人外さんに選ばれたのは私でした ~それでも私は人間です~

こひな

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「では…こことここと……あとこちらにお名前の記入と…印鑑を……あと、こちらが契約書になります」


ただ今、応接室兼役員室にて、雇用契約書に記入と、役員就任に関しての諸々の書類への記入を必死にしている。
都筑川さん曰く…今日の仕事はひたすら書類への記入らしい。


数刻前…副社長就任の依頼をされ…悩んだ挙句条件付きで引き受けた。


条件は…前の会社を辞めた理由の一つでもある、『現場に携わりたい(買い付けにも行きたい)』という事と『接待は無理』と…大きな条件はこれのみ。


やるからにはできるだけ頑張るつもりだけれど、出来ないことはできないしね。


ちなみに…ここ三年程、都筑川さんが不在の社長の代わりに業務をこなして来たらしいのだけれど、まぁ色々と無理が出てきたらしい。


「そもそも、三年間も不在の社長って……」


質問しようとしたら、思いっきり遮られ今までとは材質の異なる書類が目の前に置かれた。


「申し訳ございません。そのご質問はこちらの契約書にサインを頂いてからお答えします」

「契約書?雇用契約書は書きましたよね?これは?」


安易に書類に名前を記入してはいけません!
という理由の元問いただした私の行動は正しかったらしい。


「そろそろ色々と効いてくるはずなんですけどね…」


ため息と共に吐き出された言葉は、契約前に聞いた『記憶を改ざんする』より更に胡散臭いものだった。


「いったい私に何をしようと?それとも、もう何かしているんですか?」


顔を合わせ話をしたのも数回という人を、なんの抵抗もなく受け入れたわけではなかったけれど、とは思っていなかった。


それまで使っていたペンを放り出し、足元に置いた私物のカバンを掴む。


「申し訳ありませんが、今日はこれで帰らせてもらいます。雇用契約書はそちらにあるので、明日からは通常通り勤務しますが…副社長就任の件については、こちらに書類があります。都筑川さんのことは嫌いではありませんが、自分を騙すようなやり方をされるのは気に入りませんし、信用出来ません」


カッと来ていたこともあり、ほぼ言い捨てる勢いで役員室を出ようとしたら……


「待って!ごめんっ!僕が悪いんだよっ!」


いつも静かに肩に座っている『この子』が謝ってきた。
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