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32 姉との1戦目③
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「私はっ、私は何もしていません!」
お姉様は声を震わせながら、そう叫ぶと膝から崩れ落ちるように床に座り込んだ。
「酷いわ。私は何もしていないのに、嘘の噂を流された上に、妹にまで嘘をつかれるだなんて!」
お姉様は両手で顔を覆い、嗚咽をあげて泣いているふりをしている。
今まで多くの人たちは、お姉様のこの嘘泣きに騙されてきた。
でも、ここにいる人たちは違った。
「床に座り込むなんてはしたないわ。立ち上がったほうがよろしくてよ?」
近くにいた女性がお姉様に声を掛けた。
すると、お姉様は顔を覆ったまま首を横に振る。
「でも、このままでは私は誤解されたままで終わってしまいます!」
「誤解ではありません!」
私が叫ぶと、お姉様はすかさず言い返してくる。
「証拠がないわ! あるのなら見せてみなさいよ!」
「あるとしたら、メイドの証言でしょうか」
私が応えると、お姉様は泣き真似をするのも忘れ、両手を顔から離して勝ち誇った笑みを浮かべる。
「いいわ。メイドに証言させましょう! 後日で良いのかしら? それとも今すぐ連れてきましょうか?」
どうだ、と言わんばかりのお姉様を見て苦笑する。
お父様の時もそうだったけれど、苦手意識は相手を怖くさせるものなのね。
開き直ってしまった今となっては、お姉様の事なんて、ちっとも怖くない。
「大丈夫ですよ、お姉様。もう来てもらっています」
「は……?」
私の答えが予想外だったのか、お姉様は口を大きく開けた。
「お姉様がそう言うだろうと思ったので、すでに連れてきているんです」
「そ、そうなの? まあ良いわ。私の無実が少しでも早くに証明されるものね」
お姉様だけでなく、両親も嫌がらせをするように命令されてなんていないと、メイドが言うと思い込んでいるのだと思う。
けれど、そんな人間を私はともかく、エディ様たちが呼ぶわけがないことに、お姉様たちは気付いていなかった。
恐る恐る、会場の出入り口から入ってきたのは、ティファス家での私の専属メイドだった。
メイド服姿で現れた彼女は、私のすぐ近くまで来ると立ち止まり、オドオドと周りを見回した。
そして、お姉様たちの姿を見つけると、びくりと体を震わせる。
「こんなに大勢の前だからって緊張しなくても良いわ。あなたは真実だけ述べればいいのよ」
「は……、はい」
私の言葉にメイドが頷いたのを確認してから質問する。
「あなたは私の世話をしてくれていたけれど、私が望んでいないことまでやっていたわよね? それはどうしてなの? あなたが私を嫌いだからやっていたの?」
「そ、そういうわけではございません!」
「じゃあ、どうして似合わないとわかっている化粧をしたり、私に偉そうな態度を取っていたりしたの? 私が悲しんでいたら笑ってもいたわよね?」
私が追求すると、メイドの体が震え始めた。
彼女の中で、未だにどっちに付けば良いのか迷っているのかもしれない。
真実を話せばティファス家では働けなくなる。
でも、嘘を話せば、お義父様が社交界で彼女の話をするだろうから、ティファス家を追い出されてしまったら、彼女のメイドとしての働き口は一切なくなる。
今回、正直に話せば、お義父様が働き口を紹介すると言っている。
どのみち、彼女には大した未来は待っていない。
メイドは大きく深呼吸してから叫ぶ。
「トワナ様から命令されたんです! 私は何も悪くありません! それに旦那様もリネ様に辛く当たることに反対はしておられませんでした!」
「やめろ!」
「やめなさい!」
お父様とお姉様が同時に叫び、お母様はショックでその場に崩れ落ちてしまった。
「お姉様もお父様もその様子ですと、彼女の言っていることを肯定しているとしか思えませんわね」
「違うわ! これは嘘よ! リネに頼まれて彼女が嘘をついているだけよ!」
私の言葉を否定したあと、お姉様は病弱設定はどこへやら、大声で周りを見回して叫ぶ。
「このメイドは嘘をついています! 嘘の証言が認められるわけがありません!」
「トワナ、帰るぞ! 最初から私たちを馬鹿にするつもりだったんだ!」
お父様はお母様の手を取って立ち上がらせると、私を睨みつけてくる。
「リネ、この親不孝者めが! 絶対に許さないからな」
お姉様だけを潰すつもりだったけれど、このままでは私は縁を切られてしまいそう。
でも、もういいわ。
お父様なんかに媚びたくないもの。
意を固めて、お父様を睨み返すと、向こうが先に視線を逸らした。
そして、何か言いたげにしているお姉様を連れて、逃げるように帰っていったのだった。
※
お読みいただきありがとうございます!
次の話はトワナ視点になります。
お姉様は声を震わせながら、そう叫ぶと膝から崩れ落ちるように床に座り込んだ。
「酷いわ。私は何もしていないのに、嘘の噂を流された上に、妹にまで嘘をつかれるだなんて!」
お姉様は両手で顔を覆い、嗚咽をあげて泣いているふりをしている。
今まで多くの人たちは、お姉様のこの嘘泣きに騙されてきた。
でも、ここにいる人たちは違った。
「床に座り込むなんてはしたないわ。立ち上がったほうがよろしくてよ?」
近くにいた女性がお姉様に声を掛けた。
すると、お姉様は顔を覆ったまま首を横に振る。
「でも、このままでは私は誤解されたままで終わってしまいます!」
「誤解ではありません!」
私が叫ぶと、お姉様はすかさず言い返してくる。
「証拠がないわ! あるのなら見せてみなさいよ!」
「あるとしたら、メイドの証言でしょうか」
私が応えると、お姉様は泣き真似をするのも忘れ、両手を顔から離して勝ち誇った笑みを浮かべる。
「いいわ。メイドに証言させましょう! 後日で良いのかしら? それとも今すぐ連れてきましょうか?」
どうだ、と言わんばかりのお姉様を見て苦笑する。
お父様の時もそうだったけれど、苦手意識は相手を怖くさせるものなのね。
開き直ってしまった今となっては、お姉様の事なんて、ちっとも怖くない。
「大丈夫ですよ、お姉様。もう来てもらっています」
「は……?」
私の答えが予想外だったのか、お姉様は口を大きく開けた。
「お姉様がそう言うだろうと思ったので、すでに連れてきているんです」
「そ、そうなの? まあ良いわ。私の無実が少しでも早くに証明されるものね」
お姉様だけでなく、両親も嫌がらせをするように命令されてなんていないと、メイドが言うと思い込んでいるのだと思う。
けれど、そんな人間を私はともかく、エディ様たちが呼ぶわけがないことに、お姉様たちは気付いていなかった。
恐る恐る、会場の出入り口から入ってきたのは、ティファス家での私の専属メイドだった。
メイド服姿で現れた彼女は、私のすぐ近くまで来ると立ち止まり、オドオドと周りを見回した。
そして、お姉様たちの姿を見つけると、びくりと体を震わせる。
「こんなに大勢の前だからって緊張しなくても良いわ。あなたは真実だけ述べればいいのよ」
「は……、はい」
私の言葉にメイドが頷いたのを確認してから質問する。
「あなたは私の世話をしてくれていたけれど、私が望んでいないことまでやっていたわよね? それはどうしてなの? あなたが私を嫌いだからやっていたの?」
「そ、そういうわけではございません!」
「じゃあ、どうして似合わないとわかっている化粧をしたり、私に偉そうな態度を取っていたりしたの? 私が悲しんでいたら笑ってもいたわよね?」
私が追求すると、メイドの体が震え始めた。
彼女の中で、未だにどっちに付けば良いのか迷っているのかもしれない。
真実を話せばティファス家では働けなくなる。
でも、嘘を話せば、お義父様が社交界で彼女の話をするだろうから、ティファス家を追い出されてしまったら、彼女のメイドとしての働き口は一切なくなる。
今回、正直に話せば、お義父様が働き口を紹介すると言っている。
どのみち、彼女には大した未来は待っていない。
メイドは大きく深呼吸してから叫ぶ。
「トワナ様から命令されたんです! 私は何も悪くありません! それに旦那様もリネ様に辛く当たることに反対はしておられませんでした!」
「やめろ!」
「やめなさい!」
お父様とお姉様が同時に叫び、お母様はショックでその場に崩れ落ちてしまった。
「お姉様もお父様もその様子ですと、彼女の言っていることを肯定しているとしか思えませんわね」
「違うわ! これは嘘よ! リネに頼まれて彼女が嘘をついているだけよ!」
私の言葉を否定したあと、お姉様は病弱設定はどこへやら、大声で周りを見回して叫ぶ。
「このメイドは嘘をついています! 嘘の証言が認められるわけがありません!」
「トワナ、帰るぞ! 最初から私たちを馬鹿にするつもりだったんだ!」
お父様はお母様の手を取って立ち上がらせると、私を睨みつけてくる。
「リネ、この親不孝者めが! 絶対に許さないからな」
お姉様だけを潰すつもりだったけれど、このままでは私は縁を切られてしまいそう。
でも、もういいわ。
お父様なんかに媚びたくないもの。
意を固めて、お父様を睨み返すと、向こうが先に視線を逸らした。
そして、何か言いたげにしているお姉様を連れて、逃げるように帰っていったのだった。
※
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次の話はトワナ視点になります。
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