人外さんに選ばれたのは私でした ~それでも私は人間です~

こひな

文字の大きさ
9 / 113

しおりを挟む



指定された時間も近くなった。
ヤツは本当に来るのだろうか?


今回入手予定の古書は、本来ならば僕の一族の手元になければいけない本だ。
いつの間にか本家の蔵からなくなっていた本には、僕の一族の秘匿する事実の一部が書かれている。
もちろん、それ単独では読み解けないものではあるのだけれど、手元に取り戻せるのならばそれに越した事はないので、もののついでに何か手掛かりがないか…蔵から消えていた事が判明してから以降ずっと探していた。


つい数か月前、どの傘下にも入らず単独で長くこの人間の地で生きる者の手にあると知った。
そして…伝手の伝手の伝手を辿ると言う、厄介なやり方で、ようやくヤツと会う手筈が整った。
ツヅキが心配するのも分かるのだけれど、この機会を逃してしまえば後がないような気がしたので、どうにかこうにか『取引場所の移動をしない、取引後に必ず合流する』という条件をつけて、自分から離れた場所で待機するよう言いくるめた。


「何事もなく終わればそれでいいのだけれど…」


そう独り言ちた時、の突き当りの壁際から声が聞こえた。


「何事もなく?何かある予定なのかしら?」


何故か振り向くのを躊躇ってしまいそうになる冷たい女の声。
気を抜くと力が抜けてしまいそうな足にもう一度力を籠め、思い切り振り向くと…そこには壁から半分浮き出たような髪の長い女が立っていた。



「あら…見ちゃったのね。この姿見ちゃったからには記憶を消さないといけないわね」


こいつはこうやって理由を付けて、生きてきたのだろう。
記憶を糧に生きる者。古くからこの地にいる妖怪とは違う存在。
人間でいうところの悪魔だった。


「一応ね、約束は守るわよ。この古書だったかしら?」


胸元から取り出した本を僕に投げ渡し、引き換えとなる物を要求する。
交換条件で要求されたのは、記憶が入った水晶玉だった。


「早くそれをこちらに。それはあなた達が持っていても何の役にも立たない物だわ」


どういう過程でこの水晶玉ができるのか…僕には判らない物だったけれど、彼女がこれを要求するのだから、悪魔的な何かなのか、糧としての物かどちらかなのだろう。


「知りたそうだから教えてあげるわ。この水晶玉は私達の同族の記憶。半永久的に生きる私達でも死ぬことはあるの。まぁ…でも、この子はまだ良かったのかもしれないわね。記憶があるから、戻してあげられるし……でも…少し位意趣返ししてもいいわよね?」


冷たい目で僕を見据え指先で空に何かを描く。



「あなたの記憶を頂くわ。美味しそうだから。恨むなら…そうね、あなたの傍に仕える者を恨みなさい」



それが僕の記憶する最後の言葉だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

五城楼スケ(デコスケ)
ファンタジー
〜花が良く育つので「緑の手」だと思っていたら「癒しの手」だったようです〜 王都の隅っこで両親から受け継いだ花屋「ブルーメ」を経営するアンネリーエ。 彼女のお店で売っている花は、色鮮やかで花持ちが良いと評判だ。 自分で花を育て、売っているアンネリーエの店に、ある日イケメンの騎士が現れる。 アンネリーエの作る花束を気に入ったイケメン騎士は、一週間に一度花束を買いに来るようになって──? どうやらアンネリーエが育てている花は、普通の花と違うらしい。 イケメン騎士が買っていく花束を切っ掛けに、アンネリーエの隠されていた力が明かされる、異世界お仕事ファンタジーです。 *こちらの作品、一旦完結しましたが、31話以降を加筆修正し、ネオページ様で連載することになりました。  新エピソードに加え、新キャラも出てきますので、興味ある方は是非。 *HOTランキング1位、エールに感想有難うございました!とても励みになっています! ※花の名前にルビで解説入れてみました。読みやすくなっていたら良いのですが。(;´Д`)  話の最後にも花の名前の解説を入れてますが、間違ってる可能性大です。  雰囲気を味わってもらえたら嬉しいです。  お読みいただいた皆様に感謝です!(人´∀`).☆.。.:*・゚

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...