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11 殴ったら婚約破棄してもらえるかしら?
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気絶しているショーマ様をその場にいた騎士に彼の自室に運んでもらうように頼んだ後は、自由になったセンマ様と話をすることになった。
センマ様はショーマ様と髪色や瞳はまったく同じだけれど、中肉中背のとても温和そうな顔立ちの男性だ。
彼は、私に深々と頭を下げてくる。
「助けていただき本当にありがとうございました。警備の問題で何か言われるだろうとは思っていましたが、まさか処刑と言われるとは思っていませんでした」
助けたのは正確に言えば私ではない。
でも、ジェドのおかげだと言うわけにはいかないので、さらりと流しておく。
「それは驚きますわよね。ショーマ様の考えていることはわかりませんわ」
「……兄の言っていたことですが、本気なのでしょうか」
センマ様の言っていることが、国王の座を降りる発言のことだと判断して答える。
「本気であってほしいですわね。そうすれば、この国も平和になりますでしょう?」
城に向かって歩きながら話をしていると、イータ様が前方から走ってくるのが見えた。
彼女は私の顔を見るなり、少し離れた場所で立ち止まって叫ぶ。
「ちょっと、どういうことですの!? また、お兄様が気を失うだなんて! あなたがまた何かしたのでしょう!?」
イータ様は私を指差して叫んだあと、センマ様のほうに視線を向けて眉根を寄せる。
「あら、センマお兄様もいらしたの」
「処刑されそうになっていたんだからいるだろう」
センマ様がさらりと言うと、イータ様が衝撃の発言を口にする。
「妾の子のくせに偉そうな顔しないでよ!」
「偉そうにしているつもりはないよ。元々こんな顔と話し方なんだ」
センマ様は大人の対応をしたあと、私とジェドに頭を下げる。
「お恥ずかしいところをお見せしてしまって申し訳ございません」
「滅相もないですわ。それにイータ様はまだまだ子供ですものね」
「子供じゃありませんわ!」
私の言葉を聞いてイータ様が食ってかかってくる。
ムキになるところが子供だということに気付けないのが子供よね?
微笑ましく思って彼女のほうを見ると、馬鹿にされたと感じたのか私を睨んでくる。
「あなたなんか、ショーマお兄様が目を覚ましたら、すぐに処刑ですわ!」
「あら、そんなことをしたら、ショーマ様は殺されてしまいますわよ? ああ、でも、ショーマ様は大丈夫かもしれません。殺されるのはイータ様かもしれませんわね」
「ど、どういうことですの!?」
自分が殺されると言われて怖気づいたのか、顔を強張らせてイータ様が聞いてきたので答えてあげる。
「ショーマ様は気を失われる前に国王の座を降りると言っておられましたの。ですから、ショーマ様が国王の座を本当に降りられましたら、事実上のトップはイータ様ということでしょう?」
「わ、私じゃありませんわ! センマお兄様が継がれるんじゃないんですの!?」
「先程、イータ様はセンマ様のことを妾の子と呼んでいらっしゃいましたわよね? 女王が禁止されていない国であれば、王位継承順位はイータ様になるかと思いますが」
ショーマ様は何も考えていないようだったけれど、イータ様が言った妾の子発言が正しいのであれば、現在の王位継承順位はイータ様が一番のはずだ。
「そ、そんなの知りませんわ! 私は女王になりたくなんてありません! ショーマお兄様と一緒に仲良く暮らしていければそれで良いんですの!」
「まあ、そうなんですわね!」
これは良い発言をもらったわ。
でも、私一人が勝手に考えて進めても良い話ではない。
だから今のところは、ここで引いておくことにする。
「イータ様のショーマ様への愛を強く感じましたわ。ぜひ、私も応援したいと思っております」
私の言葉を横で聞いていたジェドが眉をぴくりと動かし、センマ様も驚いた顔をした。
イータ様は私の糸に気付く様子もなく、満足げに微笑む。
「たまには良いことを言うんですのね!」
「御二人が幸せになる計画を立てたいと思っておりますので、本日はここで失礼させていただきますわね」
「ちょっと待ちなさい。センマお兄様は置いていってもらいますわ」
「それはいけません。センマ様にも相談に乗ってもらわなければ、イータ様とショーマ様の幸せ計画が練れませんわ?」
自分とショーマ様の幸せ計画と言われたからか、イータ様は満足げな顔をする。
「しょうがないわね。今回のところは見逃してあげましょう」
「寛大なお心に感謝いたしますわ」
その場にイータ様を残し、私とジェドとセンマ様は早足で歩き出す。
「レイティア嬢、先程の発言はどういうことなのでしょうか?」
「そのままですわ。お望み通りにお二人で仲良く暮らしていただいたら良いかと思いまして。まあ、その後はどうなるかは知ったことではありませんが」
「ど、どういうことです!?」
焦るセンマ様にジェドが代わりに答えてくれる。
「ショーマ様には国王の座から降りていただき、新国王にセンマ様が就かれるのはいかがでしょう?」
「そ、そんな、僕はイータが言っていたように、妾の子で……」
困った顔を刷るセンマ様に尋ねる。
「センマ様に王位継承権はありませんの?」
「いえ、一応、認められてはいますが……」
「では、国民のためを思うのでしたら覚悟を決めてくださいませ」
センマ様はショーマ様とイータ様に嫌われている。
ということは、まともな人物である可能性が高い。
ショーマ様が国王の座を降りるだけでは、この国に混乱が生じる可能性もある。
でも、代わりの国王がいるのであればまだマシなはずだわ。
もちろん、センマ様がまともな方かどうか調べないといけないのは確かだけど、ショーマ様を放置して終わるという中途半端な状況で帰らなくて良くなるわ。
そういえば……。
「ショーマ様を国王の座から引きずり下ろす前に婚約破棄をしてもらわないといけないわね。どうやって婚約破棄に持っていこうかしら。殴ったら婚約破棄してもらえるかしら?」
微笑んで呟くと、ジェドはいつものことといった感じでスルーしてくれたけれど、センマ様は私の顔を見て怯えたような表情になった。
センマ様はショーマ様と髪色や瞳はまったく同じだけれど、中肉中背のとても温和そうな顔立ちの男性だ。
彼は、私に深々と頭を下げてくる。
「助けていただき本当にありがとうございました。警備の問題で何か言われるだろうとは思っていましたが、まさか処刑と言われるとは思っていませんでした」
助けたのは正確に言えば私ではない。
でも、ジェドのおかげだと言うわけにはいかないので、さらりと流しておく。
「それは驚きますわよね。ショーマ様の考えていることはわかりませんわ」
「……兄の言っていたことですが、本気なのでしょうか」
センマ様の言っていることが、国王の座を降りる発言のことだと判断して答える。
「本気であってほしいですわね。そうすれば、この国も平和になりますでしょう?」
城に向かって歩きながら話をしていると、イータ様が前方から走ってくるのが見えた。
彼女は私の顔を見るなり、少し離れた場所で立ち止まって叫ぶ。
「ちょっと、どういうことですの!? また、お兄様が気を失うだなんて! あなたがまた何かしたのでしょう!?」
イータ様は私を指差して叫んだあと、センマ様のほうに視線を向けて眉根を寄せる。
「あら、センマお兄様もいらしたの」
「処刑されそうになっていたんだからいるだろう」
センマ様がさらりと言うと、イータ様が衝撃の発言を口にする。
「妾の子のくせに偉そうな顔しないでよ!」
「偉そうにしているつもりはないよ。元々こんな顔と話し方なんだ」
センマ様は大人の対応をしたあと、私とジェドに頭を下げる。
「お恥ずかしいところをお見せしてしまって申し訳ございません」
「滅相もないですわ。それにイータ様はまだまだ子供ですものね」
「子供じゃありませんわ!」
私の言葉を聞いてイータ様が食ってかかってくる。
ムキになるところが子供だということに気付けないのが子供よね?
微笑ましく思って彼女のほうを見ると、馬鹿にされたと感じたのか私を睨んでくる。
「あなたなんか、ショーマお兄様が目を覚ましたら、すぐに処刑ですわ!」
「あら、そんなことをしたら、ショーマ様は殺されてしまいますわよ? ああ、でも、ショーマ様は大丈夫かもしれません。殺されるのはイータ様かもしれませんわね」
「ど、どういうことですの!?」
自分が殺されると言われて怖気づいたのか、顔を強張らせてイータ様が聞いてきたので答えてあげる。
「ショーマ様は気を失われる前に国王の座を降りると言っておられましたの。ですから、ショーマ様が国王の座を本当に降りられましたら、事実上のトップはイータ様ということでしょう?」
「わ、私じゃありませんわ! センマお兄様が継がれるんじゃないんですの!?」
「先程、イータ様はセンマ様のことを妾の子と呼んでいらっしゃいましたわよね? 女王が禁止されていない国であれば、王位継承順位はイータ様になるかと思いますが」
ショーマ様は何も考えていないようだったけれど、イータ様が言った妾の子発言が正しいのであれば、現在の王位継承順位はイータ様が一番のはずだ。
「そ、そんなの知りませんわ! 私は女王になりたくなんてありません! ショーマお兄様と一緒に仲良く暮らしていければそれで良いんですの!」
「まあ、そうなんですわね!」
これは良い発言をもらったわ。
でも、私一人が勝手に考えて進めても良い話ではない。
だから今のところは、ここで引いておくことにする。
「イータ様のショーマ様への愛を強く感じましたわ。ぜひ、私も応援したいと思っております」
私の言葉を横で聞いていたジェドが眉をぴくりと動かし、センマ様も驚いた顔をした。
イータ様は私の糸に気付く様子もなく、満足げに微笑む。
「たまには良いことを言うんですのね!」
「御二人が幸せになる計画を立てたいと思っておりますので、本日はここで失礼させていただきますわね」
「ちょっと待ちなさい。センマお兄様は置いていってもらいますわ」
「それはいけません。センマ様にも相談に乗ってもらわなければ、イータ様とショーマ様の幸せ計画が練れませんわ?」
自分とショーマ様の幸せ計画と言われたからか、イータ様は満足げな顔をする。
「しょうがないわね。今回のところは見逃してあげましょう」
「寛大なお心に感謝いたしますわ」
その場にイータ様を残し、私とジェドとセンマ様は早足で歩き出す。
「レイティア嬢、先程の発言はどういうことなのでしょうか?」
「そのままですわ。お望み通りにお二人で仲良く暮らしていただいたら良いかと思いまして。まあ、その後はどうなるかは知ったことではありませんが」
「ど、どういうことです!?」
焦るセンマ様にジェドが代わりに答えてくれる。
「ショーマ様には国王の座から降りていただき、新国王にセンマ様が就かれるのはいかがでしょう?」
「そ、そんな、僕はイータが言っていたように、妾の子で……」
困った顔を刷るセンマ様に尋ねる。
「センマ様に王位継承権はありませんの?」
「いえ、一応、認められてはいますが……」
「では、国民のためを思うのでしたら覚悟を決めてくださいませ」
センマ様はショーマ様とイータ様に嫌われている。
ということは、まともな人物である可能性が高い。
ショーマ様が国王の座を降りるだけでは、この国に混乱が生じる可能性もある。
でも、代わりの国王がいるのであればまだマシなはずだわ。
もちろん、センマ様がまともな方かどうか調べないといけないのは確かだけど、ショーマ様を放置して終わるという中途半端な状況で帰らなくて良くなるわ。
そういえば……。
「ショーマ様を国王の座から引きずり下ろす前に婚約破棄をしてもらわないといけないわね。どうやって婚約破棄に持っていこうかしら。殴ったら婚約破棄してもらえるかしら?」
微笑んで呟くと、ジェドはいつものことといった感じでスルーしてくれたけれど、センマ様は私の顔を見て怯えたような表情になった。
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