【完結】王女殿下に婚約者を奪われた私が隣国の訳あり国王陛下に嫁いだ結果

風見ゆうみ

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4   勘当 〜マロックSide〜

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 シアルリアが夜会を中座して公爵邸に帰り着いた頃、マロックの家には王女との婚約の書状が届けられていた。それから数時間後の夜遅くにマロックが酔っぱらった状態で帰ってきた。
 チモチノモ王国の飲酒は16歳から可能なため、そのことについては何も言われる心配はない。それよりも王女との婚約は、両親を喜ばせていることだろうと、マロックは上機嫌だった。

「父上ぇ! 僕はやりましたよぉ!」

 肌が白いため顔が真っ赤になっていることは余計にわかりやすい。一人で真っすぐ歩くこともできず、エントランスホールで執事に抱きかかえられたマロックは叫んだ。

 顔を真っ赤にした父の姿が見えた時は、自分と同じように祝杯をあげたのだと勘違いした。そして、さぞ褒めてもらえるのだろうと期待した。だが、実際の反応は予想とは真逆だった。

「これは一体どういうことだ!?」

 書状を目の前に突きつけ、マロックを20年ほど老けさせたような顔立ちのミナダ公爵は、マロックに叫んだ。

「ど、どういうことかれすってぇ?」

 ヘラヘラ笑いながら、マロックはろれつが回らない状態で聞き返す。すると、ミナダ公爵はマロックを執事から引き離し、彼の頬を打った。

「シアルリア嬢以外の女性に興味を持つなと散々言ってきたはずだ! しかも、勝手に婚約を破棄して王女と婚約しただと!?」
「い、言いつけを破ったことは謝ります。で、ですが、国王陛下は認めてくださいましたし、エルン王女との婚約はミナダ公爵家にとってプラスに働くはずです!」

 殴られたショックで一気に酔いが覚めたマロックは、怒る父に困惑の眼差しを向けた。

「そんなものは必要ない! 我々は王女との関わりを持ちたくないんだ!」
「か、関わりを持ちたくない?」
「そうだ。お前が王女に呼び出されていたことは知っていたが、お前の前にも何人かの子息が呼び出されていた。だが、どこの子息も呼び出しに応じただけで、王女の気持ちには応えてはいない! 皆、言いつけを守ったんだ! それなのに、お前は……っ!」

 青筋を立てている父を見るのは初めてのことで、マロックはさすがに自分がしてはいけないことをしてしまったことに気がついた。

「父上、申し訳ございません。ですがもう、エルン王女は乗り気なんです。今さら婚約ができないとは言えません」
「ああ、そうだろうな」

 ミナダ公爵は傍らに控えていた執事に目を向ける。何も言われずとも、執事は自分のやるべきことを把握し、フットマンに指示をする。

「マロック様の荷物をここまで運んできなさい」
「承知いたしました」

 複数のフットマンがうなずき、マロックの部屋に向かって駆け出していく。

「ぼ、僕の荷物をどうするつもりだ?」
「マロック、今回の話を聞いて、お前の母は卒倒してしまった。それくらい大変なことをお前はしてしまったんだ」
「そ、そんな……、でも、僕はエルン王女殿下の命令で……っ」
「書状には愛し合っていると書いてあったが?」
「存在感のないシアルリアよりも、美しくて華やかなエルン王女殿下に惹かれてもおかしくないでしょう?」

 マロックは必死に理解を求めたが、ミナダ公爵は認めない。

「婚約者以外に恋愛感情を持つなと言ったはずだ。大体、王女の相手はネノナカル王国の国王陛下だぞ! 国際問題になったらどうするつもりだ!?」
「相手は子供ではないですか!」
「そう言われているだけだろう。それに、周りの大人が黙っていると思うのか?」

 二人が言い合っている間に、エントランスホールには複数のトランクケースが運ばれてきた。

「マロック、お前は勘当だ。もう、お前は私の息子ではない。王女との婚約があるから私の持っている男爵の爵位をお前に授けてやる。新しい姓で王女と共に苦楽を共にすればいい」
「父上! そんなひどいことを言わないでください! 婿養子になれば僕は国王になれるんですよ!」
「そんな未来は絶対に来ない」

 ミナダ公爵は冷たく言い放つと、話は終わったと言わんばかりに、マロックに背を向けて邸の奥に向かって歩き出した。

「父上! 待ってください!」

 マロックは追いすがろうとしたが、兵士によって止められ、荷物と一緒に邸の外へ追い出された。

「なんてことをするんだ! 今は夜中だぞ!? どこへ行けって言うんだ!?」
「馬車は用意してありますので、王城へ戻り、事情を説明されてはいかがでしょうか」

 執事はそう言うと、恭しく頭を下げてから静かに扉を閉めた。鍵がかけられる音が聞こえた瞬間、マロックの目から涙があふれ出す。

「どうしてだよ。喜んでくれるって、エルン王女殿下は言っていたのに! 公爵令嬢よりも王女殿下のほうが位が上じゃないか! 婚約を破棄してからの新たな婚約なら浮気じゃない!」

 マロックはしばらくの間、薄暗い玄関ポーチで泣き続けた。
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