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12 チモチノモ王国の貴族たちの計画 ②
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チモチノモ王国の貴族たちは、先代の国王の時代からフラストレーションがたまり始めていた。先代の国王は暴君とまではいかなかったが、ワガママな性格で女性好きだった。気に入った女性がいれば、相手が既婚者であってもその場で口説きにかかる。王妃が王族も含めて浮気を禁じる法律を作ったおかげで、大事にはならずに済んだが一人息子のガズクがこの国王に似たらどうなるのかという不安があった。
当時の王妃と相談し、ガズクの婚約者は王妃に似た性格で、見目麗しい少女が選ばれた。それがエルンの母親である。
彼女が生きている間は良かった。だが、彼女は流行病にかかってしまい、エルンを生んですぐに亡くなってしまう。愛する妻がいなくなり、制御がきかなくなったガズクは、少しでも気に入らないことがあれば、理不尽な理由をつけて罰した。
こんな王家を存続させるわけにはいかない。そう思った貴族たちエルンとブレイズの婚約を決めた。
そうすることで、エルンをチモチノモ王国から出し、新たな王家を築いていくつもりだった。
貴族たちはエルンがブレイズのもとに嫁ぐことを嫌がるということも見抜いていた。そのため、浮気の罰則を今まで以上に強化した。未成年の子供たちに浮気をしてはいけないと言い続け、そうすることで、エルンの浮気を防ぎ、ネノナカル王国から婚約の解消もしくは破棄をされないようにした。
15年以上もの間、守られてきたにもかかわらず、マロックは公爵令息でありながらも「浮気をするな」という当たり前の行動も守れなかった。穏便に済ませるための計画が一夜にして崩れてしまい、貴族たちの怒りは尋常のものではなかった。
「どうして成人するまでに、そのことを伝えてくれなかったのですか? 早いうちにそのことを教えてくれていれば……」
「未成年の間に信用できる人物かを見抜く必要があった。浮気をするなという言いつけを守れない人間が、秘密を漏らさないとは限らない」
「ですが、成人になっても秘密を漏らす人はいるのではないでしょうか」
シアルリアが尋ねると、イヨトは苦笑する。
「そうだな。ただ、成年の年になると、それを機に結婚するものも多い。シアルリア、お前もそうだろう。結婚することで、自分や家族が大事になってくる。そして、今の王家が良くないものだということに気づいて、自分の地位を守る人間が多くなる」
「家族が大事だからそちらを優先するという気持ちは理解できます。ですが、口の軽い人間は必ずいると思うのです」
「シアルリア、秘密を漏らした時は、死をもって償うことになっているんだ」
「……そういうことですか」
(秘密を漏らした人間がいた場合、本人が死を選ばずともそれが誰かを調べて、その人を暗殺するということね。貴族の多くが敵に回るだけでなく、いつ自分が殺されるかわからないという恐怖に怯えながら生きていくのは辛いわ)
シアルリアはとりあえず納得したあと、これからどうしていくつもりなのかを尋ねた。
「ガズク陛下が王のままでは、権限を使ってエルン王女を女王にしかねない。そうならないように今頃はガズク陛下の強制的な退位が決まっているはずだ」
「……だから、エルン王女がブレイズ陛下のもとに嫁ごうとしているんですね」
「「なんだって?」」
旅の道中だったイヨトたちには、詳しい情報が伝わっていなかった。ブレイズから許可を得ていたシアルリアはエルンがブレイズに送った手紙の内容を二人に話したのだった。
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