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15 王女の来訪 ①
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次の日の朝は、ブレイズのはからいで久しぶりに家族だけで食事をすることになった。ブレイズの記憶についての話は二人にしても良いと言われていたため、食事の前に話をした。
家族でゆっくり話せるようにと、空いている客室に十人が一度に会食できる大きなテーブルが運び込まれていた。テーブルの上には果物やパン。果実酒やジュース、スープや肉料理などが置かれ、好きなものを自分でとることができるスタイルになっている。
他国の王家のメイドを使うのは気が引けると言うので、バイキングスタイルになったのだ。
元々、子供のブレイズが食べ物の好き嫌いがあったから、こうなったらしいが、シアルリアも好きなものを好きなだけ食べられるこの食べ方を気に入っていた。
客室にはバルコニーがあり、中庭が見渡せるようになっている。色とりどりの花が咲き誇り、木々は青々としていて、見ているだけで爽やかな気分になる。小鳥たちも同じ気持ちなのかと思うほど、あちらこちらでさえずりが聞こえてくる。
「ブレイズ陛下は悪い方ではなさそうだが、夫としてはどうなんだろうか」
不敬な発言になってしまうためか、室内には家族しかいないのに、シャインは小声でシアルリアに話しかけた。
「価値観がある程度合っていて、思いやりの心を持ってる人であれば私は多くは望みません。元々の婚約者があんな人ですし、余計にブレイズ陛下が素敵だと思えていますから心配しないでください」
「それならいいんだが……。まあ、今のシアルリアは実家にいる時よりも生き生きしているようだし、これでいいとするか」
「お兄様、心配していただきありがとうございます」
「兄なんだから当たり前だよ」
息子たちのやり取りを微笑ましく眺めていた父は、話が途切れたところで表情を険しくして話し始める。
「エルン王女のことだ。結婚式までにはこちらに押しかけてくるつもりだろう。対処をしておかなければならないぞ」
「承知しています。後ほど、ブレイズ陛下と詳しい話をするつもりです。でも、どうしてエルン王女はブレイズ陛下との結婚を望むのでしょう」
「父親が退位を迫られているんだ。自分の身が安泰ではないことに気付いたんだろう」
「だからといって、どうして妻になろうと思ったのでしょうか。陛下との結婚が嫌だったからマロックを誘惑したのでしょう?」
眉をひそめたシアルリアにシャインが答える。
「背に腹は代えられないというやつだろう。ブレイズ陛下と結婚すれば、贅沢な生活は続けられるし、浮気をしたって怒られない。自分が実権を握って、国を好きなように動かすつもりなんだと思う」
「自分勝手にも程がありますわね」
眉間に刻まれたシワを深くする娘を見て、イヨトは苦笑する。
「たとえ、ブレイズ陛下が子供のままだったとしても、その考えがまかり通るとは思えないんだがな」
「他国とはいえ王女ですし、結婚してしまえば王妃です。言うことを聞かせられると思っているのでしょう」
シャインはそう言って鼻で笑った。
(陛下の精神が子供でも国が成り立ってきたのは、臣下の働きだということに気づかないのかしら)
シアルリアも同じく呆れた気持ちになり、小さく息を吐いた。
「大丈夫そうか?」
「はい。エルン王女よりも私のほうがブレイズ陛下とは信頼関係を築けているはずですから」
微笑んで答え、胸元に光るネックレスに触れた。
予想通り、エルンたちはシアルリアたちの結婚式が行われる前にネノナカル王国の王城に乗り込んできた。
「殺風景な城だな。結婚後にはもっと華やかにしてやる」
謁見の間へとメイドの先導で歩いている間、エルンは機嫌よくそんな話をしていた。
この時のエルンはシアルリアが受け入れられて、自分が受け入れられないなんてことはないと思い込んでいたのだった。
家族でゆっくり話せるようにと、空いている客室に十人が一度に会食できる大きなテーブルが運び込まれていた。テーブルの上には果物やパン。果実酒やジュース、スープや肉料理などが置かれ、好きなものを自分でとることができるスタイルになっている。
他国の王家のメイドを使うのは気が引けると言うので、バイキングスタイルになったのだ。
元々、子供のブレイズが食べ物の好き嫌いがあったから、こうなったらしいが、シアルリアも好きなものを好きなだけ食べられるこの食べ方を気に入っていた。
客室にはバルコニーがあり、中庭が見渡せるようになっている。色とりどりの花が咲き誇り、木々は青々としていて、見ているだけで爽やかな気分になる。小鳥たちも同じ気持ちなのかと思うほど、あちらこちらでさえずりが聞こえてくる。
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不敬な発言になってしまうためか、室内には家族しかいないのに、シャインは小声でシアルリアに話しかけた。
「価値観がある程度合っていて、思いやりの心を持ってる人であれば私は多くは望みません。元々の婚約者があんな人ですし、余計にブレイズ陛下が素敵だと思えていますから心配しないでください」
「それならいいんだが……。まあ、今のシアルリアは実家にいる時よりも生き生きしているようだし、これでいいとするか」
「お兄様、心配していただきありがとうございます」
「兄なんだから当たり前だよ」
息子たちのやり取りを微笑ましく眺めていた父は、話が途切れたところで表情を険しくして話し始める。
「エルン王女のことだ。結婚式までにはこちらに押しかけてくるつもりだろう。対処をしておかなければならないぞ」
「承知しています。後ほど、ブレイズ陛下と詳しい話をするつもりです。でも、どうしてエルン王女はブレイズ陛下との結婚を望むのでしょう」
「父親が退位を迫られているんだ。自分の身が安泰ではないことに気付いたんだろう」
「だからといって、どうして妻になろうと思ったのでしょうか。陛下との結婚が嫌だったからマロックを誘惑したのでしょう?」
眉をひそめたシアルリアにシャインが答える。
「背に腹は代えられないというやつだろう。ブレイズ陛下と結婚すれば、贅沢な生活は続けられるし、浮気をしたって怒られない。自分が実権を握って、国を好きなように動かすつもりなんだと思う」
「自分勝手にも程がありますわね」
眉間に刻まれたシワを深くする娘を見て、イヨトは苦笑する。
「たとえ、ブレイズ陛下が子供のままだったとしても、その考えがまかり通るとは思えないんだがな」
「他国とはいえ王女ですし、結婚してしまえば王妃です。言うことを聞かせられると思っているのでしょう」
シャインはそう言って鼻で笑った。
(陛下の精神が子供でも国が成り立ってきたのは、臣下の働きだということに気づかないのかしら)
シアルリアも同じく呆れた気持ちになり、小さく息を吐いた。
「大丈夫そうか?」
「はい。エルン王女よりも私のほうがブレイズ陛下とは信頼関係を築けているはずですから」
微笑んで答え、胸元に光るネックレスに触れた。
予想通り、エルンたちはシアルリアたちの結婚式が行われる前にネノナカル王国の王城に乗り込んできた。
「殺風景な城だな。結婚後にはもっと華やかにしてやる」
謁見の間へとメイドの先導で歩いている間、エルンは機嫌よくそんな話をしていた。
この時のエルンはシアルリアが受け入れられて、自分が受け入れられないなんてことはないと思い込んでいたのだった。
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