
「なんですって!?」

 ロビースト様が長テーブルに拳を叩きつけた時だった。

 ダイニングルームの扉がノックされた。
 ロビースト様は不機嫌そうに返事をする。

「誰ですか」
「あ、あの、シード様に呼ばれて来た、ソレーヌと申します」
「ソレーヌ?」

 ロビースト様は鼻で笑ったあと、入室を許可する。

「入りたければ入りなさい」

 ゆっくりと扉が開き、わたしたちの前に現れたのはソレーヌ様だった。

 ソレーヌ様はロイアン伯爵に捨てられそうになっていたからか、以前よりも痩せていた。

 でも、彼女の外見の良さは衰えておらず、レモン色のドレスに身を包んだソレーヌ様は相変わらず天使のように可愛かった。

「……この女性は?」
「あんたの新しい婚約者だよ」

 ロビースト様は立ち上がって、ソレーヌ様に近づいていく。

「あなたはわたくしの婚約者になりたいのですか?」
「はい! なりたいです! お願いです! 私と結婚してください!」

 ソレーヌ様はロビースト様にしがみついて懇願する。

「絶対にあなたを裏切りません。痩せた女性がお好きなら、この体型を維持いたします!」

 ソレーヌ様はロビースト様の本性を知らない。
 だから、ロビースト様と結婚すれば楽に生きれるとでも思っているのでしょう。

「待ちなさい! ロビースト様は私のものよ!」

 今まで口を閉ざしていたお姉様が叫ぶと、ロビースト様は即座に否定する。

「わたくしはあなたのものではありません。あなたがわたくしの下僕なだけです」
「そ、そんな!」

 お姉様は傷付いた顔をして、目に涙を浮かべた。

 ロビースト様がわたしたちのことをそんな風に思っているだなんて、言われなくてもわかっていたことでしょうに、今まで気付いていなかったの?
 それとま知らないふりをしていただけ?
 呆れた表情でお姉様を見つめていると、ソレーヌ様がわたしとお姉様に話しかけてくる。

「申し訳ございません。私はあなたたち姉妹の好きな人を奪ってしまうことになりそうです」
「別にわたしはそんな人はいらないわ」
「強がらなくてもいいんですよ?」

 わたしが言葉を返すと、ロビースト様が割って入ってきた。
 あまりにも自意識過剰な発言だから、頭にきてしまい即座に応える。

「強がってなんていません。あなたには彼女がお似合いです」
 
 こんな言葉を人生で二度も言うことになるとは思ってもいなかった。
 嫌になるけれど、二度あったということは、三度目もあるかもしれないわね。

 そう考えた後に、ソレーヌ様とお姉様を交互に見ながら話を続ける。

「ロビースト様がお姉様を選ぶのか、ソレーヌ様を選ぶのかはわかりません。わたしにしてはどちらでも良いことですわ。勝手になさって?」
「わたくしは痩せている女性が好きなんです! ソレーヌ嬢を選ぶに決まっているでしょう!」

 ロビースト様がすぐに答えを出してくれたので、長話をしなくて済みそうだった。

「では、わたしは本日でここを去らせていただきます」

 にこやかな笑みを浮かべて言うと、ロビースト様は複雑そうな顔になり、ソレーヌ様は満面の笑みを浮かべた。

「お元気で! 新しい婚約者が見つかると良いですわね!」
「ありがとうございます、ソレーヌ様」

 もうすでに決まっていると教える必要もないので、軽く頭を下げて、お礼をいうだけにしておく。

「あなたが太ってくれていたら、こんなことにはならなかったのに!」

 突然、お姉様が涙をボロボロと流しながら、わたしを指差して叫んだ。

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