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11 焦る人たち ④
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「あとは二人で話し合ってちょうだい。どうするか決まったら教えてくれれば、私からジゼル公爵家の使者の方にお伝えするわ」
そう言って扉を閉めて鍵をかけると、トータムとメイド長は廊下で叫んだり、扉を叩いたりしてきた。
無視し続けていると、トータムの怒鳴り声が聞こえてくる。
「もういい! ミアリナ! いいか! ジゼル公爵家からの使者には、メイド長の給金を50日間半分カットにすると伝えてくれ」
「そ、そんなっ!」
「うるさいな。解雇されたいのか?」
「い、いえ。あの……、申し訳ございません」
抵抗しても無駄だと悟ったのか、メイド長は情けない声でそう言うと、部屋から離れていくのか足音が聞こえた。
二つの足音が遠ざかっていくのを確認したあと、私は大きなため息を吐く。
このままでは精神的に辛い。昔の学園生活も辛かったけれど、家に帰れば一人になる時間ができた。でも、今の状態では家の中にいることが苦痛なので、まったくもって気持ちが安らぐ場所がない。
……そうだわ。出かける前に自分の部屋に仕掛けをしておかなくちゃ。
私がいないのを良いことに、フララさんたちが勝手に私の部屋の中に入って大事なブローチを盗もうとするかもしれない。
フララさんは私がブローチを渡すことを拒むのは、かなり価値のあるものだからだと思い込んでいるらしく、どうにかして手に入れて鑑定に出そうとしているみたいだ。
一度、買い取り業者に売っているのだから値段はわかるでしょうにと思うけれど、違うところに見てもらうつもりなのでしょう。
出かけている間、ブローチはお守り代わりに持ち歩くことにする。
そして、ブローチを保管していた箱に、私はある液体を塗った。無色透明の粘り気のある液体を塗ったところに指が触れると、瞬間にくっつき、薄い青色の液体を塗るとその効果がなくなる。
万が一、箱に指がくっついてしまった場合、青色の液体を少しずつ浸み込ませていけば綺麗に取れるというものだが、もちろん、青色の液体は私が持ち歩く。
本体を傷めたりすることもないので、とても便利だが、かなり高価なものだ。
ラフリード様の弟のアリム様がお詫びにと贈ってくれたもので、ファルナ様経由でいただいたのだが、値段を聞いた時は頭がクラクラした。
手紙でお礼の気持ちは伝えたが、直接会ってお礼を言わなければ――。
出かける準備を整え、早めの昼食をとっていると、ジゼル公爵家からの使者がやって来たと教えられた。
用意していたお金を詰めた鞄を持ってエントランスホールに向かうと、眼鏡をかけ、全身を真っ白にコーディネートされた長身痩躯の男性が立っていた。
黒色の髪に赤い色の瞳。吊り目気味の涼し気な顔立ちで、誰かに似ていると思った。
でも、それがすぐに誰かは思い浮かばない。
「お待たせして申し訳ございません」
「いいえ。例のものは用意できましたか?」
「もちろんです」
「では、メイドについての話は馬車の中で聞きましょう。帰りもジゼル公爵家の馬車でお送りします」
「よろしいのですか?」
「かまいません」
使者が頷いた時「待って!」という声と階段を駆け下りるような音が聞こえてきた。
使者と共に振り返ると、現れたのは息を切らしたフララさんだった。
そう言って扉を閉めて鍵をかけると、トータムとメイド長は廊下で叫んだり、扉を叩いたりしてきた。
無視し続けていると、トータムの怒鳴り声が聞こえてくる。
「もういい! ミアリナ! いいか! ジゼル公爵家からの使者には、メイド長の給金を50日間半分カットにすると伝えてくれ」
「そ、そんなっ!」
「うるさいな。解雇されたいのか?」
「い、いえ。あの……、申し訳ございません」
抵抗しても無駄だと悟ったのか、メイド長は情けない声でそう言うと、部屋から離れていくのか足音が聞こえた。
二つの足音が遠ざかっていくのを確認したあと、私は大きなため息を吐く。
このままでは精神的に辛い。昔の学園生活も辛かったけれど、家に帰れば一人になる時間ができた。でも、今の状態では家の中にいることが苦痛なので、まったくもって気持ちが安らぐ場所がない。
……そうだわ。出かける前に自分の部屋に仕掛けをしておかなくちゃ。
私がいないのを良いことに、フララさんたちが勝手に私の部屋の中に入って大事なブローチを盗もうとするかもしれない。
フララさんは私がブローチを渡すことを拒むのは、かなり価値のあるものだからだと思い込んでいるらしく、どうにかして手に入れて鑑定に出そうとしているみたいだ。
一度、買い取り業者に売っているのだから値段はわかるでしょうにと思うけれど、違うところに見てもらうつもりなのでしょう。
出かけている間、ブローチはお守り代わりに持ち歩くことにする。
そして、ブローチを保管していた箱に、私はある液体を塗った。無色透明の粘り気のある液体を塗ったところに指が触れると、瞬間にくっつき、薄い青色の液体を塗るとその効果がなくなる。
万が一、箱に指がくっついてしまった場合、青色の液体を少しずつ浸み込ませていけば綺麗に取れるというものだが、もちろん、青色の液体は私が持ち歩く。
本体を傷めたりすることもないので、とても便利だが、かなり高価なものだ。
ラフリード様の弟のアリム様がお詫びにと贈ってくれたもので、ファルナ様経由でいただいたのだが、値段を聞いた時は頭がクラクラした。
手紙でお礼の気持ちは伝えたが、直接会ってお礼を言わなければ――。
出かける準備を整え、早めの昼食をとっていると、ジゼル公爵家からの使者がやって来たと教えられた。
用意していたお金を詰めた鞄を持ってエントランスホールに向かうと、眼鏡をかけ、全身を真っ白にコーディネートされた長身痩躯の男性が立っていた。
黒色の髪に赤い色の瞳。吊り目気味の涼し気な顔立ちで、誰かに似ていると思った。
でも、それがすぐに誰かは思い浮かばない。
「お待たせして申し訳ございません」
「いいえ。例のものは用意できましたか?」
「もちろんです」
「では、メイドについての話は馬車の中で聞きましょう。帰りもジゼル公爵家の馬車でお送りします」
「よろしいのですか?」
「かまいません」
使者が頷いた時「待って!」という声と階段を駆け下りるような音が聞こえてきた。
使者と共に振り返ると、現れたのは息を切らしたフララさんだった。
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