【完結】王女殿下に婚約者を奪われた私が隣国の訳あり国王陛下に嫁いだ結果

風見ゆうみ

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11  チモチノモ王国の貴族たちの計画 ①

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 パーティーが始まる1時間ほど前に家族が王城に着いたと連絡があった。今日のために用意してもらった赤色のドレスで父たちを出迎えると、二人は彼女を見て安堵の息を吐いた。

「どうかしましたか?」
「いや、大事にしてもらっているようだな」
「ええ。国民も歓迎してくれましたし、王城内ではお姫様待遇です」

 笑顔で話すシアルリアに、彼女の父親であるイヨトの暗かった表情も和らぐ。

「それなら良かった。遅くなったが、誕生日おめでとう」
「ありがとうございます、お父様」
「シアルリアが元気そうで良かった。それから、誕生日おめでとう。プレゼントも持ってきているから」
「ありがとうございます、お兄様。私もお二人がお元気そうで良かったです。プレゼントが何か楽しみです……が、まずはお疲れでしょう。陛下へのご挨拶のあとは、客室で少しでも休んでくださいね」

 イヨトたちの荷物はフットマンに頼んで客室に運んでもらい、メイドの先導で謁見の間へと向かう。

 久しぶりに会う父たちが少し痩せたように見えて、シアルリアは自分がいなくなってからのチモチノモ王国内がどうなっているのか気になった。
 今すぐに聞きたい気持ちにもなったが、まずはやらなければならないことを終えてからと我慢した。
 謁見の間の赤いカーペットの上を歩き、指定された場所で待っていると、ブレイズが現れ玉座に座った。

「長旅、疲れただろう。今日と結婚式の日は慌ただしいかもしれないが、その後は時間が許す限り、ここでゆっくりしていってくれ」
「「ありがとうございます」」

 父と兄が頭を下げると、ブレイズは表情を厳しくしてイヨトに尋ねる。

「エルン王女が勝手なことを言い出したが、今、チモチノモ王国内はどうなっているんだ?」
「……それが」

 言い淀むイヨトに、ブレイズは苦笑する。

「言えないんならいいよ。俺は隣国の国王という立場だし、余計に言えないよね」
「申し訳ございません。正式に宰相から連絡があるかと思います。その時まで待っていただけますでしょうか」
「もちろん。ただ、できればシアには先に教えてあげてほしい」
「……承知いたしました」

 頭を下げた父が驚いた表情をしているのを見て、シアルリアはブレイズに目を向けた。

(やっぱり違和感があるわ。3日後は結婚式だから、それまでに確認しておきたい)

 決意を新たにし、ブレイズとの話が終わるとイヨトたちと共に謁見の間を出た。

 誕生日パーティーはダンスホールで盛大に行われ、数え切れない人からお祝いの言葉とプレゼントをもらった。
 この日までに必死に覚えたネノナカル王国の貴族の名前だが、顔を見るのは初めてなので一致させるのに苦労した。

 誕生日の主役だというのに疲れ切ったシアルリアの笑みが引きつり始めると、ブレイズが近づいてきた。

「シア、一緒にケーキを食べよう」
「は、はい」

 ブレイズに手を引かれ、人の輪の中心から逃れられた彼女は大きく息を吐いて礼を言う。

「気を遣っていただきありがとうございます」
「なんのこと? 俺がケーキを食べたいだけだよ」
「そうでしたか。それは失礼しました」

(子供でこんな風に気遣える人なんてそういないんじゃないかしら)

 そう考えたシアルリアだったが、どんな行動でも怪しんでしまう自分が嫌になり、今はパーティーを楽しむことに決めた。

「シア、お誕生日おめでとう。誕生日プレゼントは夜にシアの部屋に持っていくからな!」
「どんなものをいただけるのか今から楽しみです!」
「一生懸命考えたんだ。気に入ってもらえたら嬉しいな!」
「ブレイズ陛下からいただけるなら、何でも喜べると思います」
「虫でも?」
「ごめんなさい。女性がもらって嬉しいものだと助かります」
「正直なシアが大好きだよ」

 にこりと笑うブレイズに微笑み返し、ブレイズと共に切り分けられたケーキを食べた。そして、その日の晩、ブレイズが部屋にやって来る前に、彼女の部屋に父と兄がやって来た。

「シアルリア、成人になったお前に話したいことがある。これは、チモチノモ王国の貴族で、成人になった人間しか知らない話だ」

 父のイヨトはそう前置きしてから、チモチノモ王国の貴族たちが長い期間にわたって計画してきた話を、シアルリアに伝えたのだった。
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