待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!

風見ゆうみ

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13  侵入される

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 結局、その後はデートらしいデートとは出来ずに終わった。
 というのも、ルーが食事中にした私の話を思い出してくれて、騎士さん達と顔を合わせた事だし、騎士団の練習を見せてくれるという事になったからだ。
 街をウロウロしていると、さっきの様な輩がまた現れるかもしれないという気遣いもあったのだろうと思う。
 普通の令嬢なら、デートを続けたい、そういうのかも知れないけど、私は残念ながら普通の令嬢ではなかった。
 二つ返事でルーの提案を受けてしまった。

 そして、宿に帰ってから後悔した。
  
「うう。あそこは、もっと一緒に街を歩きたい、とか言えば良かったのかしら…」

 部屋は別々だけれど、宿に一緒に泊まってくれている侍女に言ってみると「どうせ、いつかはわかる事なのですから、素直に伝えておいて良かったのでは?」と言われてしまった。

 それにしても、相手が違えど2日連続で狙われるはめになるとは…。
 やっぱり、お父様の領地内にいる事が私にとっては安全なのかしら?
 でも、そうなると、ルーには会えなくなってしまう。

「お嬢様、夜更かしはいけませんよ。肌荒れしたらどうするんです」
「はあい。もう寝るわ。おやすみなさい」

 布団に潜り込むと、侍女は部屋の明かりを消して出ていった。
 部屋の外と宿の入り口には、私の家から連れてきた騎士が立っている。
 でも、さすがに部屋の中にはいない。

 しばらくすると、きい、という小さな音と共に、ぎしり、と床がきしむ音が聞こえた。
 うっすらと目を開けると、窓際に誰かが立っているのが見えた。

 はあ…。
 まだ、終わらないの? 
 ビアンカはどれだけ私が嫌いなのよ。
 でも、何か変ね。
 身体が大人にしては小さすぎる。

 もしかして、子供?

 ソロリソロリとこちらに近付いてくる。
 私が飛びかかれる範囲まで来た時だった。

「リアラ様!」

 部屋の外の騎士が叫ぶ声が聞こえた。
 それと同時に侵入者が窓の方に向かったので、ベッドから飛び起きて、逃げようとする小さな身体を加減して組み伏せた。

「お嬢、大丈夫そうね」

 窓の方から声が聞こえて振り返ると、姉御が屋根の上から、顔を出していて私に手を振った。

「姉御!」
「一応、ボスに報告してくるわ」

 姉御はそう言うと、すぐに身体を起こして見えなくなってしまった。

「ごめんなさい、ごめんなさい。もうしませんから、助けて下さい」

 気が付くと、私が組み伏せていた幼い少年は目から涙を溢れさせていた。




 数分後、バタバタと外が騒がしくなり、私の部屋の扉がノックされた。

「大丈夫か!?」

 ルーの声が聞こえたので、入室を許可すると、お風呂あがりなのか髪の毛が濡れたままのルーが入ってきた。
 いつもは前髪をおろしているのだけど、へばりつくのが嫌なのか上にあげていて、イメージが全然違う。
 これはこれでカッコ良い。
 着ている半袖シャツからは彼のたくましい筋肉が見受けられて、心臓がバクバクする。

「私は大丈夫なんですが、この子が…」

 なんとか平静を装い、ベッドに座って、グスグス泣いている男の子の頭を撫でながら言う。
 着ている服もそうだけど、顔などの肌は薄汚れていて、話を聞くと、貧困家庭の子供の様だった。

 話を聞くと、タントスらしき男性に、私に手紙を渡すように頼まれたらしい。
 渡せたら成功報酬として、お金がもらえると言われて、私に渡そうとしたけど、普通に渡そうとしても、私の周りには騎士がいるから近付けない。
 だから、窓から入ってきたらしい。

 これに関してはメイドから謝られた。
 窓の鍵を締め忘れていたから。

 私も自分でチェックしていなかったから駄目なんだけどね。

 ルーと一緒に姉御も部屋に入ってきて、男の子を家に送ってくれると言うので、タントスからもらうはずだった、お金を姉御に預けた。
 そのかわり、二度とこんな事をしないように、わからせてあげてほしいともお願いした。
 今回は相手が私だったから良かった。
 だけど、悪い人間だったら、殺されていたかもしれない。

 姉御が男の子を連れて出ていったあと、気を利かせてくれたのか侍女も部屋を出ていき、ルーと2人きりになった。

「君の家の騎士がいるのはわかってたんだが、俺の部下にも見張らせてたんだ。今回の侵入に関しては、子供だったから様子見したらしい。怖い思いをさせたなら悪かった」

 ルーがベッドに座る私の前に跪いて謝ってくれる。
 うう。
 好き。
 胸が苦しい。

「大丈夫です。ただ、それよりも怖いものが」
「どうした?」

 ルーが心配そうな表情で首を傾げるので、男の子が持ってきてくれた、タントスからの手紙をルーに手渡した。

 ルーは手紙を受け取り、読みすすめていくけれど、だんだん、表情が渋くなっていく。
 読み終えると彼は言った。

「だいぶヤバそうだな。明日は俺もここの宿に泊まる事にする」
「えっ!?」

 じゃあ、明日はルーとひとつ屋根の下って事!?
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