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8、周囲のレベルを下げたらしい
しおりを挟む王である父の話しでは、彼女はこの国の貴族女性としても大変優秀らしく、人当たりも申し分のない女性で、他国との外交も問題なくこなせる資質を持ち、将来の王太子妃ひいては王妃となっても問題がないと、周囲の大臣クラスの貴族は喜んでいたそうだ。
しかし、第一王子…兄上にはこの婚約で目の上のたんこぶができてしまい、自分の馬鹿さ加減が露呈しまった。周囲は兄上のフォロー要員として選んだつもりだったのだが、結果コンプレックスを刺激してしまい……別な女…妙な魔力を持った、男爵家の娘に入れ込み、愛しているとのたまった挙句、公の場で公開処刑でも行うかのように婚約破棄を宣言してしまったらしい。
聞いていて頭が痛かった。
第一王子は…兄上はこんなにイタイ子だったか?と色々考えを巡らせたが、あの兄上にそんな思い切りのいい事は出来ないだろうと考えた時、父が"気が付いたか?"とばかりに言葉を重ねてきた。
どうも、今回の事にはアレが関わっているようだ…と、溜息混じりで言ってきた。父がアレと言えば…あれだ、兄上の母である現王妃のことだ。
「父上……いや陛下……ご自分の伴侶殿の操縦はしっかりして貰わなければ周囲が困ります」
この国の王で、仮にも実の父親だけれどここは苦言を呈さなければいけない場面だ。
面と向かって言える数少ない者に入る自分の責任だと感じ、強く言った。
自分が産まれる前のことなので、全て聞いた事だが、父と王妃の馴れ初めは今の兄上と同じようなものだったらしい。
救いは、元々の婚約者であった令嬢(俺の母親)である娘は控えめな性格も総じて、第二王妃となったこと。横恋慕する形で第一王妃となった現王妃は、第二王妃と身分が差があまり無かったことだった。
後にこれが、第二王妃である俺の母の死を招いた事であったとしても、恐らくその時はそれが一番いい決断だったのだろうと思うし……。
けれど…。
婚姻後、第一王妃に振り回され、我儘に疲れた王は献身的で控えめな第二王妃…母に愛情癒しを求めた。愛情が自分から母に移った感じた第一王妃は、母を毒殺した……らしい。
証拠が出ず、実行犯と思われる者は、ことが知れた時には既にこの世にはいなかった……らしい。
「アレはな、ミレーユの存在が己をも害すると判断したようだ」
"できの良い王太子妃"と自分が…"有能な王太子妃"と我が子が比べられるのが気に入らなかったのだろう。
辛うじて毒殺などは免れたが、それも時間の問題かと思われ、毒味役を付けて対処していたそうだけれど、ガードが堅いと見るや否や違う角度から切り崩して来たらしい。
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