【完結】王女殿下に婚約者を奪われた私が隣国の訳あり国王陛下に嫁いだ結果

風見ゆうみ

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16  王女の来訪 ②

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 エルンと共にマロックが来ることは知っていたが、シアルリアとしては複雑な気持ちだった。

(エルン王女たちに会いたくないけれど、姿を見せなければ、私とブレイズ陛下がう上手くいっていないように思われてしまうかもしれない)

 エルンたちを少しでも喜ばせたくなかった。

 式はまだだが、先日、結婚の契約書を結んだため、彼女とブレイズは夫婦になっている。そのことは国民には明日の朝の新聞で知らされることになっていた。

「緊張してるのか?」

 ブレイズと共に謁見の間に向かっている途中、黙り込んでいたからか、そう問いかけられた。

「……そうですね。本人たちを前にして冷静でいられるかどうか、少し心配になってきました」
「シアなら大丈夫だよ。あまりにも感情的になっていたら、俺が話を進めるから心配するな」
「ありがとうございます。ところで、二人の前では子供のふりをするのですか?」
「最初はそうするよ。何を考えているのか知りたいからな」
「では、私は陛下が演技をしている間は、話を合わせることにします」

 エルンたちの言おうとしていることなど、大体の予想はついている。二人でシミュレーションはしているが、予想通りの展開になるとは限らない。
 シアルリアは気持ちを切り替えると共に、気を引き締め直した。

 今までは玉座を見上げる位置に立っていた彼女だが、今日は違う。豪奢な玉座の斜め後ろに、控えめな装飾の椅子が置かれており、シアルリアはそこに座ることが決まっていた。

 王妃という重責を担うことは覚悟していたつもりだが、やはり、今まで立ったことのない位置にいると不安からか体が重く感じられた。
 
「ブレイズ陛下!」

 エルンの弾んだ声が聞こえた瞬間、シアルリアは目を見開く。

(前回は婚約者を奪われてしまった。今回は負けないわ)

 シアルリアはエルンに軽く一礼したあと、王妃が座る椅子の前に立つ。ブレイズが座ってからでないと腰を下ろすことはできない。

 十数段下には着飾ったエルンとジャケットとスラックス姿のマロックがいた。マロックはシアルリアを見つめて口を開こうとしたが、エルンが先に話し始める。

「陛下にお会いできて光栄です。お元気そうで良かったですわ」
「それはどうもありがとう。で、俺はあなたたちに用事がないんだ。帰ってくれる?」
「陛下、私が正式なあなたのお嫁さんです」
「断ってきたのはそっちだろ。俺のお嫁さんはシアだ。あなたじゃない」

 ぷいっとブレイズがそっぽを向くと、エルンは笑う。

「陛下では話になりませんわね。大人だけで話しますから、宰相を読んでいただけませんか」
「そんなことはしなくていい。俺の話なんだから俺が決める!」
「おい、マロック!」

 頑なな態度に苛立ったのか、エルンは黙ったままのマロックを促す。

「お前とシアルリアは愛し合っていたのだろう? 彼女を自分に返してもらうように訴えろ!」
「は、はい!」

 マロックはうなずくと、冷ややかな目で自分を見つめているシアルリアに話しかける。

「シアルリア、悪かった。やっと目が覚めたんだ。君への愛が蘇った。ブレイズ陛下と結婚するのはやめて、僕と一緒になってくれ!」
「陛下、話をしてもよろしいですか?」
「いいよ」
「ありがとうございます」

 シアルリアはブレイズに許可を取ってから立ち上がり、マロックの目を見据えた。

「私はブレイズ陛下と結婚したの。あきらめてちょうだい。結婚していなくても、あなたを選ぶことはないけどね」
「「なんだって!?」」

 マロックとエルンが大きな声で聞き返した。



 
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