人外さんに選ばれたのは私でした ～それでも私は人間です～

１４

「…悪かったよ…」





休日を明日に控え、何となく…ふと思いついて実家に寄ってみた。
あらかじめ連絡してしまうと、母が気を使って色々するので、アポ無しで……まぁ、誰もいなければそのままアパートにＵターンしてもいいか…なんて思っていたら、実家には弟が一人で、おまけに母のクローゼットをひっくり返す勢いで、何かを探していた。


なんで？どうして？


私の帰宅にびっくりして、気まずげに俯く弟に問いただしたところ、母の入院が判明。
それも入院してから既に一週間も経っていた。いくら『みんなには内緒にしていて』と母に頼まれたからと言って、バカ正直に黙っているなんてどういう事よ！


…と、先程みっちりこってり弟に説教した。


ちなみに…父は母の入院直前から海外出張中で一ヶ月程留守の予定。姉は…まぁ、国際結婚して今は日本にいない。


そんなわけでも今実家には大学生の弟と母の二人暮しなわけなんだけど……。


「何もお姉ちゃんみたいに海外にいるわけじゃないんだもん、気を使う事じゃないでしょっ」


どうも、母は気を使ったらしい…新しい職場に移ったばかりの私に。
そして、母の言うことにそのまま従った弟も。


多分…恐らく…普通に考えればありがたいのだと思う。
慣れない仕事に家族の入院。
きっと『なんでこんな時に…』と思う人も少なからずいるはず。けど……。


「お父さんも海外出張中だし…こんな時位しか親孝行らしい事できないんだから連絡よこしなさいっ」


ちょっと八つ当たり気味になったけど、本音だからしょうがない。
そう思いながら、弟の代わりに母の下着やらをバッグに詰め込む。



「じゃあ一緒に病院に行こうか。報告したい事もあるし、お母さんの病気の事も詳しく聞きたいし」


未だブツブツ言う弟を連れ、いざ病院へ。
成り行きを私の肩に座って見ていた社長も頷く。まぁ…行きたくなくても、私と一緒にいなければいけないのなら渋々でもついて来て貰わないといけなのだけどね。