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40話
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40話
なんだろう?なにか……忘れてるような気がする。だから、ちょっと振り返らせてもらおう。
僕、二宮士郎高校二年生。特徴といった特徴なし。今日食べたご飯は妹の手料理の筑前煮、ひじき、焼き鯖と白米…… といった豪華でなんとも健康的で日本人じみた朝ごはんだった。そして今僕の横をスタスタと歩いている妹の梨花が僕の彼女だ。
これが正しい道だ。僕は間違っていない。だけど、なんだったんだろう?今日隣の席の女の人によく似た人が僕の家の前にいた。それもなんか、泣いてたし……なんかあったのかな?まあ、僕には全くの縁もないと思うけど……
「おにーちゃん。じゃ、私はこっちだからっ!で、今日の夕飯はおにーちゃんの好きなハンバーグだから寄り道せずに帰ってきてねっ!!」
「何言ってんだよ。僕は梨花の作る料理ならなんでも好きさ」
「もう。おにーちゃんの……馬鹿。じゃ、またねっ!!」
と、妹は中学校方面へと行ってしまった。
今日は早く帰らないとな。
うん。なにも忘れてない……よな?
そんなことを考えながらぼんやりと歩いてたら、いつの間にか学校に着いていた。
学校に着いて教室に入ってみると……なんだろう?なにか様子が変だ。
……あ、僕の親友であるれんがいないからか。
隣の人も休みだし……風邪でも流行ってるのかな?
なんか学校が静かというか……つまらないな。凄い充実してたはずなのに……
なにが足りないんだろうか……なぜだか昨日からの記憶が所々抜けてるな。
「んじゃーそうだな。ここを……二宮。解いてみろ」
「…………」
「ん?どーした?二宮」
「………あ、はいっ!56です!」
「なんのことだ?今は古文の時間だぞ?」
「あ……あははは……すいません。話聞いてませんでした」
なんて答えてみても誰も突っ込んでもくれないし、なんか一人って感じだ。
そして、昼休みになった。
いつも通り僕は食堂に向かっていた。
……うん?
僕には妹お手製の弁当があるじゃないか。なのになんで僕は食堂になんか向かってたんだ?
記憶には色々ある。これは手続き記憶に該当するはずだ。身体が勝手に動いているってことは……食堂にいつもは向かっていたってことだ。
昔から梨花の弁当を持ってきていたならば、食堂に向かうなんてことはなかったはずだ。
でも、全然思い出せない……
妹が彼女ってことには変わらないんだし、これ以上考えることもない。よな?
んじゃ、クラスに戻って妹お手製の弁当でも食べようかな。
パカッ!
おお!凄い。
弁当を開いてから溢れ出す肉のあのジューシーな匂い。つばが止まらねえぜ。
別に中で焼けているわけではないのだが、暑い鉄板の上で焼けているかのようなステーキのような匂いだ。だが、中に入っているのは完全に焼肉みたいだな。
どうやったらこんな弁当が作れるんだ?
そして、その肉を食らう。
ウメェ…
うん。それ以上に言葉が出てこねえが、ウメェ。
そして、野菜やら白米やらでバランスも取れているし……ウメェ。
それからその料理のうまさに手が止まらなくなり、そのままペースを変えることなく平らげた。
「ふぅ。ごちそうさま」
………なんか、寂しいな。
僕はこんなに学校で友達がいなかったのか?
れんがいないだけで僕はぼっちになるのか……
そして、放課後。
僕は高校で全く誰とも話さずに学校から家へと帰ると思っていたが、その道中。
「……士郎!!」
と、大声で僕を呼ぶ声が何処かでした。
……ん?周りを見渡したが人はどこにもいない。気のせいか?
「コラァ!!士郎!!」
と、僕の前に現れたのは。というか、居たのは何処かで見た金髪ロリツインテールの先輩だった。視界に入ってなくてわからなかったぜ。
そんなに仲が良かったわけでもないと思うんだけど、その罵声がなんか懐かしいというかなんというか……
「……はい?」
「はい?じゃないわよっ!!はやくこっちにきなさいっ!」
「……え?でも、今日は妹がハンバーグを……」
「そんなのいいからっ!!」
と、僕は強引に強制的に引っ張られてなぜか豪邸に……というかれんの家にきて居た。
「先輩。なんでれんの家を知ってるんですか?」
「一条さんと仲良くなってね」
「へぇ」
夕食をご馳走になってしまったってことは覚えてるんだけど………
他にこの人との記憶がない。
もっとなんかあった気がするんだけど……
まあ、いいか。めんどうだし。
「お邪魔しまーす」
ドスッ!!
戸をくぐったその刹那。後ろから首にチョップを受けて僕は倒れた。
意識が遠のいていく……バタ。
「……おお!よくやったねぇ。小さいの」
「くっ………!!」
「……抑えて。相手はおじさんだ」
「う、うぅ。ウッシーがそういうなら……」
ふぅ。怖かったぁ。でも、私の役割はここからだよねっ!!
「おじさん!よろしくお願いします!」
「おうっ!それじゃみんな。士郎を運んでくれ」
と、先ほどの竹と書いてあった居間まで士郎をみんなで運び、布団に寝かせる。
「で?次は何をすればいいの?」
「んじゃ、入ろうか。だけど、気をつけてね。心に入るわけだ。人の心にズカズカ入るとそりゃー士郎だって自己防衛しようとする。君達を排除しようとするだろう」
「……それって体の免疫みたいなことですか?私達はウイルスみたいな?」
「まあ、そうだ。だが、そこら辺はこっちで対抗策を用意してるから心配しなくていい。とりあえず、君達は頑張って心を正常にするんだ。どんな形になっているかはわからないが、それを見つけ出せ」
「はいっ!わかりました」
そして、おじさんはなぜか私をじーっと見ている。
「………えっと?」
「ん?何をしている?士郎の横で寝ないか」
「………はい?それはどういったことですか?」
「どうもこうもないかな?必須条件だ」
「そ、そうですか……」
私はシングルサイズの布団の中に寝ている士郎の横で寝ないといけないのか!?それもシングルだから身体は密着。
おじさん以外に目線を送ると
「しかりんっ!頑張ってねっ!」
「………応援してるよ」
「士郎を頼む!」
「任せたわ」
なんて返ってきた。
そうだ。もう、やるしかない。士郎と……またリア充になるんだ!
そう決断して士郎の寝ている布団に横になる。
「………うん?ここは?」
なんか映画とかのテープみたいなのがいっぱいあってそれが一つ一つしっかりと流れている。
「……お嬢ちゃん?聞こえるかな?」
と、どこからともなく声が聞こえる。あのおじさんの声だ。
どうにか安否くらいは知らせなければ……声出せば聞えるのかな?
「は、はいっ!!」
と、とりあえず叫んでみる。
「おお。とりあえずダイブ成功というわけか。そのテープは一つ一つ士郎の記憶だ。だけど、それ自体にはあんまり意味はない」
入ったところにあるんだし、まあ、外壁的な。………どうでもいい記憶ってなら、今朝のご飯だったりそんな記憶だろう。
「じゃ、奥に行ってみますね」
と、私は無数にあるテープの海に漕ぎ出した。
だけど、どれをどうすればいいんだろう?
とりあえず歩きながらいろいろ流れてるコマをみてみるが、別に変なところはない。わかることは幼少期から全然変わらない感じってことしかわからない。
でも、探さないと……
というか…かなり歩いてきたけど、私が全然出てこない。もう、ここはここ最近の、高校生あたりの記憶なのに、私も日常部すらでてこないし、あのおじさんの言っていた白血球的な士郎の心の防衛隊みたいのも居ない。
まあ、安全なのはいいんだけど、なんでこんなに荒れているんだろう……
奥に進むにつれてどんどんと荒れていく。
なんか……怖い。
これが士郎の記憶?
ところどころ抜けているし……って、あれ………?
これは……私の部屋?
確かまだ付き合う前、全然まだ私が士郎を普通の男の人だと思っていた時のことかな?
あれれ?
私がいる場所のはず……そのはずなのに……
………なんで士郎の妹さんがいるの?
「よっこらしょっと………」
と、そのテープの中から小さい士郎が出てきた。
「え!?し、士郎!?」
「あ……えっと、白崎さん?」
と、全くの動揺も見せず私の名前を呼んだ。
「え?ど、どうしたの?」
「あ、初めまして。僕、士郎の心です」
「へ、へぇ……」
のんきに自己紹介なんてされたが、どうすればいいんだろう?ん?昔の心?ってことは……今はもう違うの?この士郎が私のことを知っていて、このテープに私がいないなら私は……士郎の中に居ないってこと?
「あ、言葉を間違えました。記憶です」
と、私の心でも悟ったのかのようにそう撤回してきた。
「な、なんで私の考えていたことがわかったの?」
「あ、心なのでね。なんとなくですかね?」
「へ、へぇ……で、質問なんだけど、これってなんなの?この映画とかのテープみたいな奴は」
「えーっと、簡単に言えばこれも記憶です。でも、これは士郎にとっての現実。実体験なのです。いや、そうありたいと願っている心というべきでしょうか……」
「願っている心?」
「はい。こうして僕の本心が外に出されたということは僕の本心が本心でなくなったと考えるのが妥当です」
と、そのテープを指差しながらそう説明した。
「じゃ……今の士郎の本心はこっちだと?」
「はい……」
そんなこと………
そして、その場に倒れこみ顔を伏せている白崎さん。
あは。これで二宮さんと白崎さんの恋路はおしまい。残念だったね。この私、インスタントガールフレンドに目をつけられたのが運の尽き。
「……どうでもいいっ!!」
「………は?」
この子。流石に壊れちゃったかな?
「士郎のことなんてどうでもいい。私が士郎のことが好きなの!!だから、無理矢理にでも好きにさせてやるっ!」
「え、えっと……それは?」
「私は士郎が好き。その人に彼女が居たとしても諦めたりなんかしないっ!!」
「いや、だってさ?ね?わかろうよ。ね?士郎がそう思ってるんだからしかたなくない?」
「うるさいっ!!」
と、怒鳴り散らかしながら私がさっきまで弄って妹にすり替えた記憶のテープの中に行ってしまった。
「………え、えぇ?」
……全く想定外だ。だけど、なんだろう。この人たちの歪む顔が凄い観たい。
……これが幸せって感情なのかな?
だったならば最高だな……これを消せるとなると……もう、たまらないなぁ。
なんだろう?なにか……忘れてるような気がする。だから、ちょっと振り返らせてもらおう。
僕、二宮士郎高校二年生。特徴といった特徴なし。今日食べたご飯は妹の手料理の筑前煮、ひじき、焼き鯖と白米…… といった豪華でなんとも健康的で日本人じみた朝ごはんだった。そして今僕の横をスタスタと歩いている妹の梨花が僕の彼女だ。
これが正しい道だ。僕は間違っていない。だけど、なんだったんだろう?今日隣の席の女の人によく似た人が僕の家の前にいた。それもなんか、泣いてたし……なんかあったのかな?まあ、僕には全くの縁もないと思うけど……
「おにーちゃん。じゃ、私はこっちだからっ!で、今日の夕飯はおにーちゃんの好きなハンバーグだから寄り道せずに帰ってきてねっ!!」
「何言ってんだよ。僕は梨花の作る料理ならなんでも好きさ」
「もう。おにーちゃんの……馬鹿。じゃ、またねっ!!」
と、妹は中学校方面へと行ってしまった。
今日は早く帰らないとな。
うん。なにも忘れてない……よな?
そんなことを考えながらぼんやりと歩いてたら、いつの間にか学校に着いていた。
学校に着いて教室に入ってみると……なんだろう?なにか様子が変だ。
……あ、僕の親友であるれんがいないからか。
隣の人も休みだし……風邪でも流行ってるのかな?
なんか学校が静かというか……つまらないな。凄い充実してたはずなのに……
なにが足りないんだろうか……なぜだか昨日からの記憶が所々抜けてるな。
「んじゃーそうだな。ここを……二宮。解いてみろ」
「…………」
「ん?どーした?二宮」
「………あ、はいっ!56です!」
「なんのことだ?今は古文の時間だぞ?」
「あ……あははは……すいません。話聞いてませんでした」
なんて答えてみても誰も突っ込んでもくれないし、なんか一人って感じだ。
そして、昼休みになった。
いつも通り僕は食堂に向かっていた。
……うん?
僕には妹お手製の弁当があるじゃないか。なのになんで僕は食堂になんか向かってたんだ?
記憶には色々ある。これは手続き記憶に該当するはずだ。身体が勝手に動いているってことは……食堂にいつもは向かっていたってことだ。
昔から梨花の弁当を持ってきていたならば、食堂に向かうなんてことはなかったはずだ。
でも、全然思い出せない……
妹が彼女ってことには変わらないんだし、これ以上考えることもない。よな?
んじゃ、クラスに戻って妹お手製の弁当でも食べようかな。
パカッ!
おお!凄い。
弁当を開いてから溢れ出す肉のあのジューシーな匂い。つばが止まらねえぜ。
別に中で焼けているわけではないのだが、暑い鉄板の上で焼けているかのようなステーキのような匂いだ。だが、中に入っているのは完全に焼肉みたいだな。
どうやったらこんな弁当が作れるんだ?
そして、その肉を食らう。
ウメェ…
うん。それ以上に言葉が出てこねえが、ウメェ。
そして、野菜やら白米やらでバランスも取れているし……ウメェ。
それからその料理のうまさに手が止まらなくなり、そのままペースを変えることなく平らげた。
「ふぅ。ごちそうさま」
………なんか、寂しいな。
僕はこんなに学校で友達がいなかったのか?
れんがいないだけで僕はぼっちになるのか……
そして、放課後。
僕は高校で全く誰とも話さずに学校から家へと帰ると思っていたが、その道中。
「……士郎!!」
と、大声で僕を呼ぶ声が何処かでした。
……ん?周りを見渡したが人はどこにもいない。気のせいか?
「コラァ!!士郎!!」
と、僕の前に現れたのは。というか、居たのは何処かで見た金髪ロリツインテールの先輩だった。視界に入ってなくてわからなかったぜ。
そんなに仲が良かったわけでもないと思うんだけど、その罵声がなんか懐かしいというかなんというか……
「……はい?」
「はい?じゃないわよっ!!はやくこっちにきなさいっ!」
「……え?でも、今日は妹がハンバーグを……」
「そんなのいいからっ!!」
と、僕は強引に強制的に引っ張られてなぜか豪邸に……というかれんの家にきて居た。
「先輩。なんでれんの家を知ってるんですか?」
「一条さんと仲良くなってね」
「へぇ」
夕食をご馳走になってしまったってことは覚えてるんだけど………
他にこの人との記憶がない。
もっとなんかあった気がするんだけど……
まあ、いいか。めんどうだし。
「お邪魔しまーす」
ドスッ!!
戸をくぐったその刹那。後ろから首にチョップを受けて僕は倒れた。
意識が遠のいていく……バタ。
「……おお!よくやったねぇ。小さいの」
「くっ………!!」
「……抑えて。相手はおじさんだ」
「う、うぅ。ウッシーがそういうなら……」
ふぅ。怖かったぁ。でも、私の役割はここからだよねっ!!
「おじさん!よろしくお願いします!」
「おうっ!それじゃみんな。士郎を運んでくれ」
と、先ほどの竹と書いてあった居間まで士郎をみんなで運び、布団に寝かせる。
「で?次は何をすればいいの?」
「んじゃ、入ろうか。だけど、気をつけてね。心に入るわけだ。人の心にズカズカ入るとそりゃー士郎だって自己防衛しようとする。君達を排除しようとするだろう」
「……それって体の免疫みたいなことですか?私達はウイルスみたいな?」
「まあ、そうだ。だが、そこら辺はこっちで対抗策を用意してるから心配しなくていい。とりあえず、君達は頑張って心を正常にするんだ。どんな形になっているかはわからないが、それを見つけ出せ」
「はいっ!わかりました」
そして、おじさんはなぜか私をじーっと見ている。
「………えっと?」
「ん?何をしている?士郎の横で寝ないか」
「………はい?それはどういったことですか?」
「どうもこうもないかな?必須条件だ」
「そ、そうですか……」
私はシングルサイズの布団の中に寝ている士郎の横で寝ないといけないのか!?それもシングルだから身体は密着。
おじさん以外に目線を送ると
「しかりんっ!頑張ってねっ!」
「………応援してるよ」
「士郎を頼む!」
「任せたわ」
なんて返ってきた。
そうだ。もう、やるしかない。士郎と……またリア充になるんだ!
そう決断して士郎の寝ている布団に横になる。
「………うん?ここは?」
なんか映画とかのテープみたいなのがいっぱいあってそれが一つ一つしっかりと流れている。
「……お嬢ちゃん?聞こえるかな?」
と、どこからともなく声が聞こえる。あのおじさんの声だ。
どうにか安否くらいは知らせなければ……声出せば聞えるのかな?
「は、はいっ!!」
と、とりあえず叫んでみる。
「おお。とりあえずダイブ成功というわけか。そのテープは一つ一つ士郎の記憶だ。だけど、それ自体にはあんまり意味はない」
入ったところにあるんだし、まあ、外壁的な。………どうでもいい記憶ってなら、今朝のご飯だったりそんな記憶だろう。
「じゃ、奥に行ってみますね」
と、私は無数にあるテープの海に漕ぎ出した。
だけど、どれをどうすればいいんだろう?
とりあえず歩きながらいろいろ流れてるコマをみてみるが、別に変なところはない。わかることは幼少期から全然変わらない感じってことしかわからない。
でも、探さないと……
というか…かなり歩いてきたけど、私が全然出てこない。もう、ここはここ最近の、高校生あたりの記憶なのに、私も日常部すらでてこないし、あのおじさんの言っていた白血球的な士郎の心の防衛隊みたいのも居ない。
まあ、安全なのはいいんだけど、なんでこんなに荒れているんだろう……
奥に進むにつれてどんどんと荒れていく。
なんか……怖い。
これが士郎の記憶?
ところどころ抜けているし……って、あれ………?
これは……私の部屋?
確かまだ付き合う前、全然まだ私が士郎を普通の男の人だと思っていた時のことかな?
あれれ?
私がいる場所のはず……そのはずなのに……
………なんで士郎の妹さんがいるの?
「よっこらしょっと………」
と、そのテープの中から小さい士郎が出てきた。
「え!?し、士郎!?」
「あ……えっと、白崎さん?」
と、全くの動揺も見せず私の名前を呼んだ。
「え?ど、どうしたの?」
「あ、初めまして。僕、士郎の心です」
「へ、へぇ……」
のんきに自己紹介なんてされたが、どうすればいいんだろう?ん?昔の心?ってことは……今はもう違うの?この士郎が私のことを知っていて、このテープに私がいないなら私は……士郎の中に居ないってこと?
「あ、言葉を間違えました。記憶です」
と、私の心でも悟ったのかのようにそう撤回してきた。
「な、なんで私の考えていたことがわかったの?」
「あ、心なのでね。なんとなくですかね?」
「へ、へぇ……で、質問なんだけど、これってなんなの?この映画とかのテープみたいな奴は」
「えーっと、簡単に言えばこれも記憶です。でも、これは士郎にとっての現実。実体験なのです。いや、そうありたいと願っている心というべきでしょうか……」
「願っている心?」
「はい。こうして僕の本心が外に出されたということは僕の本心が本心でなくなったと考えるのが妥当です」
と、そのテープを指差しながらそう説明した。
「じゃ……今の士郎の本心はこっちだと?」
「はい……」
そんなこと………
そして、その場に倒れこみ顔を伏せている白崎さん。
あは。これで二宮さんと白崎さんの恋路はおしまい。残念だったね。この私、インスタントガールフレンドに目をつけられたのが運の尽き。
「……どうでもいいっ!!」
「………は?」
この子。流石に壊れちゃったかな?
「士郎のことなんてどうでもいい。私が士郎のことが好きなの!!だから、無理矢理にでも好きにさせてやるっ!」
「え、えっと……それは?」
「私は士郎が好き。その人に彼女が居たとしても諦めたりなんかしないっ!!」
「いや、だってさ?ね?わかろうよ。ね?士郎がそう思ってるんだからしかたなくない?」
「うるさいっ!!」
と、怒鳴り散らかしながら私がさっきまで弄って妹にすり替えた記憶のテープの中に行ってしまった。
「………え、えぇ?」
……全く想定外だ。だけど、なんだろう。この人たちの歪む顔が凄い観たい。
……これが幸せって感情なのかな?
だったならば最高だな……これを消せるとなると……もう、たまらないなぁ。
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