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18 あなたは悪くないわ!
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忙しいながらも、フェル殿下はカンバーとの時間を今までよりも多く取り、大会の準備を進めていった。
そして、時は過ぎて、大会当日の朝になり、会場に向かう馬車の中で、フェル殿下が教えてくれたことがあった。
「今回の大会でカンバーが優勝できたら、議会でしきたりについての話をするつもりだ」
「……しきたりの話ですか?」
「ああ。しきたりを変えろとは言わない。ルールを変えるつもりだ」
「ルールを変えるというのは、どういうことでしょう」
どういう意味かわからなくて聞いてみた。
「優秀な犬を飼っている人間の意見が通るなら、議会で話し合う意味がないだろう。だから、投票制に変更しようと思っている」
「誰がどの案に入れたかわからないようにするんですね」
「その場で多数決で決めるから、相手の顔を窺うことになる。でも、誰がどれに入れたかわからなければ、自分の意見も言いやすくなるだろう」
今の状態だと、優秀な犬を飼っている人の意見に追従するだけだものね。
「しきたりを変えたいところだが、人間の都合に犬を巻き込むのは申し訳ないが、世界的なものだからな」
フェル殿下の言うとおりだ。パゼリノ王国の国内でなら許されても、しきたりを変えることは世界中の国と話をしなければならない。
世界で一番賢い犬と認められれば、しきたりをなくすことはできるのかしら。
そう考えた時、馬車は目的地に着いた。
*****
私が話をしていたこともあり、カンバーはフェル殿下の期待を裏切ることなく、完璧な動きをした。前回の敗因になった【待て】も、気の毒になってしまうくらいに、よだれを垂らしながらも我慢した。
それはファンクも同じで、ストレスがかかりすぎないようにと決められた時間内を二匹ともが耐えてみせた。
最終的には総合得点でカンバーが勝ち、今回の優勝はカンバーだった。勝ったとわかったカンバーは、フェル殿下に飛びついて喜んだ。そんなふたりを見て感動をしていると、リリが話しかけてくる。
『カンバー様は本当に素敵だったわ! でも、ちょっと、ファンクもかわいそうね』
そう言われて、ファンクの姿を探すと、クランボ様の前でうなだれていた。クランボ様の表情は険しいもので、声をかけようか迷った。でも、火に油を注ぎそうな気もしたので、明日にフェル殿下に確認してもらうことにした。
この日の夜は、王城でカンバーには大好きな食べ物をたくさん食べさせた。
日頃は健康のために茹でた野菜が多かったから、味のついていないお肉をたくさん食べることができたカンバーは、とても嬉しそうだった。
『今日は素敵な日ね! カンバー様は素敵だったし、美味しい食事もできたもの!』
カンバーの祝勝会からの帰り、リリもたくさんおこぼれをもらったので、ご満悦といった様子で部屋までの道を歩いていた。
大会後のファンクがクランボ様に叱られていたようだから、それが心配だわ。ファンクはクランボ様に喜んでもらおうと必死だった。結果が出なかったからといって、責めるのは違うでしょう。
ファンクが望んで大会に出ているわけじゃないんだもの。クランボ様がファンクを大会に出して、結果を出させようとしているだけなのに、それで怒られるなんてファンクが可哀想すぎる。
あの時のことを思い出して嫌な気分になっていると、リリが足を止めた。
「どうしたの、リリ」
『ファンクの匂いがするわ。でも、なんか、変なニオイもする』
『変なニオイ?』
聞き返した時、私の部屋の方向から兵士が走ってきた。兵士は私の姿を確認すると叫ぶ。
「ナナリー様、大変です! ファンクが傷だらけでナナリー様の部屋の前で横たわっているんです!」
「ええっ!?」
聞き返しはしたものの、リリの変なニオイというのが血の匂いではないかと思って駆け出した。
『ナナリー! どうかしたの?』
「リリ! フェル殿下を呼んできて! あなたはお医者様を呼んできてちょうだい!」
「承知いたしました!」
『わかった!』
リリは一声吠えると、フェル殿下の部屋に向かって走っていく。兵士も言われた通り、城に常駐している獣医を呼びに行ってくれた。
傷だらけだなんて、クランボ様はファンクに体罰を与えたのかしら。もし、そうだとしたら、ファンクからクランボ様を引き離さないといけない。
私の部屋の前には、兵士が言っていた通り、ところどころに血が滲んでいるファンクが寝そべっていた。
「ファンク! 一体、何があったの?」
『うう。最後に見る顔がお前だなんて……。リリちゃんは?』
『馬鹿なことを言わないで。リリならもうすぐ来るわ。それよりも、一体、何があったの?』
ファンクの傷を見てみると、どうやら熱いものを押し付けられたのか火傷しているようだった。丸い形をしているから葉巻かもしれない。
『わからない。でも、カンバーたちが喜んでるのを見て、とても怒ってた。だから、俺が悪いんだと思う』
『あなたは悪くないわ!』
すっかり落ち込んでるファンクを慰めるように頭を撫でていると、ファンクの体が震え始めた。
「どうしたの、ファンク!」
声に出して叫ぶと、ファンクが「くぅぅ」と鳴いた。
「こんなところにいたんですねぇ」
しゃがんでいる私の後方から現れたのは、冷ややかな笑みを浮かべたクランボ様だった。
そして、時は過ぎて、大会当日の朝になり、会場に向かう馬車の中で、フェル殿下が教えてくれたことがあった。
「今回の大会でカンバーが優勝できたら、議会でしきたりについての話をするつもりだ」
「……しきたりの話ですか?」
「ああ。しきたりを変えろとは言わない。ルールを変えるつもりだ」
「ルールを変えるというのは、どういうことでしょう」
どういう意味かわからなくて聞いてみた。
「優秀な犬を飼っている人間の意見が通るなら、議会で話し合う意味がないだろう。だから、投票制に変更しようと思っている」
「誰がどの案に入れたかわからないようにするんですね」
「その場で多数決で決めるから、相手の顔を窺うことになる。でも、誰がどれに入れたかわからなければ、自分の意見も言いやすくなるだろう」
今の状態だと、優秀な犬を飼っている人の意見に追従するだけだものね。
「しきたりを変えたいところだが、人間の都合に犬を巻き込むのは申し訳ないが、世界的なものだからな」
フェル殿下の言うとおりだ。パゼリノ王国の国内でなら許されても、しきたりを変えることは世界中の国と話をしなければならない。
世界で一番賢い犬と認められれば、しきたりをなくすことはできるのかしら。
そう考えた時、馬車は目的地に着いた。
*****
私が話をしていたこともあり、カンバーはフェル殿下の期待を裏切ることなく、完璧な動きをした。前回の敗因になった【待て】も、気の毒になってしまうくらいに、よだれを垂らしながらも我慢した。
それはファンクも同じで、ストレスがかかりすぎないようにと決められた時間内を二匹ともが耐えてみせた。
最終的には総合得点でカンバーが勝ち、今回の優勝はカンバーだった。勝ったとわかったカンバーは、フェル殿下に飛びついて喜んだ。そんなふたりを見て感動をしていると、リリが話しかけてくる。
『カンバー様は本当に素敵だったわ! でも、ちょっと、ファンクもかわいそうね』
そう言われて、ファンクの姿を探すと、クランボ様の前でうなだれていた。クランボ様の表情は険しいもので、声をかけようか迷った。でも、火に油を注ぎそうな気もしたので、明日にフェル殿下に確認してもらうことにした。
この日の夜は、王城でカンバーには大好きな食べ物をたくさん食べさせた。
日頃は健康のために茹でた野菜が多かったから、味のついていないお肉をたくさん食べることができたカンバーは、とても嬉しそうだった。
『今日は素敵な日ね! カンバー様は素敵だったし、美味しい食事もできたもの!』
カンバーの祝勝会からの帰り、リリもたくさんおこぼれをもらったので、ご満悦といった様子で部屋までの道を歩いていた。
大会後のファンクがクランボ様に叱られていたようだから、それが心配だわ。ファンクはクランボ様に喜んでもらおうと必死だった。結果が出なかったからといって、責めるのは違うでしょう。
ファンクが望んで大会に出ているわけじゃないんだもの。クランボ様がファンクを大会に出して、結果を出させようとしているだけなのに、それで怒られるなんてファンクが可哀想すぎる。
あの時のことを思い出して嫌な気分になっていると、リリが足を止めた。
「どうしたの、リリ」
『ファンクの匂いがするわ。でも、なんか、変なニオイもする』
『変なニオイ?』
聞き返した時、私の部屋の方向から兵士が走ってきた。兵士は私の姿を確認すると叫ぶ。
「ナナリー様、大変です! ファンクが傷だらけでナナリー様の部屋の前で横たわっているんです!」
「ええっ!?」
聞き返しはしたものの、リリの変なニオイというのが血の匂いではないかと思って駆け出した。
『ナナリー! どうかしたの?』
「リリ! フェル殿下を呼んできて! あなたはお医者様を呼んできてちょうだい!」
「承知いたしました!」
『わかった!』
リリは一声吠えると、フェル殿下の部屋に向かって走っていく。兵士も言われた通り、城に常駐している獣医を呼びに行ってくれた。
傷だらけだなんて、クランボ様はファンクに体罰を与えたのかしら。もし、そうだとしたら、ファンクからクランボ様を引き離さないといけない。
私の部屋の前には、兵士が言っていた通り、ところどころに血が滲んでいるファンクが寝そべっていた。
「ファンク! 一体、何があったの?」
『うう。最後に見る顔がお前だなんて……。リリちゃんは?』
『馬鹿なことを言わないで。リリならもうすぐ来るわ。それよりも、一体、何があったの?』
ファンクの傷を見てみると、どうやら熱いものを押し付けられたのか火傷しているようだった。丸い形をしているから葉巻かもしれない。
『わからない。でも、カンバーたちが喜んでるのを見て、とても怒ってた。だから、俺が悪いんだと思う』
『あなたは悪くないわ!』
すっかり落ち込んでるファンクを慰めるように頭を撫でていると、ファンクの体が震え始めた。
「どうしたの、ファンク!」
声に出して叫ぶと、ファンクが「くぅぅ」と鳴いた。
「こんなところにいたんですねぇ」
しゃがんでいる私の後方から現れたのは、冷ややかな笑みを浮かべたクランボ様だった。
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