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51 渡利怜の決心
しおりを挟む「おい宮田。今日からしばらく部活休め」
隣のクラスの宮田に一言それだけ言ってきた。
周りは何事かとザワザワしていたけれど、そんなの知ったこっちゃない。
「渡利君!!」
すぐにクラスに戻ろうとしたら、同じ美術部の一人、里奈が出てきた。
「陽香の具合は?意識戻った?」
陽香のことを真剣に考えてくれる友達がいてくれることが嬉しい……けど。
「陽香の意識はまだ戻らないんだ。だから面会に来てもらっても…『大丈夫!私ね分かっているから。陽香が小さくなっちゃったこと』………」
斎藤の……斎藤里奈の言葉に思わず固まった。
なんで?どうして?こういうの見えるって、まさかわりと普通なのか?
確認するように肩に乗る妖精に視線を送ると、思いっきり首を横に振っていた。
「私の事は里奈って呼んでね。私が見えることは陽香も知っているよ。安心して、誰にも言わないし」
そう小声で言った後、自分も陽香のところに見舞いに来たいと言ってきた。
まぁ……宮田も連れて行くし…今回は万葉も連れて行く。
一人増えた所で何ともないと思い、一つ頼みごとをする。
「陽香の姿が見えるような道具を作ってもらった。今回、それを宮田に付けて陽香と面会させる」
だからそれの……見えたモノに対しての宮田のフォローを頼んだ。
多分俺は、宮田に対してフォローは出来ないし、反対に怒ってしまいそうだから。
「それと……陽香にはもう時間がない…ホントに。陽香は話も出来ないみたいだから難しいことは分かっているんだけど…出来れば心残りがないいようしてやりたい。申し訳ないけれど手伝ってくれるか?」
●○●○
美術部の部室の陽香の私物を整理する。
文化祭の展示は母さんの絵を描くと言っていたけれど……半分程のところで製作が止まっている。
陽香が救急車で病院に運ばれた時、万葉と二人で美術室で絵を描いていた。
いつもは二人で来る里奈が先に美術室に来たことで、里奈から『誰かに呼ばれてたみたいだよ』と聞いた。
それから一時間……もうじき部活動が終了するという時間に、いまだ部活に来ていない陽香に気が付き、探しに行こうとしたところで、担任の先生から陽香が倒れてたことを知らされた。
「あんたらか。あんたらが陽香を突き飛ばしたのかっ」
陽香が、頭を強く打ち付けて気を失った時にいたらしい先輩に詰め寄る。
それに、こいつらから直接聞かなくても、周りの人外達が教えてくれる。
中にはその時のことを、身振り手振りで再現をしてくれた者達もいた。
ただただ泣いて謝るだけの二人の先輩から視線を外し、万葉に呼ばれて保健室に飛び込んできた宮田をみる。
「言っただろうが…忠告はしたよな?陽香を危険な目に合わせんなって、陽香を泣かせんなってっ……」
分かってはいた。これが八つ当たりだと。
宮田に当たってもどうにもならないことは充分分かっていたけど……。
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