ミステール・エコール

たtsuや!!

文字の大きさ
7 / 16
第2章 kinds

遅れた理由

しおりを挟む
教室に着き、扉を開ける。視界の中には数人が映っている。まだあまり登校していないようだ。


 現在時刻は7時40分。今朝は目覚ましを10分早く設定したし、リビングの時計も正確な時間に合わせておいた。そして、昨日の失態を繰り返さないためにも家を10分早く出た。


席に着いて辺りを見回すと昨日森谷堂のおばあさんが言っていたようなシュシュをつけている人がいた。色こそ青色で黄色くはないがかなり目立つような髪飾りだ。だが、おばあさんの言っていたように優しそうには見えないな。教室内で爪の手入れをしているし、髪も染めている。この学校ではそれが校則に反していることはないのだが、入学2日目ですることではないと思う。できることなら関わりたくないので、机に突っ伏してHRを待つとするか。



「あら、おはよう」
突然声をかけられた。挨拶を交わすほど親しい人はいたろうか。
「…あ、ああ、音無か。おはよう」
「今日は早いのね。また昨日みたいな時間に来るかと思ったわ」
「だから、それはバスに乗り遅れたからだって言っただろ。それにお前こそ今日早いじゃないか」
音無と俺は同じ方向に家があるので同じくバスは朝は1本しか出ていない。それに乗っている姿を見ていないので音無は今日も母に送って貰ったのだろう。


推理してみるか。


昨日と今日とで違うことと言えば、やはり昨日は入学式があったが、今日は入学式がないということだ。だが、この学校において入学式のときに登校時間が遅くなるなど無かったはずだ。現に昨日遅刻しそうになったしな。なら入学式は関係ないのか?いや、音無ではなく、音無のに原因があったのではないか?
音無の母親は昨日、着物を着ていた。まるでにでも出席するためかのように。入学式が午前の早い時間に行われるのはこの学校に限っての話だ。他の学校ではもう少し余裕を持って行われるだろう。音無と俺を送った後、元来た道を戻らなかったのはそのまま職場……学校に向かったからではないのか。


この推理を元にして、昨日音無が遅れた理由をまとめると、
①他学校の教員である音無の母親が他学校の入学式に時間を合わせるために出発時刻を遅らせたから。
これ以外の理由ならただ単に
②音無が寝坊したから。

流石にこの2択からさらに絞ることは難しい。でも、この二択なら①を選ぶ他ないだろう。

「なあ、お前の母親って、他の学校の教師だったりするか?」
音無は驚いた様子で答えた。
「…ええ、確かに別の学校に務めているけど、教師じゃなくて理事長ね。それよりあなたの言う通り私が昨日遅れた理由は母の仕事のことだけれど…、どうして分かったの?」
「昨日の立ち振る舞いが教師っぽかったからかな」
「納得できないわね…」
音無の母は理事長だったのか。いい線いってると思ってたけど、音無家のお家事情も考慮に入れておくべきだったか。
音無は腑に落ちないと思っていながらも、チャイムがなると渋々席に着いた。


何事においてもインパクトは大事である。例えそれが外れたとしても。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

不思議な夏休み

廣瀬純七
青春
夏休みの初日に体が入れ替わった四人の高校生の男女が経験した不思議な話

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

秘められたサイズへの渇望

到冠
大衆娯楽
大きな胸であることを隠してる少女たちが、自分の真のサイズを開放して比べあうお話です。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...