人外さんに選ばれたのは私でした ～それでも私は人間です～

３３

祖母が言っていたであろう苦労は、結論から言えば心配するほどではなかった。


まぁ…ぶっちゃけた話し、私は幼少期から『夢見る女の子』だった。そして、他人と違うものが見える自分は『特別』なんだと思っていた。さらに、ついでに付け加えると…祖母が言う＂他の人との違い＂は、私にとっての優越感に変わっていた。


父の話しを聞いた今では、自分のポジティブさに感謝だ。


「誰にも相談できなかったのは辛かったけど、苦労はしなかったよ。多分だけど…周りにあったファンタジー小説のお陰ね」


私本人の性格もあっただろうけど、家にあった母の愛読書のお陰だろうと思う。
最近は、本の購入も電子書籍が多くなったようで、借りたりはしなくなったけれど、小さい頃から紙で買った本は借りて読んだりしていた。ちなみに、それを父に言ったら…


「あぁ…結婚当初はよく言われたよ。『私もあなたと同じものが見えれば良いのに』って…」


残念な思い出を語るような顔で言っているけど、多分、お母さんの気持ちを察していないんじゃないかな？


きっとお母さんは、色々な何かが見たいんじゃなくて、お父さんと同じものが見たいって言ったんだと思うんだけどね。こんなところでも朴念仁発揮ですよ…。


まぁでも、夫婦仲はこれでも良いようなので、子供出る場面ではないんだけどね。
子供の目があろうと周囲の目があろうと、仲の良い二人は、私の理想の夫婦だ。
私も私を解ってくれる人と結婚……できればいいなぁ…なんて、気持ちが脇道に反れそうになったので、慌てて話しを戻した。


「美里……ちょっと言うのが遅かった気がするんだけど、彼の事、連絡しなくちゃいけない人はいないのかい？」


タオルに包まれた社長を見ながら、思い出したように言う父の言で私も慌てる。
自分のことでいっぱいいっぱいで、すっかりである。


「あぁーっ！あ、ありがとうお父さん。すっかり忘れてたぁ……」