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24 お芝居?
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「リアム様! あの、人前ですから! 恥ずかしいです!」
近いですと叫ぶわけにはいかず、そう訴えると、リアム様は不満そうな声を上げる。
「あれ、おかしいな。さっきはリアムって呼んでくれてなかった?」
「き、気のせいだと思います!」
まさか、あのタイミングで聞かれるだなんて!
きっと、リアム様のことだから、気配を消しておられたのね!
「気のせいだって? そんなわけないと思うけど。まあ、その話はあとにしようか」
リアム様は私を後ろから抱きしめたままの状態で、ココルに向かって続ける。
「店の前で待っていたんだけど、僕の可愛い奥さんに誰か絡んでいる姿が見えてね。慌てて中に入ってきたんだけど、相手はアイリスの妹さんじゃないか。パーティー以来だね」
「あ、ご、ごきげんようマオニール公爵閣下。お目にかかれて光栄です」
ココルはカーテシーをして、熱っぽい視線でリアム様を見つめた。
恋人になりそうな人が出来たって、さっきまで言っていなかった?
文句を言いたくなったけれど、もしかしたら、さっきの恋人発言も嘘で、悪戯だったと言い出す可能性もあるから何も言わないでおく。
「アイリス、欲しいものは買えたの?」
リアム様が私の耳元で優しく囁くように聞いてくるので、首を小さく横に振る。
「まだです。入って少ししてから、ココルに会ったので、見ている途中でした」
「そうか。じゃあ、僕は妹さんと外で話をしてきてくるから、アイリスはゆっくり選んだらいいよ」
「で、ですが……!」
首を後ろに向けようとしたけれど、すぐ近くにリアム様の顔があることに気付いたので、慌ててを前に戻す。
すると、頬に優しくキスをされた。
「――っ!」
動揺してはいけない。
だって夫婦ならこんなことは、当たり前のことだもの。
ココルに白い結婚だなんてバレないように、リアム様はお芝居をしてくださってるんだわ。
だから、私が動揺することで、このお芝居を失敗に終わらせるわけにはいかない。
「……アイリス、どうかした?」
「い、いえ! ただ、あの、ココルとリアム様を2人にするのは、その、あまり嬉しくないといいますか……」
「……アイリス、もしかして、妬いてくれてるのかな?」
「ええっ!?」
お芝居をしないといけないとわかっているのに、恥ずかしくて声を上げてしまった。
それは、そうなのかもしれないけれど、ヤキモチを妬くだなんて、淑女としては良くないことだから、気をつけないといけないのに……。
私は、本当に何をやってるのよ……。
「だって、妹と2人にしたくないって言ってくれてるんだろ? それってヤキモチなんじゃないかな」
リアム様は微笑むと、私の動揺など気にせずに、今度は私の額にキスをした。
「――っ!」
「アイリスは本当に可愛いね。でも、さすがに、ここで長話するわけにはいかないよね。ここじゃ、他の人に迷惑だろう? それに外にはトーイもいるし、2人きりにならないから大丈夫だよ」
「……はい」
頬が熱くなるのを感じて、両頬をおさえながら頷くと、リアム様は微笑んでくれた。
「僕がアイリス以外の女性に興味を持つわけがないだろう? もっと僕を信用してほしいな」
「は、は、はい! 申し訳ございません!」
謝る私に向かって、リアム様は体を離してから微笑んだあと、ココルに声を掛ける。
「悪いけど、ノマド嬢は一緒に来てくれるかな?」
「はい! 喜んで!」
ココルはなぜか飛び跳ねて返事をした。
リアム様は店の扉を開けて、ココルを外へ出すと、一度、扉を閉めた。
そして、呆気にとられている店の人に近付いていき声を掛ける。
「迷惑をかけたお詫びに、ここにいる人達が買い物をする代金はマオニール公爵家に請求して欲しい。それから、そこにいる僕の妻の相手を頼みたい」
「かしこまりました」
恭しくお店の人が礼をすると、リアム様は私には優しく微笑んだあと、店内にいる人達に向かって言う。
「楽しい時間の邪魔をして申し訳ない。もう騒がしくはならないので、安心してほしい」
他の人達が何か言葉を返す前に、リアム様は店から出ていってしまわれた。
私も改めて、店内にいる人にお詫びをすると、お店の人が私の方にやって来た。
お店の人は満面の笑みを浮かべて、私を見たあと、深々と頭を下げた。
「マオニール公爵閣下の奥様だったのですね! お声掛けもせず大変失礼致しました。奥様、気になる商品がこざいましたら、仰って下さいませ。奥の試着室までご案内いたします!」
「あ、では、何着か、カラーバリエーションがあるのか知りたいものがあるんですが……」
「どちらになりますでしょうか? 奥様、よろしければサイズを測らせていただけませんでしょうか? オーダーメイドでもお作りできます!」
お店の人の勢いに押されてしまい、結局、私は奥の部屋に連れて行かれてしまった。
そして、サイズを測られ、自分に合う、自分好みのデザインの下着を何枚か作ってもらうことになってしまった。
「マオニール公爵閣下に、よろしくお伝えくださいませ」
ほくほく顔の店長さんに見送られ、私が解放されたのは、約1時間後のことだった。
近いですと叫ぶわけにはいかず、そう訴えると、リアム様は不満そうな声を上げる。
「あれ、おかしいな。さっきはリアムって呼んでくれてなかった?」
「き、気のせいだと思います!」
まさか、あのタイミングで聞かれるだなんて!
きっと、リアム様のことだから、気配を消しておられたのね!
「気のせいだって? そんなわけないと思うけど。まあ、その話はあとにしようか」
リアム様は私を後ろから抱きしめたままの状態で、ココルに向かって続ける。
「店の前で待っていたんだけど、僕の可愛い奥さんに誰か絡んでいる姿が見えてね。慌てて中に入ってきたんだけど、相手はアイリスの妹さんじゃないか。パーティー以来だね」
「あ、ご、ごきげんようマオニール公爵閣下。お目にかかれて光栄です」
ココルはカーテシーをして、熱っぽい視線でリアム様を見つめた。
恋人になりそうな人が出来たって、さっきまで言っていなかった?
文句を言いたくなったけれど、もしかしたら、さっきの恋人発言も嘘で、悪戯だったと言い出す可能性もあるから何も言わないでおく。
「アイリス、欲しいものは買えたの?」
リアム様が私の耳元で優しく囁くように聞いてくるので、首を小さく横に振る。
「まだです。入って少ししてから、ココルに会ったので、見ている途中でした」
「そうか。じゃあ、僕は妹さんと外で話をしてきてくるから、アイリスはゆっくり選んだらいいよ」
「で、ですが……!」
首を後ろに向けようとしたけれど、すぐ近くにリアム様の顔があることに気付いたので、慌ててを前に戻す。
すると、頬に優しくキスをされた。
「――っ!」
動揺してはいけない。
だって夫婦ならこんなことは、当たり前のことだもの。
ココルに白い結婚だなんてバレないように、リアム様はお芝居をしてくださってるんだわ。
だから、私が動揺することで、このお芝居を失敗に終わらせるわけにはいかない。
「……アイリス、どうかした?」
「い、いえ! ただ、あの、ココルとリアム様を2人にするのは、その、あまり嬉しくないといいますか……」
「……アイリス、もしかして、妬いてくれてるのかな?」
「ええっ!?」
お芝居をしないといけないとわかっているのに、恥ずかしくて声を上げてしまった。
それは、そうなのかもしれないけれど、ヤキモチを妬くだなんて、淑女としては良くないことだから、気をつけないといけないのに……。
私は、本当に何をやってるのよ……。
「だって、妹と2人にしたくないって言ってくれてるんだろ? それってヤキモチなんじゃないかな」
リアム様は微笑むと、私の動揺など気にせずに、今度は私の額にキスをした。
「――っ!」
「アイリスは本当に可愛いね。でも、さすがに、ここで長話するわけにはいかないよね。ここじゃ、他の人に迷惑だろう? それに外にはトーイもいるし、2人きりにならないから大丈夫だよ」
「……はい」
頬が熱くなるのを感じて、両頬をおさえながら頷くと、リアム様は微笑んでくれた。
「僕がアイリス以外の女性に興味を持つわけがないだろう? もっと僕を信用してほしいな」
「は、は、はい! 申し訳ございません!」
謝る私に向かって、リアム様は体を離してから微笑んだあと、ココルに声を掛ける。
「悪いけど、ノマド嬢は一緒に来てくれるかな?」
「はい! 喜んで!」
ココルはなぜか飛び跳ねて返事をした。
リアム様は店の扉を開けて、ココルを外へ出すと、一度、扉を閉めた。
そして、呆気にとられている店の人に近付いていき声を掛ける。
「迷惑をかけたお詫びに、ここにいる人達が買い物をする代金はマオニール公爵家に請求して欲しい。それから、そこにいる僕の妻の相手を頼みたい」
「かしこまりました」
恭しくお店の人が礼をすると、リアム様は私には優しく微笑んだあと、店内にいる人達に向かって言う。
「楽しい時間の邪魔をして申し訳ない。もう騒がしくはならないので、安心してほしい」
他の人達が何か言葉を返す前に、リアム様は店から出ていってしまわれた。
私も改めて、店内にいる人にお詫びをすると、お店の人が私の方にやって来た。
お店の人は満面の笑みを浮かべて、私を見たあと、深々と頭を下げた。
「マオニール公爵閣下の奥様だったのですね! お声掛けもせず大変失礼致しました。奥様、気になる商品がこざいましたら、仰って下さいませ。奥の試着室までご案内いたします!」
「あ、では、何着か、カラーバリエーションがあるのか知りたいものがあるんですが……」
「どちらになりますでしょうか? 奥様、よろしければサイズを測らせていただけませんでしょうか? オーダーメイドでもお作りできます!」
お店の人の勢いに押されてしまい、結局、私は奥の部屋に連れて行かれてしまった。
そして、サイズを測られ、自分に合う、自分好みのデザインの下着を何枚か作ってもらうことになってしまった。
「マオニール公爵閣下に、よろしくお伝えくださいませ」
ほくほく顔の店長さんに見送られ、私が解放されたのは、約1時間後のことだった。
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