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14 いじめ行為に対する処罰③
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「反省しているか……って」
私に言い返されると思っていなかったのか、先生は少しの間、動きを止めていた。
数十秒後、我に返ったセルフ先生は何度も頷く。
「もちろんよ! 反省しているから謝りに来たんじゃないの。ねえ、ティファスさん、もういいでしょう? 大勢の生徒が見ているわ。許してくれるわよね? 私はあなたをいじめてなんていなかったし」
口にははっきりと出さないけれど、早く許してくれと言われているみたいだった。
こんな態度で「反省しているから謝りに来た」と言われても、口だけだということが丸わかりで許せるはずがない。
周りの生徒が私たちの様子に気が付いて、ちらちらと見てくるのがわかった。
あまり目立ちたくないので、大きく息を吐いて先生にお願いする。
「先生、とにかく立ち上がってください」
「あ、ありがとう!」
まだ許すだなんて言っていないのに、先生の表情が明るくなった。
「誤解しないでください。私は先生のことを許してはいません」
「そんな……! 私は何もしていないじゃないの!」
「いじめを止めようとしなかったじゃないですか」
「そ、それは、子供同士の喧嘩に大人が介入するわけにはいかないでしょう? 私が介入することによって、あなたへのいじめがもっとエスカレートしていた可能性だってあるじゃないの」
先生は自分は私のことを思って、わざと介入しなかったと言いたいらしい。
先生に話したことにより、いじめがエスカレートしたという話は聞いたことがある。
でも、今回のケースは違う。
セルフ先生はいじめの現場は見て見ぬふりして止めることはしなかった。
そして、いじめをするなら、クラスメイト以外に知られないようにしろと口止めしていた。
「先生が自分のことを大事な気持ちはわかります。面倒な生徒が自分の担当するクラスにいたから嫌でしたよね?」
「そ、そんな……。悪いのはいじめをするほうだわ」
先生は周りの目を気にするように、小声で続ける。
「お願い。許してください。もう二度とこのような過ちを起こさないと誓うわ。本当に反省していて夜も眠れないのよ」
――信じても良いの?
先生は本当は善人、もしくは普通の人なの?
トントンとテーブルを叩く音が聞こえて、そちらに目を向ける。
エレインが先生を睨みつけながら、テーブルを人差し指で叩いていた。
テーブルを叩くことによって苛立ちを抑えようとしているみたいだった。
エレインの姿を見て気付く。
普通なら、簡単に許すことではないわよね?
今、どうすることが正解なのかはわからない。
先生のほうを見ると期待の眼差しで私を見つめている。
駄目よ、許しちゃいけない。
本当に反省しているかわからないもの。
「今はまだ許すなんてできません。これからの先生の行動次第です。今の先生からは私に対して悪いことをしたという気持ちより、自分の将来のほうが大事としか伝わってきませんから許したくもありません」
「何ですって!? そんなことはないわ! ちゃんと反省しているの! それにこれからってどれくらいの期間なの!?」
「そんなことを言う時点で反省できていないんだとわかります。いじめられている時、私がどんな思いをしていたか、先生はわかりますか?」
「わかるわけないでしょう! 嫌なら嫌と言えばいいだけじゃないの!」
「嫌だと言ってもどうせ助けなかったでしょう!?」
色々と嫌なことが思い出されて、声を荒らげてしまった。
「そんな……、わからないわ。それに、親御さんから何も連絡がなかったし、あなたは気にしていないと思ったのよ」
私の勢いに圧されたのか、先生は視線を彷徨わせながら答える。
「先生、多くの生徒に見られていますよ? もう、どこかに行ってください」
このままでは埒が明かないと思ったのか、エレインが冷たい声で言うと先生はゆっくりと立ち上がった。
スカートに付いた汚れを手で払い、先生は私に目を向ける。
「また放課後に話をしましょう。それまでによく考えておいて? あなたが許してくれれば、一人の人間が助かるのよ。過去は変えられないわ。だから、未来を見ましょう? このままじゃ、私は不幸になってしまうわ」
「そんなこと、私に知ったことではありません」
冷たい言い方かもしれない。
でも、私を見捨てた人が相手なら、私だって見捨てたって良いでしょう?
そんな嫌な感情が浮かんで、つい言い返してしまった。
「ティファスさん」
先生が焦った顔で私の肩に触れてこようとした時、先生の後ろからエディ様が現れた。
「セルフ先生」
「え? あ、ニーソンくん……」
学校の先生は生徒を呼ぶ時、姓のあとに女性は『さん』、男性には『くん』を付ける。
だから、エディ様のこともニーソンくんだ。
なんだか変な感じがするわ。
エディ様は冷たい目を向けて先生に話しかける。
「先生とお話したいことがあるんです。少しだけ、お時間いただけませんか?」
「そんな……、あの、私は、今は忙しくて」
「そうですか。じゃあ、放課後はどうです?」
「放課後も忙しいから無理だわ」
先生は今すぐにこの場から逃げ出したいといった感じで、私たちのいるテーブルから離れていく。
「放課後、リネの所へ行くと言っていましたね? では、その時にお話させてもらいましょう」
エディ様が冷たい笑みを浮かべると、先生は今にも泣き出しそうな顔になった。
私に言い返されると思っていなかったのか、先生は少しの間、動きを止めていた。
数十秒後、我に返ったセルフ先生は何度も頷く。
「もちろんよ! 反省しているから謝りに来たんじゃないの。ねえ、ティファスさん、もういいでしょう? 大勢の生徒が見ているわ。許してくれるわよね? 私はあなたをいじめてなんていなかったし」
口にははっきりと出さないけれど、早く許してくれと言われているみたいだった。
こんな態度で「反省しているから謝りに来た」と言われても、口だけだということが丸わかりで許せるはずがない。
周りの生徒が私たちの様子に気が付いて、ちらちらと見てくるのがわかった。
あまり目立ちたくないので、大きく息を吐いて先生にお願いする。
「先生、とにかく立ち上がってください」
「あ、ありがとう!」
まだ許すだなんて言っていないのに、先生の表情が明るくなった。
「誤解しないでください。私は先生のことを許してはいません」
「そんな……! 私は何もしていないじゃないの!」
「いじめを止めようとしなかったじゃないですか」
「そ、それは、子供同士の喧嘩に大人が介入するわけにはいかないでしょう? 私が介入することによって、あなたへのいじめがもっとエスカレートしていた可能性だってあるじゃないの」
先生は自分は私のことを思って、わざと介入しなかったと言いたいらしい。
先生に話したことにより、いじめがエスカレートしたという話は聞いたことがある。
でも、今回のケースは違う。
セルフ先生はいじめの現場は見て見ぬふりして止めることはしなかった。
そして、いじめをするなら、クラスメイト以外に知られないようにしろと口止めしていた。
「先生が自分のことを大事な気持ちはわかります。面倒な生徒が自分の担当するクラスにいたから嫌でしたよね?」
「そ、そんな……。悪いのはいじめをするほうだわ」
先生は周りの目を気にするように、小声で続ける。
「お願い。許してください。もう二度とこのような過ちを起こさないと誓うわ。本当に反省していて夜も眠れないのよ」
――信じても良いの?
先生は本当は善人、もしくは普通の人なの?
トントンとテーブルを叩く音が聞こえて、そちらに目を向ける。
エレインが先生を睨みつけながら、テーブルを人差し指で叩いていた。
テーブルを叩くことによって苛立ちを抑えようとしているみたいだった。
エレインの姿を見て気付く。
普通なら、簡単に許すことではないわよね?
今、どうすることが正解なのかはわからない。
先生のほうを見ると期待の眼差しで私を見つめている。
駄目よ、許しちゃいけない。
本当に反省しているかわからないもの。
「今はまだ許すなんてできません。これからの先生の行動次第です。今の先生からは私に対して悪いことをしたという気持ちより、自分の将来のほうが大事としか伝わってきませんから許したくもありません」
「何ですって!? そんなことはないわ! ちゃんと反省しているの! それにこれからってどれくらいの期間なの!?」
「そんなことを言う時点で反省できていないんだとわかります。いじめられている時、私がどんな思いをしていたか、先生はわかりますか?」
「わかるわけないでしょう! 嫌なら嫌と言えばいいだけじゃないの!」
「嫌だと言ってもどうせ助けなかったでしょう!?」
色々と嫌なことが思い出されて、声を荒らげてしまった。
「そんな……、わからないわ。それに、親御さんから何も連絡がなかったし、あなたは気にしていないと思ったのよ」
私の勢いに圧されたのか、先生は視線を彷徨わせながら答える。
「先生、多くの生徒に見られていますよ? もう、どこかに行ってください」
このままでは埒が明かないと思ったのか、エレインが冷たい声で言うと先生はゆっくりと立ち上がった。
スカートに付いた汚れを手で払い、先生は私に目を向ける。
「また放課後に話をしましょう。それまでによく考えておいて? あなたが許してくれれば、一人の人間が助かるのよ。過去は変えられないわ。だから、未来を見ましょう? このままじゃ、私は不幸になってしまうわ」
「そんなこと、私に知ったことではありません」
冷たい言い方かもしれない。
でも、私を見捨てた人が相手なら、私だって見捨てたって良いでしょう?
そんな嫌な感情が浮かんで、つい言い返してしまった。
「ティファスさん」
先生が焦った顔で私の肩に触れてこようとした時、先生の後ろからエディ様が現れた。
「セルフ先生」
「え? あ、ニーソンくん……」
学校の先生は生徒を呼ぶ時、姓のあとに女性は『さん』、男性には『くん』を付ける。
だから、エディ様のこともニーソンくんだ。
なんだか変な感じがするわ。
エディ様は冷たい目を向けて先生に話しかける。
「先生とお話したいことがあるんです。少しだけ、お時間いただけませんか?」
「そんな……、あの、私は、今は忙しくて」
「そうですか。じゃあ、放課後はどうです?」
「放課後も忙しいから無理だわ」
先生は今すぐにこの場から逃げ出したいといった感じで、私たちのいるテーブルから離れていく。
「放課後、リネの所へ行くと言っていましたね? では、その時にお話させてもらいましょう」
エディ様が冷たい笑みを浮かべると、先生は今にも泣き出しそうな顔になった。
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