人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ

文字の大きさ
14 / 59

12 いじめ行為に対する処罰①

しおりを挟む
「そ、そうか、そうだよな。くそ。こんなことをリネに教えてもらわないといけないだなんて」

 デイリ様はそう呟いて、なぜか私を睨んできた。
 怖くなって、涙が出そうになるのをなんとかこらえる。

 大丈夫。
 私はこの人のことなんて好きじゃない。
 嫌われてもかまわない。

 ぎゅっと唇を噛みしめて睨み返すと、デイリ様が私を睨むことをやめた。
 かなり、驚いた顔をされている。

 睨み続けていると、デイリ様は何か言いたげに口を開いた。
 だけど、すぐに辺りを見回してからエディ様に言う。

「話は終わりましたので、ここで失礼します。お時間を割いてしまい申し訳ございません」

 たくさんの人に見られていることと、エディ様がいたら、私とゆっくり話せないと思ったようだった。
 デイリ様は頭を下げると、エディ様の返事も待たず、逃げるように教室の方向に向かって走っていく。

「リネ、大丈夫? よく頑張ったね」

 厳しい表情でデイリ様の背中を見つめていたエディ様は、デイリ様の姿が見えなくなるとすぐに表情を緩めて、私の顔を覗き込んできた。

「ありがとうございます。でも、まだ駄目ですね」

 そう言って、震えている私の両手を見せるとエディ様が抱きしめてきた。

「エディ様っ!?」
「リネにしてみれば、あの男は本当に怖かったよね。何もしてあげられなくてごめん」
「エディ様にはすでに色々としていただいていますので、これ以上は望みません!」

 エディ様の胸に私の顔が押し付けられているせいで、視界が狭くて周りがどんな様子かわからない。

 でも、女子生徒の悲鳴みたいな声が聞こえたので、良い状況ではないと思われた。

 でも、婚約者だから良いのかしら?

 そっと、下におろしていた腕を上げようとして気付く。

 でも、違うわ。
 こういうことは学校では良くない!

「エディ様、あの、離していただけませんか?」
「……わかった」

 エディ様は渋々といった感じで、私を解放してくれたから尋ねてくる。

「嫌だった?」
「嫌というよりかは、たくさんの人に見られていますし、はしたない行為かと思いまして」
「……そうだよね、ごめん。父上からも言われてたんだ。リネに夢中になるのは良いけど、人前では落ち着きを持てって」

 エディ様は視線を下に向けて苦笑した。

 私にしてみれば、エディ様の気持ちはとても嬉しい。
 だから、その気持ちを素直に伝える。

「でも、私は本当に嫌ではなかったんです。今回については、エディ様から私は勇気をもらったということで許してもらいましょう」
「うん、ありがとう。じゃあ行こうか」
「はい」

 エディ様は私のカバンと自分のカバンを左手に持ち、私の左手を取って歩き出した。
 
 教室に入ってしまえば、私の味方はいない。

 デイリ様はそれをわかっているから、すんなりと教室に戻られたんだと思う。

 教室に続く廊下を憂鬱な気持ちで歩いていると、エディ様が話し始める。

「この学校は父上の友人が学校長なんだ」
「そうだったのですね」
「だからさ、色々と融通を利かせてもらったんだ。いじめは理由が何であれ、やってはいけないものだよね」
「それはそうです」
「リネの場合は教師も含むクラス全員が加害者だ。もちろん、間接的な人間が大半だろうけどね。でも、このまま放っておいてはいけない。まずは、フールー伯爵令嬢の取り巻きの一人を違うクラスに移動させたよ」
「……はい?」

 意味がわからなくて聞き返すと、エディ様は笑顔で答える。

「リネをあのクラスに一人で置いておくわけにはいかないから、一人だけ交換してもらったんだ」
「こ、交換? そんなことが出来るのですか!? しかも、どなたとですか?」

 交換ということは取り巻きの一人の替わりに誰かが私のクラスにくるということだと思う。

 私がエディ様に尋ねた時に、ちょうど私のクラスの前に着いた。
 教室内がざわついているのがわかり、エディ様を見つめる。

「リネ、そんな可愛い顔をして見つめられたら息が苦しい」
「では、見ないようにします」
「それも違うかな。そんなリネも可愛いんだけど」

 エディ様がふにゃりと笑う。
 それと同時に教室の扉が開き、デイリ様が出てきた。

 そして、エディ様の姿を見るなり叫ぶ。

「どういうことなんですか! クラスを移動させるだなんて! 何の権利があってそんなことができるんですか!」
「最終的な判断は学園長だ。僕を責めても意味がないんだけど? 文句があるなら学園長に言えばいい。まあ、無理だろうけど」
 
 エディ様が鼻で笑うので、デイリ様は悔しそうな顔をして尋ねる。

「どうして無理だと思うんですか。別に学園長に抗議することくらい僕にだって出来ますよ!」
「そんなことをしたら、君はすぐに退学処分になるだけだ」
「……何ですって?」
「あのさ、君たちがリネにしたことはいじめなんだよ。しかも、クラスぐるみだよね。なら、そんなクラスは無いほうが良いだろ?」
「いじめじゃありません!」

 デイリ様が否定の言葉を発した。

 黙っていられなくなって私も声を上げる。

「私にとってはいじめでした! 私がイライラさせてしまう態度を取っていたかもしれません。でも、いじめをしたり、人を傷付ける発言を言っても良いわけじゃないでしょう!?」

 エディ様と繋いだままだった手を強く握りしめると、エディ様も握り返してくれた。

「主犯格はシンス候爵令息、君だろ? なら、罰として本来なら退学処分になってもおかしくないはずだ。この学校の規則に当たり前のことだけど、いじめ行為は許されないと書かれている。いじめ行為が認められた場合は罰則を科すとも書かれているんだよ」
「な、なら、なぜ、僕は退学になっていないんですか! いじめ行為が認められていないという証拠でしょう!?」
「……まずは君が一人でその理由を考えてみたらどうかな?」
 
 エディ様が嘲笑すると、デイリ様は怒りの感情を押し殺すかのよう唇を噛んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!

ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。 同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。 そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。 あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。 「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」 その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。 そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。 正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。

殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。

和泉鷹央
恋愛
 雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。  女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。  聖女の健康が、その犠牲となっていた。    そんな生活をして十年近く。  カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。  その理由はカトリーナを救うためだという。  だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。  他の投稿サイトでも投稿しています。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【改稿版・完結】その瞳に魅入られて

おもち。
恋愛
「——君を愛してる」 そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった—— 幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。 あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは…… 『最初から愛されていなかった』 その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。 私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。  『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』  『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』 でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。 必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。 私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……? ※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。 ※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。 ※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。 ※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。

クリスティーヌの本当の幸せ

宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。 この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

処理中です...