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プロローグ
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伯爵家の次女である私、リネ・ティファスには2つ年上の、トワナお姉様がいる。
お姉様は美女だと評判のお母様の顔立ちによく似ていて、ストレートの黒い髪をお尻のあたりまで流していて、赤いドレスを好んで着ている。
涼し気な切れ長の目に、ぽってりとした唇はいつもピンク色で艶があり、瞳も同じくピンク色で可愛らしさも備わっている。
透き通るような白い肌に痩せているのに豊満な胸、足も長くスラリとした体型の持ち主で、見た目は文句の付け所がない。
妹である私は、お姉様と同じく黒髪のストレートで、普段はお姉様に薦められたハーフツインテールにしている。
お姉様と違ってアーモンド型の瞳に薄い唇で、瞳の色は紅色だ。
体型は痩せ型ではあるけれど、お姉様のような大きな胸は持っていない。
自分に自信がなくて、すぐに俯いてしまう癖があるので、そこは直していかなければならないと、ここ最近は特に思っていた。
なぜ、16歳になった今頃になってそんなことを思い始めたのかというと、約30日ほど前に17歳の時に嫁入りしたお姉様が実家に戻ってきたからだ。
帰ってきた理由は旦那様が亡くなったから。
亡くなったあとも一緒に住もうと言ってくださった義両親の誘いを断って実家に帰ってこられた。
それに関しては特におかしいことではない。
問題は、それからだった。
私の家には私の婚約者であり、侯爵家の嫡男のデイリ・シンス様がよく遊びに来ている。
お姉様は眉目秀麗の男性が大好きなので、言わずもがなデイリ様に目を付けた。
お姉様はデイリ様の前では夫を亡くして悲しんでいるふりをして、デイリ様はその演技に騙された。
両親は未亡人になってしまったお姉様を新たにもらってくれる相手はいないと思い込み、いつしか、デイリ様をお姉様をの婚約者にしようと思うようになってしまった。
「デイリ様とトワナは本当にお似合いよね。リネもそう思うでしょう?」
「お母様、お父様、デイリ様は私の婚約者なのです」
そう訴えると、2人は笑顔で私にこう言った。
「あなたは未婚だし、まだ16歳なんだからデイリ様をトワナに譲ってあげなさい」
「そうだ。このままではトワナはこの家で暮らせなくなるんだ」
ティファス伯爵家には子供は私とお姉様しかいない。
家督は男子しか継げない国のため、お父様は私のいとこに跡を継いでもらうつもりでいる。
そして、お姉様といとこは折り合いが良くない。
だから、ティファス伯爵家を継げば、いとこはお姉様を追い出すだろうと考えられていた。
「嫌です。私だってデイリ様のことが……」
「リネ! わがままを言うのはやめなさい! いいわね? デイリ様に婚約破棄されたら素直に、うんと言うのよ?」
「今言ったみたいに嫌だなどと、子供みたいに駄々をこねるような真似はしないでくれよ? そんなことになったら我が家の恥だ」
「……お父様とお母様は、私よりもお姉様が可愛いのですか?」
震える声で尋ねると、お父様は丸い大きな目を細めて答える。
「リネ、お前がトワナよりも愛されることはない。それは私たちだけではなく、相手が他の誰であってもだ。無駄な期待はせずに、お前は堅実に生きなさい。真面目で言うことをよく聞くというのがお前の取り柄なのだから」
「そうよ。あなたは手のかからない子で助かっているの。この年になってわがままを言うのはやめてちょうだい?」
お父様とお母様の表情を見て、ここは素直に頷くしかないと思った。
今までの経験上、これ以上何か言えば、お父様は躾として私を鞭で叩く。
鞭で打たれた時は手当もしてもらえない上に、打たれる部分はお尻だから学園に通っている私には、毎日がとても辛いことになる。
「わかりました」
笑顔で頷くと、両親は何事もなかったかのように笑顔を見せて、頭を撫でてくれる。
「やっぱりリネは良い子ね。もう一度言うけれど、もし、デイリ様に婚約破棄や解消をお願いされたら、素直にはいと言うのですよ?」
「……わかりました」
私に婚約者がいなくなったら、新しい婚約者は出来るのかしら。
新しい婚約者が見つからなかったら、私はどうなるの?
そんな不安が襲ってきたけれど、今は頷くしかなかった。
デイリ様を信じよう。
馬鹿な私は、そんな風に考えることにしたのだった。
そして決定的な事件が数日後に起こる。
「リネ、悪いけど今度一緒に行くと言っていたパーティー、キャンセルしてもらっても良いかな?」
「かまいませんが、何かあったのですか?」
デイリ様と私は同じ学園に通っており、同じクラスだ。
朝、デイリ様が金色のセミロングの髪を揺らして私の席までやって来た。
挨拶のあとに笑顔でそうお願いしてきたから、理由が気になって聞いてみると、デイリ様は悪びれた様子もなく、白い歯を見せて答える。
「ごめんね。トワナが一緒に行ってほしいって言うんだ。僕の体は一つしかないから。ねえ、リネは聞き分けがいいから、わかってくれるよね?」
そう言って、デイリ様が無言の圧をかけてくる。
デイリ様の青い目は「嫌だなんて言わないよね?」と無言で訴えている。
「……わかりました」
本当に嫌だ。
こんな婚約者もそうだけれど、何も言えない私自身が一番大嫌いだった。
それなのに、こんな自分をどうやって変えたら良いのか、この時の私にはわからなかった。
お姉様は美女だと評判のお母様の顔立ちによく似ていて、ストレートの黒い髪をお尻のあたりまで流していて、赤いドレスを好んで着ている。
涼し気な切れ長の目に、ぽってりとした唇はいつもピンク色で艶があり、瞳も同じくピンク色で可愛らしさも備わっている。
透き通るような白い肌に痩せているのに豊満な胸、足も長くスラリとした体型の持ち主で、見た目は文句の付け所がない。
妹である私は、お姉様と同じく黒髪のストレートで、普段はお姉様に薦められたハーフツインテールにしている。
お姉様と違ってアーモンド型の瞳に薄い唇で、瞳の色は紅色だ。
体型は痩せ型ではあるけれど、お姉様のような大きな胸は持っていない。
自分に自信がなくて、すぐに俯いてしまう癖があるので、そこは直していかなければならないと、ここ最近は特に思っていた。
なぜ、16歳になった今頃になってそんなことを思い始めたのかというと、約30日ほど前に17歳の時に嫁入りしたお姉様が実家に戻ってきたからだ。
帰ってきた理由は旦那様が亡くなったから。
亡くなったあとも一緒に住もうと言ってくださった義両親の誘いを断って実家に帰ってこられた。
それに関しては特におかしいことではない。
問題は、それからだった。
私の家には私の婚約者であり、侯爵家の嫡男のデイリ・シンス様がよく遊びに来ている。
お姉様は眉目秀麗の男性が大好きなので、言わずもがなデイリ様に目を付けた。
お姉様はデイリ様の前では夫を亡くして悲しんでいるふりをして、デイリ様はその演技に騙された。
両親は未亡人になってしまったお姉様を新たにもらってくれる相手はいないと思い込み、いつしか、デイリ様をお姉様をの婚約者にしようと思うようになってしまった。
「デイリ様とトワナは本当にお似合いよね。リネもそう思うでしょう?」
「お母様、お父様、デイリ様は私の婚約者なのです」
そう訴えると、2人は笑顔で私にこう言った。
「あなたは未婚だし、まだ16歳なんだからデイリ様をトワナに譲ってあげなさい」
「そうだ。このままではトワナはこの家で暮らせなくなるんだ」
ティファス伯爵家には子供は私とお姉様しかいない。
家督は男子しか継げない国のため、お父様は私のいとこに跡を継いでもらうつもりでいる。
そして、お姉様といとこは折り合いが良くない。
だから、ティファス伯爵家を継げば、いとこはお姉様を追い出すだろうと考えられていた。
「嫌です。私だってデイリ様のことが……」
「リネ! わがままを言うのはやめなさい! いいわね? デイリ様に婚約破棄されたら素直に、うんと言うのよ?」
「今言ったみたいに嫌だなどと、子供みたいに駄々をこねるような真似はしないでくれよ? そんなことになったら我が家の恥だ」
「……お父様とお母様は、私よりもお姉様が可愛いのですか?」
震える声で尋ねると、お父様は丸い大きな目を細めて答える。
「リネ、お前がトワナよりも愛されることはない。それは私たちだけではなく、相手が他の誰であってもだ。無駄な期待はせずに、お前は堅実に生きなさい。真面目で言うことをよく聞くというのがお前の取り柄なのだから」
「そうよ。あなたは手のかからない子で助かっているの。この年になってわがままを言うのはやめてちょうだい?」
お父様とお母様の表情を見て、ここは素直に頷くしかないと思った。
今までの経験上、これ以上何か言えば、お父様は躾として私を鞭で叩く。
鞭で打たれた時は手当もしてもらえない上に、打たれる部分はお尻だから学園に通っている私には、毎日がとても辛いことになる。
「わかりました」
笑顔で頷くと、両親は何事もなかったかのように笑顔を見せて、頭を撫でてくれる。
「やっぱりリネは良い子ね。もう一度言うけれど、もし、デイリ様に婚約破棄や解消をお願いされたら、素直にはいと言うのですよ?」
「……わかりました」
私に婚約者がいなくなったら、新しい婚約者は出来るのかしら。
新しい婚約者が見つからなかったら、私はどうなるの?
そんな不安が襲ってきたけれど、今は頷くしかなかった。
デイリ様を信じよう。
馬鹿な私は、そんな風に考えることにしたのだった。
そして決定的な事件が数日後に起こる。
「リネ、悪いけど今度一緒に行くと言っていたパーティー、キャンセルしてもらっても良いかな?」
「かまいませんが、何かあったのですか?」
デイリ様と私は同じ学園に通っており、同じクラスだ。
朝、デイリ様が金色のセミロングの髪を揺らして私の席までやって来た。
挨拶のあとに笑顔でそうお願いしてきたから、理由が気になって聞いてみると、デイリ様は悪びれた様子もなく、白い歯を見せて答える。
「ごめんね。トワナが一緒に行ってほしいって言うんだ。僕の体は一つしかないから。ねえ、リネは聞き分けがいいから、わかってくれるよね?」
そう言って、デイリ様が無言の圧をかけてくる。
デイリ様の青い目は「嫌だなんて言わないよね?」と無言で訴えている。
「……わかりました」
本当に嫌だ。
こんな婚約者もそうだけれど、何も言えない私自身が一番大嫌いだった。
それなのに、こんな自分をどうやって変えたら良いのか、この時の私にはわからなかった。
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