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34 公爵令嬢の嫌がらせ②
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「何か、驚くようなことでもございましたか?」
何もなかったようなふりをして、プリステッド公爵令嬢に話しかけると、彼女は笑みを引きつらせて首を横に振る。
「いいえ。中々、いらっしゃらないので、ここにいるみなさんと心配しておりましたのよ」
プリステッド公爵令嬢の今日のドレスは、お茶会というよりも夜会といった感じの赤色のドレスだった。
好きなものを着れば良いし、私に対する好戦的な意味合いが含まれているのだと思うけれど、周りが落ち着いた色合いの服装が多いだけに、彼女がどこか浮いて見えた。
「ティールームらしきお部屋に案内してもらったのですが、どうやら、案内してくれたメイドが場所を勘違いしておられたようですわね」
「そ、そうだったのですか……。それは申し訳ございませんでした」
プリステッド公爵令嬢は引きつった笑みのまま、私に頭を下げた。
中庭のガゼボの中にはすでに、他の招待客は集まっていて、まだ約束の時間にもなっていないのに、先にお茶会を楽しんでいたようだった。
「あら、もう始めておられましたのね? 時刻を間違えてしまったのかしら」
「そ、そうですわね! 本当は三十分前が開始時刻でしたのよ?」
「……そうですか。それは申し訳ございませんでした。ご迷惑でなければ、今から、参加してもよろしいでしょうか?」
申し訳なさげに尋ねると、私とプリステッド公爵令嬢が話をしているのを見つめていた令嬢の一人が、丸テーブルを囲んでいる他三人の令嬢に向かって、コソコソと話をする。
「まさか、マオニール公爵夫人が時間を間違われるだなんて思ってもいませんでした」
それを合図に、他の令嬢達も顔を寄せて小声で話し始める。
「お忙しい方なのですからしょうがないですわ。私達とのお茶会なんてどうでも良いのでしょう」
「しかも、これだけ遅れてきておいて、今から一緒にお茶をするつもりだなんて、図太い神経をお持ちですわね」
「元男爵令嬢ということですし、マナーを知らないのではなくって?」
小声ではあるけれど、彼女達は私に聞こえるように話をしているようだった。
こんな陰口も家族のせいで慣れたものだわ。
それに、家族のことで陰口を叩かれていた時は、悲しい気持ちだけじゃなく、迷惑をかけたのだからしょうがないという申し訳ない気持ちでいっぱいだったけれど、今回に関しては違う。
時間は手紙に書いてある時間を何度も確認したし、早すぎない時間にやって来ている。
彼女達の中では三十分遅れなのかもしれないけれど、元々は、違う場所に案内されていたということもあるし、悪いのは私ではないわ。
「ビティング伯爵令嬢」
元男爵令嬢だからマナーを知らないと話した令嬢の名前を呼ぶと、彼女はツインテールにした茶色の髪を大きく揺らせて、こちらのほうを見た。
「私は元男爵令嬢ではありますが、今は、公爵夫人です。マオニール家の名に恥じないように努力を重ねておりますが、至らないところもまだたくさんあるとはございますので、ぜひ、教えていただきたいのですが」
「な……、何でしょうか」
まさか、私から何か質問されるとは思っていなかったのか、ビティング伯爵令嬢の表情は強張り、体は震えていた。
「時間が間違っていたかどうかに関しては、招待状を確認すればわかることですから今は置いておきます。私の聞きたいことですが、約束の時間に遅れた場合、お詫びしたあと、そのまま帰ることが遅れた時のマナーなのでしょうか? それがマナーだと仰るのでしたら、私は今すぐに帰らせていただきます」
別に私は、このお茶会に呼ばれたかったわけではないし、条件を達成するために来ただけで、ここまで来ただけで条件は達成している。
このまま帰られて困るのはプリステッド公爵令嬢のはず。
それに、私が時間を間違えていただなんて、つかなくてもいい嘘をついていらっしゃるけれど、お茶会についての日時が書かれた手紙を彼女に見せたら、どんな言い訳をするつもりなのかしら。
プリステッド公爵令嬢のほうを見ると、悔しそうな顔で私を見つめていた。
何もなかったようなふりをして、プリステッド公爵令嬢に話しかけると、彼女は笑みを引きつらせて首を横に振る。
「いいえ。中々、いらっしゃらないので、ここにいるみなさんと心配しておりましたのよ」
プリステッド公爵令嬢の今日のドレスは、お茶会というよりも夜会といった感じの赤色のドレスだった。
好きなものを着れば良いし、私に対する好戦的な意味合いが含まれているのだと思うけれど、周りが落ち着いた色合いの服装が多いだけに、彼女がどこか浮いて見えた。
「ティールームらしきお部屋に案内してもらったのですが、どうやら、案内してくれたメイドが場所を勘違いしておられたようですわね」
「そ、そうだったのですか……。それは申し訳ございませんでした」
プリステッド公爵令嬢は引きつった笑みのまま、私に頭を下げた。
中庭のガゼボの中にはすでに、他の招待客は集まっていて、まだ約束の時間にもなっていないのに、先にお茶会を楽しんでいたようだった。
「あら、もう始めておられましたのね? 時刻を間違えてしまったのかしら」
「そ、そうですわね! 本当は三十分前が開始時刻でしたのよ?」
「……そうですか。それは申し訳ございませんでした。ご迷惑でなければ、今から、参加してもよろしいでしょうか?」
申し訳なさげに尋ねると、私とプリステッド公爵令嬢が話をしているのを見つめていた令嬢の一人が、丸テーブルを囲んでいる他三人の令嬢に向かって、コソコソと話をする。
「まさか、マオニール公爵夫人が時間を間違われるだなんて思ってもいませんでした」
それを合図に、他の令嬢達も顔を寄せて小声で話し始める。
「お忙しい方なのですからしょうがないですわ。私達とのお茶会なんてどうでも良いのでしょう」
「しかも、これだけ遅れてきておいて、今から一緒にお茶をするつもりだなんて、図太い神経をお持ちですわね」
「元男爵令嬢ということですし、マナーを知らないのではなくって?」
小声ではあるけれど、彼女達は私に聞こえるように話をしているようだった。
こんな陰口も家族のせいで慣れたものだわ。
それに、家族のことで陰口を叩かれていた時は、悲しい気持ちだけじゃなく、迷惑をかけたのだからしょうがないという申し訳ない気持ちでいっぱいだったけれど、今回に関しては違う。
時間は手紙に書いてある時間を何度も確認したし、早すぎない時間にやって来ている。
彼女達の中では三十分遅れなのかもしれないけれど、元々は、違う場所に案内されていたということもあるし、悪いのは私ではないわ。
「ビティング伯爵令嬢」
元男爵令嬢だからマナーを知らないと話した令嬢の名前を呼ぶと、彼女はツインテールにした茶色の髪を大きく揺らせて、こちらのほうを見た。
「私は元男爵令嬢ではありますが、今は、公爵夫人です。マオニール家の名に恥じないように努力を重ねておりますが、至らないところもまだたくさんあるとはございますので、ぜひ、教えていただきたいのですが」
「な……、何でしょうか」
まさか、私から何か質問されるとは思っていなかったのか、ビティング伯爵令嬢の表情は強張り、体は震えていた。
「時間が間違っていたかどうかに関しては、招待状を確認すればわかることですから今は置いておきます。私の聞きたいことですが、約束の時間に遅れた場合、お詫びしたあと、そのまま帰ることが遅れた時のマナーなのでしょうか? それがマナーだと仰るのでしたら、私は今すぐに帰らせていただきます」
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このまま帰られて困るのはプリステッド公爵令嬢のはず。
それに、私が時間を間違えていただなんて、つかなくてもいい嘘をついていらっしゃるけれど、お茶会についての日時が書かれた手紙を彼女に見せたら、どんな言い訳をするつもりなのかしら。
プリステッド公爵令嬢のほうを見ると、悔しそうな顔で私を見つめていた。
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