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11 お姉様の思惑
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「嘘だろ? どうして、リネが! そんな、別人じゃないか! 整形でもしたのか!?」
デイリ様の言い方が馬鹿にしているように聞こえたので、すぐに否定する。
「……っ、違います。化粧をしてもらっただけです」
「まあいい。化粧したって中身は同じだろ」
デイリ様が私に向かって手を伸ばしてきた。
すると、エディ様がその腕を掴んで動きを止めたあと、彼の肩を押した。
「リネに触れるな」
「触れるなってそんな……。エディ様、あなたはリネに騙されています! トワナから聞いたんです! リネが嘘をついて、あなたに擦り寄ったのだと」
「私が嘘をついた?」
お姉様がどんな話をしたのかわからないので聞いてみる。
すると、デイリ様は私に原因があるのだということを、周りの人に知らしめたいと言わんばかりに大きな声で叫ぶ。
「そうだよ! リネは悪い女で嘘をついて、エディ様を騙したんだ!」
「……私がどんな嘘をついたのでしょう?」
「姉に婚約者を奪われた可哀想な女性というふりをしたんだろう? 実際は違うのに!」
「可哀想な女性かどうかはわかりませんが、婚約者を奪われたということは確かです」
興奮してドキドキする胸を押さえながらデイリ様に言い返した。
婚約破棄されてから冷たくなったデイリ様に、こんな風に言い返すことはしていなかった。
違うものは違うと言う。
そう決めたことを実行できた気がした。
「ち、違うだろう! 馬鹿なことを言うな! リネが身を引いたんだろ!」
「違います! あなたが婚約破棄したんじゃないですか! しかも、仲の良い友人しかいないパーティーで!」
「嘘をつくな!」
大きな声で叫ばれて、私はびくりと体を震わせた。
それを見たエディ様が私の前に出ようとされたから、慌てて止める。
「大丈夫です、エディ様」
「いきなり強くなるなんて無理だ。それに男性が女性に怒鳴るなんて良くないことだよ」
エディ様が私のことを思ってくださるのは嬉しい。
だけど、今、戦わなかったら、いつ戦うの?
「エディ様」
自分の声が震えているのがわかった。
だけど、懇願するようにエディ様を見上げると、エディ様は眉尻を下げて大きく息を吐く。
「わかったよ。リネの言う通りにする。だけど……」
エディ様は私の頭を優しく撫でてくれたあと、デイリ様に視線を向ける。
「シンス侯爵令息、僕のリネに触れることや怒鳴ることなど、彼女を傷付ける行為は絶対に許さない」
「……わかっています。話し合いをしたいだけです」
デイリ様はそう答え、大きく息を吐いて自分を落ち着かせると、私に鋭い眼差しを向ける。
「エディ様の件は違う時に話すとしよう。トワナの話をするが、昨日、彼女が泣きながら僕の家にやって来たんだ。君のせいで悲しい思いをしたって。こんな自分では僕の婚約者のままではいられないって! 婚約解消したいって言うんだよ! 君は何をしたんだ!? あんなに明るい彼女を泣かせるだなんて、どんなに酷いことをしたんだよ!?」
「わかりません。したとすれば、エディ様と婚約したことくらいでしょうか」
「まさか、エディ様の同情を買って、無理矢理エディ様の婚約者の座におさまったのか? トワナが婚約者に決まっていたのに?」
デイリ様は興奮しているのか、顔を真っ赤にして息を荒くしている。
だから、自分がおかしなことを言っていることに気付いていないみたいだった。
私が変なことを言ったの?
そう思ってしまい、デイリ様に謝る必要もないのに謝ろうかと思ってしまった。
でも、エディ様が視界に入ると、そんな気持ちも無くなった。
「無理矢理なんかじゃないです」
「これに関しては僕が答えてもいいだろう?」
エディ様が私の肩を優しく抱き寄せてから、私の答えを待たずにデイリ様に言う。
「僕がリネを選んだんだ。トワナ嬢が何を言っているのか知らないが、文句があるのなら僕に直接言ってくれ」
「も、文句と言いますか、トワナが……、僕の婚約者が泣いていた理由を知りたいんです!」
「よくわからないが、トワナ嬢は君の婚約者なんだろ?」
「……そうですが」
「なら、僕の婚約者がリネになったとしても、トワナ嬢には何の関係もないだろ。泣く理由にならない。逆に、自分の妹に婚約者が出来て喜ぶべきなんじゃないのか?」
「そ、それはそうかも……しれません」
デイリ様は思いついたことを叫んだだけだったのか、すんなりと自分の意見を引っ込めた。
そんなデイリ様に尋ねてみる。
「お姉様は婚約解消をしたいと言ってらしたのですか?」
「そうだよ。そんなことってあるかよ! 僕は本当にトワナのことが好きなのに!」
「なら、そのままのお姉様で良いとお伝えしてはどうです?」
「うるさい! 伝えても駄目だったんだ! だから、何か原因があるとしたら、リネにしかないだろう!」
「よくわかりませんが、自信が無くなったと言ってらっしゃるだけなら、デイリ様が婚約解消しなければ良いだけなのではないですか?」
「は?」
デイリ様が不思議そうな顔をして聞き返してきた。
デイリ様との婚約を解消して、エディ様に近づこうという、お姉様の魂胆は見え見えだわ。
なら、婚約を解消させなければいい。
「デイリ様は愛を貫いて、絶対にお姉様との婚約の解消を認めないでください」
私の言葉を聞いたデイリ様は、大きく目を見開いて私を見つめた。
デイリ様の言い方が馬鹿にしているように聞こえたので、すぐに否定する。
「……っ、違います。化粧をしてもらっただけです」
「まあいい。化粧したって中身は同じだろ」
デイリ様が私に向かって手を伸ばしてきた。
すると、エディ様がその腕を掴んで動きを止めたあと、彼の肩を押した。
「リネに触れるな」
「触れるなってそんな……。エディ様、あなたはリネに騙されています! トワナから聞いたんです! リネが嘘をついて、あなたに擦り寄ったのだと」
「私が嘘をついた?」
お姉様がどんな話をしたのかわからないので聞いてみる。
すると、デイリ様は私に原因があるのだということを、周りの人に知らしめたいと言わんばかりに大きな声で叫ぶ。
「そうだよ! リネは悪い女で嘘をついて、エディ様を騙したんだ!」
「……私がどんな嘘をついたのでしょう?」
「姉に婚約者を奪われた可哀想な女性というふりをしたんだろう? 実際は違うのに!」
「可哀想な女性かどうかはわかりませんが、婚約者を奪われたということは確かです」
興奮してドキドキする胸を押さえながらデイリ様に言い返した。
婚約破棄されてから冷たくなったデイリ様に、こんな風に言い返すことはしていなかった。
違うものは違うと言う。
そう決めたことを実行できた気がした。
「ち、違うだろう! 馬鹿なことを言うな! リネが身を引いたんだろ!」
「違います! あなたが婚約破棄したんじゃないですか! しかも、仲の良い友人しかいないパーティーで!」
「嘘をつくな!」
大きな声で叫ばれて、私はびくりと体を震わせた。
それを見たエディ様が私の前に出ようとされたから、慌てて止める。
「大丈夫です、エディ様」
「いきなり強くなるなんて無理だ。それに男性が女性に怒鳴るなんて良くないことだよ」
エディ様が私のことを思ってくださるのは嬉しい。
だけど、今、戦わなかったら、いつ戦うの?
「エディ様」
自分の声が震えているのがわかった。
だけど、懇願するようにエディ様を見上げると、エディ様は眉尻を下げて大きく息を吐く。
「わかったよ。リネの言う通りにする。だけど……」
エディ様は私の頭を優しく撫でてくれたあと、デイリ様に視線を向ける。
「シンス侯爵令息、僕のリネに触れることや怒鳴ることなど、彼女を傷付ける行為は絶対に許さない」
「……わかっています。話し合いをしたいだけです」
デイリ様はそう答え、大きく息を吐いて自分を落ち着かせると、私に鋭い眼差しを向ける。
「エディ様の件は違う時に話すとしよう。トワナの話をするが、昨日、彼女が泣きながら僕の家にやって来たんだ。君のせいで悲しい思いをしたって。こんな自分では僕の婚約者のままではいられないって! 婚約解消したいって言うんだよ! 君は何をしたんだ!? あんなに明るい彼女を泣かせるだなんて、どんなに酷いことをしたんだよ!?」
「わかりません。したとすれば、エディ様と婚約したことくらいでしょうか」
「まさか、エディ様の同情を買って、無理矢理エディ様の婚約者の座におさまったのか? トワナが婚約者に決まっていたのに?」
デイリ様は興奮しているのか、顔を真っ赤にして息を荒くしている。
だから、自分がおかしなことを言っていることに気付いていないみたいだった。
私が変なことを言ったの?
そう思ってしまい、デイリ様に謝る必要もないのに謝ろうかと思ってしまった。
でも、エディ様が視界に入ると、そんな気持ちも無くなった。
「無理矢理なんかじゃないです」
「これに関しては僕が答えてもいいだろう?」
エディ様が私の肩を優しく抱き寄せてから、私の答えを待たずにデイリ様に言う。
「僕がリネを選んだんだ。トワナ嬢が何を言っているのか知らないが、文句があるのなら僕に直接言ってくれ」
「も、文句と言いますか、トワナが……、僕の婚約者が泣いていた理由を知りたいんです!」
「よくわからないが、トワナ嬢は君の婚約者なんだろ?」
「……そうですが」
「なら、僕の婚約者がリネになったとしても、トワナ嬢には何の関係もないだろ。泣く理由にならない。逆に、自分の妹に婚約者が出来て喜ぶべきなんじゃないのか?」
「そ、それはそうかも……しれません」
デイリ様は思いついたことを叫んだだけだったのか、すんなりと自分の意見を引っ込めた。
そんなデイリ様に尋ねてみる。
「お姉様は婚約解消をしたいと言ってらしたのですか?」
「そうだよ。そんなことってあるかよ! 僕は本当にトワナのことが好きなのに!」
「なら、そのままのお姉様で良いとお伝えしてはどうです?」
「うるさい! 伝えても駄目だったんだ! だから、何か原因があるとしたら、リネにしかないだろう!」
「よくわかりませんが、自信が無くなったと言ってらっしゃるだけなら、デイリ様が婚約解消しなければ良いだけなのではないですか?」
「は?」
デイリ様が不思議そうな顔をして聞き返してきた。
デイリ様との婚約を解消して、エディ様に近づこうという、お姉様の魂胆は見え見えだわ。
なら、婚約を解消させなければいい。
「デイリ様は愛を貫いて、絶対にお姉様との婚約の解消を認めないでください」
私の言葉を聞いたデイリ様は、大きく目を見開いて私を見つめた。
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