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61 宮田、考える
しおりを挟む里奈と万葉に、みっちり言い聞かせられていたとはいえ、渡利の病室は光で溢れていた。
現実には有り得ない話ばかりで、疑問符ばかりだったけど、あれを見て信じざる負えなくなった。
そして……久々に見る渡利は相変わらずベッドから動かず青白い顔のせいか、だいぶやつれてしまっていたような気がした。付き合い始めてまだまだ日が浅い俺と渡利……渡利が、俺を犠牲にしたくないって言ってたけど…何があるんだろう?それが分からないまま帰ってきてしまった。
けど……。
「なおとぉ~ご飯よ。降りてきなさい」
台所の母さんに呼ばれて、食卓に着く。
今日は父さんも兄さんも仕事で遅いらしく、母さんと二人での夕ご飯だ。
「今日お見舞いに行ってきたの?」
両親と三人で見舞いに行ってからだいぶ経っているから、母さんも気になるんだろう…。
いや…もしかしたら、俺のことを心配してくれているんだろうか?
「母さん……俺、どうしたらいいんだと思う?俺な…渡利のこと好きなんだよ。ホントに…」
母さんと二人きりなことを良い事に、渡利の事が好きな事…渡利の叔父さんに、渡利を助ける方法があるけど俺の協力が必須だと言われたことなどを話した。
色々話せない事も多くてなんだか訳解かんなくもなったけれど…
「大丈夫よ。あなたがお婿さんに行ったとしても、渡利さんが相手だったらきっと住む所も近くだろうし、あの子でしょ?前から話にちょこちょこ出ていた子って…」
そうか……俺が話したのは総合して『俺が渡利と結婚して婿になる』話になっているらしい。
そうか…婿か。婿か…あんまり考えたことないけど…考えてもいいかも知れない。
自分で言うのもなんだけど、こう見えて一途だし。そう思ったらなんだか少し気持ちが軽くなった。
責任とかそんなんじゃない……俺は渡利が好きだから傍にいたいんだ。
まだ早いとか、気が変わるかもとか…渡利は俺のことを考えて言うかもしれないけど、そん時はそん時だと思って、今は自分の気持ちに素直になろう。
●○●○
翌日、渡利の兄ちゃんからもう一度時間を取れないかと言われた。
まぁ、今は部活も休ませてもらっているから時間はある。
文化祭の準備も、申し訳ないが他の奴に代わってもらった。
正直、渡利があんな状態で続けられる精神状態じゃなかったから、『代わるから少し休め』と言ってくれたクラスメイトには感謝している。
「渡利さん、どうなの?」
文化祭実行委員を代わってくれた奴が聞いてきた。
さっき、渡利兄が来たからだろうと思う。
「んー…今日もう一回行ってくる。悪いけど文化祭の方頼むな…」
それだけ言って、教室を出た。
今日は俺と渡利兄だけらしい。
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